【動画】デジタル保育を取り入れている「つるみね保育園」=中釜由起子撮影

 「スマホ任せの子守」はダメとわかっていても、つい渡して子どもが夢中に――。スマートフォンとの上手なつきあい方はないのでしょうか。子育て中の記者(33)がデジタル保育の現場を訪ねました。

 ■園児が海外とやりとり

 「今日はシンガポールの市場がどんなところか教えてもらいましょう!」「はーい!」

 スマホの画面が投影されたスクリーンに手を振る4、5歳の園児たち。シンガポールの日本人女性とテレビ電話で会話が始まった。

 鹿児島県鹿屋市の「つるみね保育園」。鹿児島空港から車で2時間、一面の芋畑を通り抜け、人家もまばらな山奥にある小さな保育園だ。2年半前から週に1回、2歳以上の園児を対象にスマホやタブレットを使った「デジタル保育」を取り入れている。1回30分程度だが内容は多彩だ。栄養士が給食に使う素材の産地をグーグルアースの地図で解説したり、パズルをみんなで完成させたり……。使う端末は1台、操作時間は極力減らし、スクリーンに映してみんなで楽しむ、というしかけだ。

 4、5歳児は、家族からスマホで園に送られた写真を使ってプレゼンテーションもしていた。ある男の子が誕生日に食べたケーキを発表すると、ほかの園児から次々と質問が飛ぶ。「どうしてケーキにウルトラマンが描いてあるんですか」「おいしかったですか」

 同園の杉本正和園長(53)は「デジタル保育は視野を広げ、表現力を養う一つの道具。しかし、あくまで保育の一部で、泥遊びなど体を使い、人との交わりを大事にしている」と話す。保育関係者から批判もあるが、保護者には親子の会話や笑顔が増えたという声が多く、反対意見はないという。

 こうしたデジタル活用の低年齢化の動きは、各地で出てきている。埼玉県吉川市の保育園「コビープリスクールよしかわ」や東京都内の幼稚園など3園は、今年4月から、知育アプリ事業会社「スマートエデュケーション」とともに、社会学習のアプリなどを使った保育を本格導入した。佐賀市の高岸幼稚園でも絵本のアプリを導入。子ども自身がストーリーやせりふを考え、完成させていく。

 効果の検証はこれからだ。小中学校で13年間、ICT(情報通信技術)を使った教育のサポートに携わってきた「NEL&M」代表取締役の田中康平さんは「タブレットを使いさえすればいいわけではない。目的なく使うと逆効果になる」と話す。取り組みが進む小中高の学校でも、1人1台導入したものの、先生が使いこなせず、子どもが1人で操作に夢中になっているケースも多いという。

■楽せず学ぼう

 コミュニケーションを生むスマホやタブレットの使い方は、記者にとって目からうろこの連続。家庭ではどうすればいいのだろう。

 「スマホチルドレン対応マニュアル」の著者で、小中学生のスマホ利用の実態やトラブルに詳しい兵庫県立大学の竹内和雄准教授は「幼い子は時間と場所を決めて、親と一緒に使うことが重要」という。小学4年生ごろからスマホを持つ子が増えているといい、小さな子どもをスマホから隔離するだけでは問題は解決しないとの考えだ。「親が楽をしようと思わず、一緒に関わるといい道具になり得る。良質なアプリやスマホの危険性について勉強も必要だ」(中釜由起子)

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■16歳CEOはどう育った? ウェブサービス開発会社を起業・三上洋一郎さん(16)に聞く

 3歳からパソコンで遊び始め、小学生でゲームにはまりました。親はパソコンやネットにいい顔はしなくて、1日「学年×10分」まで。でも、禁止はされませんでした。草を摘んで草木染をするのが好きで、本も毎日2、3冊のペースで読んでいました。幼い頃、母が毎日読み聞かせをしてくれたからだと思います。小3の時、独学でプログラミングを勉強し始めましたが、算数より国語が得意です。

 中2でネットのサービスを立ち上げたのは、ものをつくることへの憧れから。ものに触れる遊びをよくしていた影響だと思います。会社のメンバーはツイッターで集めました。パソコンやネットはツールです。友だちですか? 多いほうじゃないけど普通にいますよ。さっきもお祭りに行こうと誘われました。

 親はそのうち子どものデジタル知識に追いつけなくなります。だからこそ、字が読めない頃からスマホで遊びながら、トラブルに遭わない程度のルールを教えればいいのでは。私も掲示板に住所を書き込んで、後ろから見ていた父に危険だと教わった覚えがあります。(「GNEX」代表取締役)

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〈今月のWORD〉スマホを所有する0~6歳の子どもがいる母親への調査では、子どもとのスマホ利用について、約半数が使っていると答えている(2014年1月MMD研究所調べ)。日本小児科医会は、むずかる赤ちゃんに子育てアプリで応じることは育ちをゆがめる可能性があると指摘。「スマホに子守をさせないで」と警鐘を鳴らしている。