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  マネー  
【AERA発マネー】
 
40代金融エリートの欲と現実
 (2004年11月15日号)


 いい大学、いい会社――信じていた道が崩れていくときに堀江が現れた。こんな生き方があったのか。でも、もう後戻りできないよ。(アエラ編集部・佐藤秀男)

   ◇      ◇

 今年41歳になるUFJ銀行のAさんは、ライブドアの堀江貴文社長(32)を見るたび、

 「おれにもあんな人生があったんじゃないか」

 と吐き気に似た思いにかられる。京大を卒業後、「ピープルズ・バンク」の経営姿勢に共感し、財閥系の住友ではなく旧三和銀行に入った。それでもまぎれもないエリートコースだ。旧東海銀行と合併後も順調に出世を重ね、30代後半で年収が1000万円を超えた。結婚して子どもが2人。2年前に都内に一戸建ても買った。

 順風満帆に見えた会社人生。しかし、金融庁の検査忌避問題や三菱東京との合併で歯車が狂い始めた。事実上、三菱東京に吸収される自分たちは屈辱的な扱いを受けるかもしれない。さらに今冬と来年夏のボーナス8割カットが決まり、住宅ローンの支払いも厳しくなった。

 ●まぶしく見える成功者

 それに引き換え堀江氏。東大を中退して、裸一貫から起こした会社を20代で上場させ、得た個人資産が数十億。傍らには美人秘書。私生活も派手だ。家賃220万円の六本木ヒルズの超高級マンションに住み、愛車フェラーリに、年下の彼女は元キャンギャル……。小生意気な「成功者」は、まぶしく見えた。

 そうか、ビジネスマンとしてあんな生き方もあったのか。ポテンシャルはさほど変わらないはずだ。自分にだってできたかもしれない。だが残念ながら、40歳超えた今からでは遅い。そう考えると悶々とした気になるのだ。

 旧東海銀出身の40代のUFJ行員Bさんは最近、降格させられた。

 「1度目は三和、今度は三菱東京。2度も吸収合併ですからね。組織のために自分をささげるなんて、さすがにもうできませんよ」

 堀江氏に対する視線は、複雑だ。すごいと思う半面、刹那的な生き方だと感じる。

 「自分だったら創業者利益を得た時点でとっとと悠々自適の生活に入るけど、そこで満足するような人間じゃ成功できないんでしょうね。死ぬまでアグレッシブに、ダイエーの中内(功)さんみたいに、最後は転落するまで止まれないんだろうな、ああいう人は」

 楽天の三木谷浩史社長に抱く感情とは違う。別の都銀で働くCさん(42)が言う。

 「三木谷さんは営業力とかマネジメント力でのし上がった感がある。それって我々銀行マンが培うもの。友達になりたいかは別として、ビジネス感覚はわかり合える。堀江さんはコミュニケーション能力が低そうでしょう。あれでよく稼げるなって気がする」

 自分たちと異種なだけに、よけいに堀江氏が気になる。

 「年功序列も大企業信奉も間違っている」

 「旧来の立身出世の物語にしがみついている限り、ある程度の小金は稼げても、本質的には貧乏人の枠から逃れられない」

 堀江氏は著書でそう説き、さかんに起業をすすめる。

 『稼ぐが勝ち』(14万部、光文社)、『堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方』(8万5000部、ソフトバンクパブリッシング)など、著書は軒並み好調な売れ行きだ。ソフトバンクパブリッシングの担当編集者によると、一日100通程度の反響があるという。

 「10代、20代からの『自分も起業したい!』という声だけでなく、40代、50代のサラリーマンからも共感する声が多いです」

 ●中高年が反省している

 銀行出身の作家、江上剛さんがいう。

 「いい大学を出て大企業に入るという最もリスクが少なく投資効果の高い成功モデルが崩れ、中高年が自らの生き方を反省している。そうした親世代が堀江氏に共感し、また親の背中を見てきた若い世代が人生の選択肢の一つとして起業を考えるのは必然です」

 元銀行マンのDさん(40)も、堀江氏に感化された一人だ。

 会社に飼いならされたサラリーマンが日本を支えてきたんだ。だけど、何か間違っている。

 「そう確信できたのは、堀江さんの存在を知ったからです」

 そう話すDさんが就職活動をしたのは、バブルさなかの89年。志望は銀行一本に絞った。

 「東大経済学部を出たからには高給取りにならないと。それには、銀行が一番だと信じてました」

 入行してすぐ将来に疑問を持った。住宅ローンを組んだ途端に会社を辞めることはないと踏んで、過重に仕事の負荷をかける会社の「あくどさ」と、ローンに身動きがとれずにきゅうきゅうとする上司。当時はおかしいと思いながらも、出口が見いだせなかった。ソフトバンクの孫正義氏が世の注目を集め出したころだが、「大企業のバックなしでやっていけるのか」とまだ冷ややかに見ていた。

 そんなモヤモヤを吹き飛ばしたのが、堀江氏だった。

 「堀江さんは、ちゃんと結果を残したうえで、こうすればいいんだと初めて具体的な解決策を示してくれたんです」

 ●時代の波に乗れない

 勤めていた銀行が破綻したのを機に転職し、いまはシステムエンジニアをしている。堀江モデルに倣って、ITを駆使した起業プランを練っている。

 リスクを背負った成功の対価として大金を得るのは当然。不必要な謙遜をするつもりはない。

 そう言い切れる堀江的感覚をうらやましいと思いつつ、そうした時代の波に乗り切れない40代もいる。大手損保会社の支社長をしているEさん(42)がそうだ。

 Eさんには、IT関連企業を上場させた自分と同学年の社長の印象が、堀江氏とダブる。

 共通の友人を通じて、その社長と会ったときのことだ。地方の国立大を出て、いまは組織の一歯車でしかない自分に対し、相手は高卒ながら上場会社のトップとして100人近い社員を率いている。

 「純粋に立派ですねって声をかけたら向こうは驚いた顔して、『社員は利益を生む道具ですよ』と言ったんです。堀江さんもそういう考え方と言うわけじゃないですが、起業家にはそうした割り切りが必要なのかと考えさせられました」

 30代中堅の信託銀行マンFさんは、冷めている。将来、ここで身につけたノウハウやスキルを生かして独立したい。そう宣言して入社してくる人間ほど、社内で何しているのかわからないぐらい、目立たないという。

 「いつも逃げ道をつくって仕事している。結局、独立する勇気や器量を持たない人間がサラリーマンをやってるんですよね」

(11/24)




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