来日していたオリンパス元社長のマイケル・ウッドフォード氏が8日、成田空港から母国イギリスへの帰路についた。社長復帰を目指したものの、現経営陣との委任状争奪戦(プロキシファイト)を断念せざるをえなくなり、失意の帰国。社長解任は不当だとしてオリンパスに損害賠償を求める訴状を、すでにロンドンの雇用審判所に提出したという。
「悲しい。しかし、やはり銀行の協力がないと、委任状争奪戦で勝利したとしても建設的な結果にならない」。ウッドフォード氏は離日直前、メーンバンク(主取引銀行)を含む国内の主要株主から支持が得られなかったことへの無念を改めて語った。
ウッドフォード氏が告発したオリンパスの不正経理事件。同社はバブル崩壊直後から約20年にわたって巨額の損失をひそかに抱え、投資家らの目を欺き続けていた。その隠蔽(いんぺい)に加担した一部の幹部が社内で優遇されるなど、人事もゆがめられた。告発があって第三者委員会が設けられ、ようやく日本の捜査機関も動き始めた。本来は株主や顧客に還元されるべき利益はどこに行ったのか。不透明な流れの解明が進んでいる。
ウッドフォード氏が不正経理とともに問題視したのは、取締役たちの「イエスマン」ぶりだ。常識で考えても不自然と容易に分かる巨額の支出について、高山修一・現社長は当初「適切だった」と明言。第三者委が「会社を私物視する意識が蔓延(まんえん)」「感覚が鈍磨していた」と、チェックできなかった取締役らを批判したにもかかわらず、取締役の一人だった高山社長は一時、自身の続投に含みを持たせた。ウッドフォード氏は「道化師でも会社を経営できるのか」とその姿勢を酷評した。
また、そうした高山社長らに大株主やメーンバンクから批判の声が上がらなかったことも、不思議でならなかったという。理屈の上では、銀行にも株主がおり、銀行経営者も株主への責任を果たさなければならない。オリンパス株価の下落で巨額の損失を出したのに銀行がそれを黙認しているように見えるのは、なれ合いがあるからではないか。ウッドフォード氏はそう疑っている。
帰国直前の8日朝、ウッドフォード氏は一人で東京・西新宿を歩き、オリンパス本社を眺めた。「解任された10月以降、いい人たちに会えて、私はますます日本を好きになった。だからなおのこと悲しい。この会社を国際的な日本の模範例にできれば素晴らしかったのだが……」。そう語って東京を離れた。(奥山俊宏)