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国民年金の保険料を4割近い人が払っていない。過去最低の62.8%となった保険料納付率が波紋を広げている。社会保険庁は効率化を狙ってこれまで市町村にまかせていた徴収事務を国に移管したことに伴う混乱や、保険料の全額免除の基準を厳格にしたことが裏目に出たことを理由にあげているが、果たしてそれだけなのか。差し押さえなどの「強制徴収」にも乗り出す方針だが、打開策となるのか。04年の年金改革を控え、空洞化の問題が重くのしかかる。
●高い保険料
なぜ納付率がこれほど落ち込んだのか。
沖縄県は納付率が38.7%と全国最低だった。「5割を切って社会保険と言えるだろうか」と沖縄社会保険事務局の徴収担当者は頭を抱える。
地方分権を進め、事務の効率化を図るため、02年度から保険料の徴収事務は市町村から社会保険庁に移管された。同県では市町村の01年度の専任徴収員は計198人。それが移管後は3分の1弱に激減した。戸別訪問が減り、免除の申請を促す機会も少なくなった。
青森県は豪雪地で道路事情も悪い。その中を県内4カ所の社会保険事務所から職員が町村部の徴収に向かう。車で2時間以上かかることもある。地域の自治会などとの連携をやめたことなども響き、下落幅は全国最大の17.3ポイントとなった。
「すぐに地道な徴収を始めることができなかった」。当事者である社会保険庁の堤修三長官は、準備不足を認める。
下落のもう一つの要因は、年金の支え手を増やす狙いなどから実施した保険料全額免除基準の見直しだ。前年まであいまいだった所得基準を明確にした。これにより全額免除者は144万人と半減したが、納付率アップにつながらなかった。堤長官は、厚生労働省が不況下で02年度から厳格化を実行に移したことを「逆噴射した」と表現、本省への不満も口にする。
この点について厚労省の幹部は「社会保険庁のせいだけにしない。免除基準は厳しすぎたかな、と反省している面もある」と話す。
20代の納付率は5割を割る深刻な事態。社会保険庁は24日、未納者に理由をたずねた02年の調査結果も公表した。
「保険料が高く経済的に支払うのが困難」が64.5%と最多。「国民年金をあてにしていない、あてにできない」15%、「支払う保険料に比べ受け取る年金額が少ない」4.5%と続いた。
しかも、未納者のうち生命保険加入者は53%、個人年金は11%、両方加入は9%に上る。民間保険を優先して払っており、公的年金の魅力のなさが読みとれる。
社会保険庁は「電話による督促」を徴収事務対策の目玉に考えていた。02年度は36億円をかけ、全国で34業者に委託した。しかし、成果は上がっていない。委託先の担当者は言う。「制度を熟知し、不信感を抱く人ほど納付に消極的だ」
●強制難しく
24日の厚労省社会保障審議会年金部会では過去最悪の納付率に厳しい声が相次いだ。
「憤りを感じる。きちんと保険料を納めているサラリーマンの不公平感が募る」。日本サービス・流通労働組合連合中央執行委員でもある山口洋子委員が発言した。
「順序として未納問題の解決が第一、との位置付けをはっきりさせてほしい」。住友化学工業取締役である岡本康男委員も04年の年金改革へ向けた論議に注文を付けた。
公的年金は社会全体で支え合う制度だ。不信感が広がって、未納者が増え続けていけば、いずれ、年金財政は破綻(はたん)し、制度自体が成り立たなくなる。「年金崩壊」(福田官房長官)という事態も現実味を帯びかねない。
「年金改革に悪影響を及ぼす」。厚労省年金局幹部は表情を曇らせた。少子高齢化社会に対応するため、厚労省は負担増と給付カットを合わせた年金改革をしようとしている。制度への信頼が大前提だ。
自民党の厚労族で厚相経験者の一人は「未納4割」の事態について厚労省側から事前に説明を受けた後、言った。「未納者から保険料を強制的に徴収するなどの対策を強めるだけでは根本的な解決にはならない」
○支給ミスで幹部処分へ 社会保険庁
手続きミスなどから一部の年金が未払いや過払いになった問題について、堤修三・社会保険庁長官は24日、朝日新聞社の取材に対し、同庁幹部らを今月中に処分する考えを明らかにした。処分は長官自身も含め、社会保険事務所からミスの指摘があった98年当時の担当幹部らも対象とする方針だ。
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<国民年金> 自営業者や農林水産業、無職、学生らが加入する公的年金制度で、03年3月末現在の加入者は2237万人。保険料は月1万3300円で、25年以上加入すると年金が支給される。支給額は40年加入の満額で月6万6000円。保険料を納めていない場合は、未納分に応じて年金額が減らされる。
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■01年度末の公的年金の状況(数字は万人)
総数 7080
公的年金加入者 7017
厚生年金 3158
共済年金 518
会社員や公務員の配偶者 1133
国民年金 2207
納付者 1356
学生納付特例者 148
免除者 376
未納者 327
国民年金未加入者 63
■02年度の国民年金納付率
納付率 前年度比
(%) (ポイント)
北海道 62.6 ▲10.0
青森 57.9 ▲17.3
岩手 69.4 ▲15.0
宮城 63.3 ▲12.6
秋田 72.8 ▲15.0
山形 74.6 ▲11.1
福島 62.5 ▲13.3
茨城 61.6 ▲10.3
栃木 61.1 ▲ 9.6
群馬 66.7 ▲ 7.6
埼玉 61.4 ▲ 5.7
千葉 62.2 ▲ 6.4
東京 57.3 ▲ 4.5
神奈川 62.5 ▲ 4.1
新潟 75.7 ▲12.7
富山 73.4 ▲ 7.2
石川 71.4 ▲ 8.1
福井 74.4 ▲ 8.7
山梨 65.4 ▲ 8.3
長野 73.9 ▲11.7
岐阜 72.9 ▲10.7
静岡 68.7 ▲12.8
愛知 65.9 ▲ 7.4
三重 70.5 ▲ 6.2
滋賀 69.8 ▲11.9
京都 61.8 ▲ 7.8
大阪 53.3 ▲ 3.4
兵庫 60.0 ▲ 7.4
奈良 63.3 ▲ 6.1
和歌山 66.1 ▲ 7.8
鳥取 70.3 ▲14.3
島根 76.4 ▲ 9.9
岡山 65.8 ▲ 7.1
広島 65.6 ▲ 8.3
山口 68.0 ▲13.1
徳島 65.8 ▲ 7.8
香川 72.0 ▲ 9.1
愛媛 72.6 ▲ 7.7
高知 66.0 ▲ 7.3
福岡 59.4 ▲11.7
佐賀 66.4 ▲12.2
長崎 60.1 ▲16.5
熊本 65.2 ▲13.8
大分 64.1 ▲13.0
宮崎 59.6 ▲16.7
鹿児島 61.1 ▲14.6
沖縄 38.7 ▲12.2
全国 62.8 ▲ 8.1
(▲はマイナス)
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(07/28)
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