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【AERA発マネー】
 
再建目指す「細谷りそな」へ脱竹中・金融庁の風圧
 (2004年11月29日号)


 金融庁の竹中離れが進んでいる。庇護者が去ったりそなに金融庁の風圧が強まる。いじめなのか、独り立ちにむけた試練なのか。(AERA編集部・大鹿靖明)

   ◇      ◇

 「両者の間で、まだ同意できておりません」

 その一言によって、金融庁9階の特別会議室は、水を打ったように静まりかえった。

 11月8日午前10時すぎ。約3兆円の公的資金が注入されて再建中のりそなホールディングスの、新しい経営健全化計画について協議する「金融問題タスクフォース」の会合でのことである。

 5人の有識者からなるタスクフォースは、竹中平蔵経済財政相が金融相を兼務となった後の02年暮れに発足したブレーン集団だ。不良債権の半減をめざした「金融再生プログラム」の進みぐあいをチェックし、りそなのような実質国有化された金融機関の経営を監視する役割も担う。金融行政へのご意見番と言える存在だ。

 その日、タスクフォースのメンバーと伊藤達也金融相ら金融庁幹部が向かい合って座り、呼び出されたりそなの細谷英二会長が淡々と経営概況について説明を進めていった。

 説明が一段落した時だった。金融庁の幹部から冒頭の発言が飛び出した。りそなが示した計画原案に対し、金融庁幹部は、

 「同意できてない点が、3点あります」

 と、厳しい批判を続けた。

 公的資金をどう返すのか、具体的な見通しが甘いと指摘され、今後どう収益力を高めるのかなど、経営戦略へも矛先が向けられた。

 援軍からは怒声の応酬

 細谷会長の表情は見る見る険しくなり、

 「できることなら約束しますが、今後、市場環境が変わるかもしれません。できないことまで約束はできません」

 その後、双方の「援軍」からの発言が怒声を伴って続いたすえ、結局、りそな側は計画を練り直すことになった。五味広文長官、細谷会長ともにぶぜんとした様子で、

 「まさか、こんなに激しく対立するとは思わなかった」

 と、出席者の一人も驚く。

 実は、健全化計画の策定にあたって金融庁側は8月以降、「異例の回数」(関係者)といわれるほどヒアリングをりそな側としてきた。公的資金返済に「決意のほど」を示してほしいという金融庁側に対し、りそなの説明は金融庁を納得させる力に乏しかったようで、ヒアリングが重なるうちに、両者の対立は次第に先鋭化。それが当日、ついに表面化したようだ。

 もとは「官僚中の官僚」

 結局りそなは、18日に金融庁の指摘を受け入れ、練り直した計画を発表。毎年の利益をもとに剰余金を積み上げ、公的資金返済につとめる、としている。

 そもそも、竹中金融改革によって破綻したりそなには、竹中グループの支援のもと、JR東日本出身の細谷氏が三顧の礼をもって昨年6月に迎え入れられ、国鉄改革にふるった経営力によって、沈没しかかった銀行の再建が期待された。

 期待にこたえて、午後3時に閉まるのが当たり前だった銀行店舗を午後5時までのばしたり、協和、埼玉、大和といった合併前の出身銀行意識にとらわれがちな男性行員の弊害を改めようと若手の女性を積極的に登用したり、と新機軸を相次いで打ち出した。「外からの視点で、内向きな銀行を経営改革できた」(日興シティグループ証券の野崎浩成アナリスト)と評価され、10.2%あった不良債権比率はこの9月に4.8%に激減。約3200人が早期退職で職場を去った上、残った行員も年収は平均30%減というリストラも実行された。

 「ダメ銀行」を着実に回復させつつあり、本来なら高く評価されてしかるべき細谷路線なのに、金融庁の風圧が強まった背景には、9月に生みの親の竹中氏から伊藤氏に金融相ポストが交代したことがあるとみられている。

 もともと細谷氏は「運輸省より上位にあった国鉄エリートという官僚中の官僚」(関係者)出身だけに、他の銀行経営者と異なって、「ご当局である金融庁をあまり立てない」とも言われる。一方、官僚を抑えてきた竹中氏が退いたことで、金融庁内の権力バランスが変わり、官僚たちの細谷氏への反感が顕在化。検査忌避を主導したUFJ幹部を刑事告発し、違法行為が見つかったシティバンクには部門閉鎖の行政処分で懲らしめた五味金融庁の「勢い」が、そうした動きに拍車をかける。

 民主党の金融通の大塚耕平参院議員も、「竹中時代と比べて金融庁事務方の存在感が大きくなっている」と指摘する。

 金融庁の官僚には、シティバンクへの甘い処分に見られるように、竹中氏が特定の金融機関に甘い点に不満がくすぶってもいた。竹中氏が庇護してきたりそなをいつまでも特別扱いするより、「本来は分けへだてなく、びしびし厳しくするのは当然」(大塚議員)との声もあがる。

 「不穏な動き」説も

 伊藤金融相は10月、竹中時代にできたタスクフォースとは別に、木村剛KFi代表らをメンバーにした「アドバイザリー・チーム」をスタートさせてもいる。「屋上屋を重ねるもの」という批判もあるが、細谷応援団でもあったタスクフォースの存在感の希薄化は否めない。

 こうした金融庁の環境変化に乗じて、りそな内で細谷氏にとって代わろうとする動きがある、とも言われている。細谷氏が、ぬるま湯に浸った生え抜き男性行員に意識改革を促そうと厳しくあたったことが、一部の生え抜き組の反発を買っている、というのだ。

 「金融庁が権力を振りかざす魅力に酔い、『強い役所』というイメージを打ち出したがっている。竹中大臣就任以前への、先祖返りが始まった」(タスクフォースのメンバーのひとり)

 来年3月には細谷応援団のタスクフォースは解散する見通しで、庇護する勢力は一層少なくなる。金融庁の竹中離れは、想像以上に急速に進んでいるようだ。

(12/08)




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