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   <特集>新証券税制  
【変わる資産運用】
 
変わる資産運用(6)金融機関・FPとの付き合い方―求められる賢い投資家

<クリスマスイブに新しい時代の始まり>

 1987年2月9日、NTTが上場された。買い注文が殺到し、商いが成立しなかった。まさに、バブル、財テクブームの象徴の一日だった。

 山手線駒込駅前。NTTブームから17年経った今年2月9日、唯一の証券会社みずほインベスターズ証券の支店が消えた。東京の中心、山手線といえど、証券会社の支店がない駅が増えている。みずほインベスターズ証券の駒込支店は、上野支店と統合され、グループ会社のみずほ銀行とみずほ信託銀行が入るビルに移った。

 昨年のクリスマスイブ、「アンチ銀行」を信条にし、先物取引の普及で生き残りを模索した大阪証券取引所の巽悟朗社長急死の報が夕刊に載った。この日は、ちょうど金融審議会が「市場機能を中核とする金融システムに向けて」を承認し、竹中平蔵・金融担当相に提出している。この報告には、多くの個人が市場参加するためには、「個人にとって最もなじみのある窓口である銀行が、誘導することが望ましい」との表現が盛り込まれた。つまり、銀行の証券仲介業務が認められた。銀行が、聖域だった株式を扱える新しい時代に入った。

<株式投信の4割を販売 証明された銀行の力>

 すでに銀行は、リスク商品販売のノウハウを蓄積している。投資信託と変額年金保険の販売だ。

 投信の銀行窓口販売の開始前には、投信を独占販売してきた証券界には、「銀行には、リスク商品は売れない」との声も少なくなかった。販売開始から5年余りが経過し、そんな声は、実績によって完全に吹き飛ばされた。銀行や保険会社などの窓口販売は、今年1月末で、企業年金や変額年金保険の運用などに使われる私募投信を含めて全体の35.0%にあたる16兆7700億円、一般に販売される公募投信で28.0%の10兆4716億円にのぼる。公募株式投信に限れば、全体の39.6%を占めるなど順調に資産残高を積み上げている。投資信託販売チャンネルは、証券業界の巨人である野村証券と窓口販売で約3分の2、残り3分の1をその他の証券会社が分け合う形になっている。

 「銀行は証券会社に比べて、顧客の信用があり、顧客層は証券会社と比較にならないくらい広く深い」と、FP(ファイナンシャル・プランナー)の神戸孝さんは言う。

 大手銀行や野村証券など競争力のある金融機関各社は、資産規模が1億円以上などの顧客の囲い込みを目標にしている。株式を含めたリスク商品の販売で、銀行が主役となる日は、そう遠くないだろう。

<投信にみる銀行の系列販売・管理>

 顧客にとって証券会社より親近感がある銀行だが、不良債権問題を抱え、収益確保が重視されている。その一例は、投信の運用でも垣間見ることができる。投信を運用する投資信託会社の営業担当者の間では、大手銀行は、系列の投資信託会社を優先することが常識となっている。「系列の投信会社では作れない投信をもってきてください」とはっきり言われることさえある。系列の投信を販売すれば、販売手数料、信託報酬、さらに株式委託手数料などが、銀行グループ内の収益となる。

 例えば、東京三菱投信投資顧問は、東京三菱フィナンシャル・グループの一員である。同社が設定・運用する「東京三菱日本株アクティブオープン」は、東京三菱銀行や三菱証券、明治安田生命保険などで販売されている。運用資産を管理する受託銀行は、三菱信託銀行である。運用報告書によると、2003年6月20日までの1年間で、株式購入の51.4%、株式売却の39.7%は、「利害関係人」と取引と明記されている。東京三菱投信投資顧問にとって「利害関係人」とは、三菱証券などのグループ企業である。

 投資信託協会は、投資信託の仕組みを「投資家から集められた資金は、販売、運用、管理・保管をそれぞれ専門の機関が役割を分担して、より厳正で効率的な運営を行う」と説明している。

 グループ企業内の役割分担で、本当に厳正で効率的な運用は保たれるのだろうか。

<銀行系投資信託の仕組み>



<金融商品の高度化で高まるFPの役割>

 「投資家や預金者は、賢くならなければならない」と神戸さんは、アドバイスする。

 金融商品がグローバル化、高度化するなか、FPは、顧客側に立つアドバイザーとして期待を集めている。日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定のFPは、投信窓販が始まった1998年末から急増し、現在では13万人余りになった。もうひとつのFP資格団体の金融財政事情研究会の資格認定者と合計すると、約20万人になる。これらの大半は、金融機関勤務のFPだ。金融機関の従業員ではない独立系FPは1、2万人程度だ。そのうち、「いまFPとしてメシが食えるのは、ほんの一握りの人たちに限られる」と神戸さんは分析する。神戸さんが代表取締役をするFPアソシエイツ&コンサルティングでは、コンサルティング・フィー(相談料)が1時間2万円、FP顧問契約が年間最低10万円からとなっている。保険の代理店や、将来的には、株式取引の仲介ができる証券代理店制度などを組み合わせ、「一定以上のレベルのFPが、顧客サイドに立つ購買代理店として、食べていけるビジネス・プランを模索中」という。

 1400兆円近い個人金融資産をめぐる争奪合戦は、銀行、保険、証券の業態を超え、さらには外資系金融機関も参入し、激しくなる一方である。手数料、リスクの高さの割には、リターンという結果を出せないハイコスト・ハイリスクでローリターンの商品も少なくない。FPに支払う相談料は、自分自身の大切なお金を守る「授業料」と言えるのかもしれない。

 お金を賢く増やすためは、投資教育も重要になる。巽・大証社長は生前、雑誌のインタビューで「日本でもまず金に働かせ、自分も働く」という生き方を提唱し、「金のことをよく勉強し、もうけるためにはリスクを取ること」と力説している。「外国人に負けるな」と、孫にウォール街を見せ、自身も小学生から株価に親しんでいた。

 銀行経由の株式取引が定着すれば、小学生が株価を見るのが当たり前の時代が、来るのかもしれない。

<日本FP協会の資格認定会員の推移>



神戸  孝(かんべ たかし)さん
 FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社代表取締役。1993年の第1回資格審査試験でCFP(FP上級資格)取得、日本ファイナンシャル・プランナーズ(FP)協会評議委員。
 三菱銀行勤務、イマジニア株式会社役員(人事・財務担当)、日興證券(リテール事業推進部)を経て、1999年5月、FPアソシエイツ&コンサルティングを設立。「幸せな老後を呼び込む ほんとうに真っ当な資産運用」(朝日新聞社、2003年)などの著書がある。
(02/23)




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