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 実は、最近まで両親とは仲良くありませんでした。病気がちだった4歳下の弟に親のケアが集中し、幼少時からずっと「大切にされていない」「愛されていない」って思っていました。子どもの頃を、楽しく思い出すこともありません。

 29歳の時に10年交際した人と結婚。しかし、約3年で離婚しました。「相手は僕を大切にしてくれていたのに、どうして自分はこんな人間になったのか」という思いから、自分の親子関係について考えるようになりました。

 ある時、産婦人科医の池川明先生の講演で、「子どもは親を選んで生まれてくる」と聞きました。最初は「自分は親を選んだ覚えはない」と思ったけれど、その話がやけに心に残っていたのです。

 先生の話が本当かどうかはわからないけど、講演をきっかけに「自分が親を選んだ理由って何だろう」って考え始めた。それまできちんと向き合っていなかった、自分の親子関係について考えると、何でもかんでも親のせいにしてきたことに気づきました。そして、家族や出産をテーマに映画を撮ろうと考え、作った映画が「うまれる」です。

 妊娠や出産をめぐっては、流産や不妊や体の障害など、さまざまな壁もある。作品は4組の夫婦の選択した生き方を通じ、生命の尊さや家族の絆について考えられる内容になっていると思います。

 制作に当たり、100組の夫婦に取材しました。そのうち、自然に親に対する感謝の思いが湧いてきた。「当たり前」のことに気づくのに35年もかかってしまいました。僕は、両親と仲直りがしたくてこの映画を作ったのかもしれません。

 再婚して娘が誕生してからは、親への尊敬の念がより大きくなりました。今は月に1、2回会って食事をするほか、毎年旅行にも一緒に行きます。

 子育てって、頑張っても褒められることが少ない。でも、その苦労は「産んでくれてありがとう」という一言で報われると思います。映画の上映会や講演会に来てくれた人にも、「親に伝えてみてはどうですか」と呼びかけています。

(聞き手・中村瞬)

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ごうだ・とも 1973年生まれ。2010年に出産を通じて命の尊さや人間の絆を考えるドキュメンタリー映画「うまれる」を制作。全国で上映会を行う。「家族とは何か」を問う次回作を来秋、公開予定。一児の父