Q これまで日本の確定拠出年金制度を詳細に説明してもらってきたけれど、ところどころで本家米国の401kプランとの制度的な違いが出てきたよね。どこが同じで、どんな点が違うのか、まとめて解説してくれないかな。
A そうだね。自己責任による運用で、税制特典があるという基本的な仕組みはよく似ている。つまり(1)企業が従業員のために実施し、企業が拠出する掛け金を中心に運営している(2)事業主や運営管理機関が示したリスク・リターン特性の異なる三つ以上の商品の中から、加入者が自己責任で運用する(3)加入者は老後や死亡などの場合に、年金、あるいは一時金で受け取る(4)拠出時、運用時に課税が繰り延べされるなど、税制で大きな特典がある、などが共通した特徴だ。
違いを挙げるとしたら、まず第1に、上乗せ拠出の有無だね。日本の確定拠出年金企業型では、企業の拠出(掛け金支払い)だけが認められていて、しかも上限が定められている。米国の401kでは、まず従業員が企業が提供した利益の一部を401kへの掛け金として受け取るか(選択掛け金)、それとも給与として受け取るかを選択し、選択掛け金とする場合は企業には法人税が課税されず、従業員には所得税が課税されない(給与として受け取る場合には、課税される)。この選択掛け金のほかに、給与所得の中から従業員が上乗せ拠出(この部分には課税される)できるし、選択掛け金のほかに、企業がさらに上乗せ拠出をすることもできる。
例えば、成績のよい従業員を引き留めるために、大幅な上乗せ拠出をするといったことも米国では可能だ。確定拠出年金は長期間運用することになると予想されるから、掛け金の違いは大きいよね。
日本では、自営業者などを対象にした個人型で拠出限度額が年間81万6000円、企業型では最大43万2000円で、これが非課税になる上限枠だけど、米国では非課税枠は約1万ドルだから、この違いも大きいね。
Q ほかには、どんな点が違うのかな。
A 中途で年金を取り崩せるかどうか、だね。日本では、60歳前に給付を受けようと思えば、障害給付金や死亡給付金をのぞけば、脱退一時金しか方法がないけれど、米国では、そんなに厳しくはない。米国の401kプランは、従業員の退職後の生活支援という目的のほかに、貯蓄支援という目的も併せ持っているからだといわれている。
米国の401kプランでは、年金給付の条件は「離職」「死亡」「障害」「59.5歳到達」のいずれかに該当した場合に、年金あるいは一時金で受け取れることになっている。しかもペナルティー(10%の上乗せ課税)を支払えば、経済的困窮状態の場合や55歳前の退職を理由に中途引き出しをすることもできる。
Q こんなところかな。
A 細かいけれど、何年たったら年金資産が自分のものになるか、つまり満額の受給権がいつから発生するかの時期も違うよ。米国では5年あるいは7年だけれど、日本の企業型では3年たてば、企業に拠出金を返還する必要はなくなって、受給権が得られるんだ。
(07/07)
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