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 仕事も家事も育児もしっかりやりたい。「両立」は女性だけでなく、男性にとっても大きな課題です。家事・育児を夫婦でやることは当たり前とわかっていても、「男は仕事」という社会の意識も根強く、職場での理解や評価に悩む男性も多いようです。

 「家のことは何でもやります!」と宣言する新米パパ。立派なお手本になりそうだが、「逆に危ないと感じる」と、産前産後のサポート事業を手がける渡辺大地さん(34)は話す。渡辺さんが全国各地で開く「父親学級」では、こうした意気込みを語る男性が少なくない。「家事や育児への意欲が強い人ほど、仕事との両立への重圧につぶされてしまいかねない」と指摘する。

 参加者には「うつ」になった人もいるという。共働きの30代の会社員男性は、残業が当たり前の職場で、早く帰ろうとすると「『家庭より仕事』の人だと思っていたのに」と言われ、からかわれたと感じた。家に帰ると家事のやり方で妻から文句を言われた。子どもが生まれる前、安易に「家のことは俺に任せろ」と言ったことを後悔している。

 よかれと思ってやったことが、妻にとってはありがた迷惑でしかないこともある。渡辺さんは「相手に何をしてほしいか、夫婦間で具体的に話し合って」と提案する。妻の仕事上の立場やどんなことをしたいのか、お互いの仕事に対するビジョンを整理する。「相手の状況を把握することは、『自分がもっとやらねば』という重圧を減らすことにもつながる」

■勇気出して一歩

 都内の公務員男性(42)は、妻もフルタイム勤務の公務員。3人目の子どもが生まれた際、育児休業を取るかどうかで1カ月悩んだ。「男性の例がほとんどなかったことや、長期間休んで迷惑がかかるという後ろめたさ。でも一番の理由は『男が?』という周囲の目だった」と振り返る。

 しかし、上司に切り出すと「いいですよ」とあっさり言われ拍子抜けした。「相談する前から自分だけで考えすぎていた。周りに同じような例がないと、自分が最初の一歩を踏み出すのにすごく勇気がいる」

 男性が男性であるがゆえに抱える問題を研究する「男性学」が専門の武蔵大学社会学部助教の田中俊之さん(39)は、「『男はまず仕事』という高度経済成長期の男性モデルが、『男らしさ』の象徴として現代に残っている。この概念に苦しめられ、男性は非常に生きにくい状況にあるのではないか」と見る。

 「社会で活躍する女性が増えているのに、男性の生き方の選択肢があまりに少ない」。長時間労働をしながら、家のこともしっかりこなす――誰もがこれを実践するのはそもそも無理があるという。「会社も社員も話し合って、多様な働き方を探るところから始めるべきではないでしょうか」。政権が掲げる「女性の活躍推進」についても、女性の登用を進めるだけでなく、男性の働き方を見直すこととセットで論じなければ実現はありえないと指摘する。

■働き方選ぶ制度

 多様な働き方を会社側が提示している例もある。ソフトウェア開発のサイボウズ(本社・東京)は、2007年から「選択型人事制度」を導入した。個人の事情に応じ、「やりたいだけ仕事をする」「残業はできるがある程度に抑えたい」「残業なし」の3通りの働き方から選べる。働く場所についても、自宅を含めた三つに分けた。働き方×場所=9通りの中から社員が選択、ライフステージに応じ、いつでも変更できる。同社によると、働き方は評価基準に含まれておらず、残業を抑えた働き方を選んでいる執行役員もいる。「成果や社内での信頼度などで評価している」という。

 導入の背景には、退職者の割合の高さがあった。05年は全社員の28%と高かったが、13年は3・9%まで低下した。同社によると、社員からは制度への好意的な意見が多いという。「制度があるだけではなく社長自ら育休を取っているので、ためらわず時短などの制度を使える」(育児中の男性社員)などの声だ。他の会社からも、制度についての問い合わせが多数寄せられているという。(中村瞬)

 〈今月のWORD〉「仕事」「家庭生活」「地域・個人生活」について、優先したい事項を聞いたところ、男性は「仕事と家庭をともに」と答える人が最多で31%、「家庭」が20%だった。一方、現実に優先していることは「仕事」が37%と最多で、希望と開きが出ている(2014年版「男女共同参画白書」による)。