世界の鉄鋼の需要を牽引(けんいん)してきた中国の国内で、鋼材の需給バランスに変化が生じている。昨年11月の単月の統計で、13年半ぶりに鋼材の輸出量が輸入を上回り、12月はさらにその差が拡大した。国内需要は急増しているものの、一方で製鉄設備の投資も依然、加速しており、日本の鉄鋼業界からは「輸出が増え続ければ、値崩れが起きる可能性もある」と、懸念の声が出ている。
日本鉄鋼連盟が中国税関総署から入手した統計によると、中国の04年の鋼材輸出は1423万トンで、前年の696万トンから倍増。一方、輸入は21.1%減の2930万トンと、6年ぶりに減少に転じた。単月ベースでみると、11月以降は輸出が輸入を上回っている。中国政府の景気抑制策によって内需が鈍化し、それが今回の統計に影響したとの見方が有力だ。
中国の04年の粗鋼生産量は約2億7000万トンの見通しで、01年の約1億5000万トンから急増。昨年、生産性向上のため小型の設備に対する投資規制が打ち出されたものの、依然、高炉への投資は堅調で、今後も05年から06年にかけて、新たに1億5000万トン分の稼働が予定されている。
中国の生産品は、形鋼や棒鋼などおもに建設業向けの汎用(はんよう)品が主力で輸出に回っているのも、こうした鋼材だ。自動車向けの冷延薄板など日本が得意とする高級品はもっぱら輸入している。
中国の汎用品増産・輸出拡大の影響について、神戸製鋼所の小山敬治常務執行役員は「高級品だけ値段が下がらないことはありえない」と警鐘を鳴らす。
日本は全生産量の3割にあたる約3400万トン(03年)を輸出しており、相手は韓国、中国など東南アジアが約8割をしめる。一方、輸入も約600万トンのうち7割がこの地域からで、マーケットを通じて値崩れの影響が及ぶ可能性が懸念されている。
実際、90年代後半には、東南アジアやロシアが生産する汎用品の国際価格が下がり、日本などの高級品にも波及した経緯もある。
経済産業省の試算によると、これら普通鋼より一足早く、特殊鋼のステンレスで、06年にも東アジア地区で供給過剰になる可能性があるという。このため、昨年12月に中国の政府や業界団体に対し、計画的な投資を要請している。
(01/14)
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