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デジタルジャーナリズム

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データジャーナリスト・インタビュー

プロデュースデザインプログラミング

2014-3-28

渡邉英徳さん

災害や戦争のデータを重ねて見ることで
埋もれていた証言を引き出していく(1/3)
首都大学東京
システムデザイン学部 准教授
渡邉英徳さん

首都大学東京の渡邉英徳准教授は、自身の研究室を中心に、過去の災害や戦争の悲劇をGoogle Earthにマッピングしたデジタルアーカイブを制作し、世界中に発信する活動を行っている。その代表的なものが2011年7月に公開された「ヒロシマ・アーカイブ」だ。埋もれていた被爆者証言や事実を集め、伝わる形で伝える。ジャーナリズムとも重なるこの取り組みを通じて、渡邉准教授は何を目指したのか。そこからさらに、どう発展させようと考えているのか。デジタル技術と、データやインタビューとを重ね合わせた数々の作品について話を聞いた。

高校生がインタビューすることで
これまで聞けなかった証言を収集

ヒロシマ・アーカイブは、1945年にアメリカ軍が作成した地図の上に顔写真が浮かびあがり、それを開くと被爆者の証言を読めるようにしたものだ。証言者の顔写真は、原爆投下当時にその人がいた場所を示しており、どこでどんな人が何を体験したのかが、ひと目でわかる構成となっている。

「ヒロシマ・アーカイブ」地球全体から日本、そして広島へ視点を変えていく

地球全体をふかんした画像から、画面は一気に原爆を投下した爆撃機の視点である高度1万メートルの広島市上空にまで進む。

写真はすべて「ヒロシマ・アーカイブ」から

これまでも証言を掲載したウェブサイトはあったが、大抵は名前順で証言が並べられていて、最初のほうの人や最後の人の証言しか読まれないことが多い。結果的に、特定の人の証言が突出して受け止められてしまう。
「ヒロシマ・アーカイブ」には、その「順番」がなく、一度にすべての情報を見せてしまうのが特徴だ。どこからでも見ることができるし、まず広島原爆の大まかな全体像をつかみ、そこから個別の資料を見ることができる。

学徒動員で働いていた工場、女学校の礼拝堂、同じ場所で被爆した女学生たちの顔写真から、それぞれの体験をあわせて読むことができる。

さらに、従来のデジタルアーカイブの限界と今回の意義について渡邉准教授は「被爆の証言は、書籍やウェブサイトに個別に載っているため、同じ場所で一緒に被爆したという情報が欠落しがちだった」と話す。

たとえば広島市内に残されている証言集に掲載された被爆者の方々と、東京都在住の被爆者の方々とがたとえ同級生で同じ場所で被爆していても、これまでの方法では、そのふたつを結びつけることはできないが、地図であれば二人の証言をあわせて読むことができる。バラバラになっていた証言を、切り口や見方を変えて提示することもできるという。

証言だけではなく写真についても、「広島原爆と言えばこの写真」というほど、同じものが繰り返し使われることが多い。だが、「ヒロシマ・アーカイブ」では、当時の写真を現在の建物の様子と重ね合わせて見ることができる。被爆当時の写真を、現在の景色と溶け込むように配置することで、自分達がいま見ている街に、原爆が落とされたのだということがリアルに伝わるよう工夫している。

「ヒロシマ・アーカイブ」広島県産業奨励館から原爆ドームを見たところ。

渡邉准教授は、ヒロシマ・アーカイブの特徴を「見せ方」だけではないと考えている。むしろ大事なのは、「データを集める」ことだという。

プロジェクトを始めるにあたって、渡邉准教授は、これまでの文章の証言だけでなく、動画証言も掲載したいと考えていた。ところが、既存の動画コンテンツは、二次利用の許可を各個人に対して行う必要があったため、すべての人から許可を取り付けることは困難と思われた。苦肉の策として、広島の高校生などに部活動の一貫として被爆者の方々にインタビューしてもらうことにした。ところがこれが思いがけない結果を生んだ。

「次の世代に頑張って伝えようとしてくれている」高校生の思いにこたえようと、これまで原爆のことを話したがらなかった人たちも取材に応じてくれ、人によっては初めて証言をしてくれたのだ。

いままで誰にも被爆体験を語らなかった女性が、 匿名で高校生のインタビューに答えてくれた証言動画もある。こうした動画には一切編集の手を入れない。

渡邉准教授はこの経験を振り返り、「ビッグデータなどと言われ、データが簡単に手に入るような錯覚があるが、実は本当に良質なデータは人が苦労して集めなければ集まらない。それはヒロシマ・アーカイブを作りながら最も感じたことです」と話す。

ただし、ヒロシマ・アーカイブを「データジャーナリズム」と呼ぶことには否定的だ。最近のデータジャーナリズムという言葉には、世の中に公開されているデータを適切に処理すれば何らかの結果が出てくるという印象があるからだ。

「ヒロシマ・アーカイブで使われているデータは、被爆者の方々と高校生、コンテンツにまとめる我々のコミュニティがあったから集められた。我々はこれを、人と人とが世代を越えてつながって活動する“記憶のコミュニティ”と呼んでいます。ヒロシマ・アーカイブのときに初めて、この「“記憶のコミュニティ”の形成を実感しました」と渡邉准教授は説明する。

2011年の発表後も、広島の高校生達が自主的に証言収集活動を続けており、毎年春になると新たな動画証言が渡邉准教授の元へ送られてきてヒロシマ・アーカイブに追加される。人の思いを、人を介して集める記憶のコミュニティは、人の思いによって、現在も拡張し続けている。

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