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「人生には三つの坂がある。上り坂、下り坂、そして『まさか』」といった人がいるが、企業人として組織のピラミッドを上り詰めた途端、「まさか」という事態に直面する経営者は多い。それでも、バブル以前は終身雇用や労使一体の企業防衛意識の中で、多くの「まさか」は墓場まで持っていくことができた。
バブル後は雇用の流動化・多様化や社外の監視が強まった結果、企業の内と外を遮断してきた城砦(じょうさい)は液状化してしまった。従業員は身内でなくなり、取引先は仲間ではなく、所管官庁も庇護(ひご)者ではなくなった。今年1年に相次いだ不祥事をみても、過去の負の遺産を飲み込もうと自ら不正に手を染めたトップや組織ぐるみの犯罪に加え、現場の事故や不始末が直ちにトップの責任に波及する事態も増加した。
この結果、経営者は複雑化・多様化するリスクに取り巻かれるとともに、自らが社内外に直接弁明する必要に迫られている。このため、企業は「まさか」の可能性を減らし、かつ経営責任から遮断すべく、コンプライアンスや企業倫理の徹底を目指し、内部統制を強化しなければならなくなった。
内部統制の第一歩は統制環境の整備であるが、統制環境の整備とは企業の理念やビジョン、規範、すなわち企業カルチャーの設定であり、まさしくトップの使命といえる。昨今の不祥事、取りわけ三菱自動車、西武鉄道、UFJ等の事態を見れば経営者が健全な企業カルチャーを醸成せず、むしろ破壊してきたことが明らかになった。
責任を追及される経営者は「聞いていない」などと抗弁するのが通例であるが、報告を受けていないこと自体がトップとして失格なのである。そのような経営者を生み出してしまった企業は、外部の新たな血を導入し、抜本的な再生改革を実行しない限り、消費者や株主などのステークホルダーの信頼を回復することはないだろう。(匡廬)
(12/09)
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