幼いころからの英語熱が高まっています。小学5年生で始まる英語の授業は、2020年度には3年生からに早まる見込みです。小学生になる前から、英語を習わせる家庭も少なくありません。将来役立つ語学を身につけるためには、どうすればいいのでしょう。フランス人の夫との間に1歳7カ月の長男がいる記者(42)が、専門家に聞きました。

 「ミカン欲しい?」「Est-ce que tu veux une mandarine?」。記者の家では、私が日本語で夫が仏語で息子に話しかけている。自然に二つの言語を身につけて欲しいからだ。

 日本人同士の家庭でも英会話教材を買ったり、英語を教える幼稚園に通わせたり。外国人シッターを雇うなどのほか、子どもの相手をしてくれることを条件に、自宅の空き部屋を留学生らにタダで貸している熱心な家庭もある。

 事情に違いはあれ、「将来につながれば」という親心はよく分かる。だが、日本語もおぼつかない子が外国語を覚えて、かえって混乱しないのだろうか。

■興味持てれば、両言語とも発達

 「新たに別の言語を身につけたからと言って、母語を邪魔することはありません」というのは、バイリンガル教育が専門の中島和子トロント大名誉教授。いま主流になっている説が「氷山説」だ。英語と日本語のように発音や文法が全く違っていても、底の部分では概念などが共有されている。子ども自身が興味を持ち、触れる言葉の量が十分なら、両方の言語が影響し合いながら発達するという。

 日本に住み、親が日本語のネーティブで、日本語が自然にしっかり身につく環境ならば「外国語でやりとりする時間を、ある程度なら毎日つくっても大丈夫」。日本語を土台に英語も伸びていくという。「学ぶというより、ゲームや歌、読み聞かせなどの遊びで、ネーティブの人たちと楽しく交流すれば、自然に言葉を覚え、思考力も育っていきます」と中島さん。

■ペラペラになっても継続を

 毎日英語に触れ続けたら、子どもがきれいな発音で話せるようになった――。だがそうなっても、喜ぶのはまだ早いらしい。

 言語は年齢によって身につく能力が違うという。日常会話の基礎は8歳ごろまでに固まるが、日常会話が流暢(りゅうちょう)でも、抽象的なことを理解し表現できる段階ではない。その段階にいくには、年齢相応か、それより少し低い年齢向けの英語の本を自分で読む習慣や、英語で文章を書く習慣が定着する環境づくりが必要になってくる。英語教育が専門の湯川笑子立命館大教授は「幼い頃から続けられれば理想だが、日本の場合は英語が身近でなく、やる気を保つのは簡単ではない。理屈で学び始める前の小学3、4年ならまだ、中3レベルの英語構文が入った歌を楽しみながら自然に覚えられる年齢。そこからでも興味を持って続ければ、十分上達しますよ」と話す。

 一方、やり過ぎの弊害も指摘する。日本にいても、熱心なあまり幼稚園でも家でも英語漬けにすると、日本語の土台が育たなくなる恐れがある。思考を深める道具となる言葉が年相応に発達していないと、その後学校の授業にもついていけなくなる。海外からの帰国家族や移住家族の子どもにみられることがある現象だが、日本の家庭でも起きうるという。「過度に結果を急ごうとせず、無理なく楽しく続けるくらいの気持ちで取り組んで」と湯川さんは言う。(錦光山雅子)