公的年金を250万円まで前借りできる国の年金担保融資(年担)について、日本弁護士連合会が、制度を廃止すべきだという意見書をまとめ厚生労働省に申し入れた。前借りした後に収入が減り、生活苦に陥るケースが多発しているためだ。厚労省も対策を検討する。
厚生年金や国民年金、労災年金などの公的年金を担保に取った融資は、後で生活困窮に陥る恐れがあるため法律で禁じられているが、厚労省傘下の独立行政法人「福祉医療機構」だけが例外的に認められている。病気や冠婚葬祭など、年金生活者の急な資金需要にこたえるためだ。
年金の一定額が天引きされて返済する。融資額は10万〜250万円で年金額(年額)の1.2倍まで。利子は厚生・国民年金が年1.9%、労災年金が0.9%。2008年度末の融資残高は34万件、計約1900億円。全国の金融機関が窓口になっている。
返済が年金天引きで貸し倒れリスクが低いため、融資の窓口となっている金融機関の審査は甘い。年金生活者が身の丈を超えて借金することになりやすく、受け取る年金が減って生活保護受給に至る例が08年度に4908件あった。
自治体などから「年金と生活保護の二重受給を促す仕組みだ」と批判が出たため、機構は今年2月、改善に乗り出した。融資の際に、使い道ごとに必要額と支出時期を申告させる一方、無理なく返せるように、年金全額を天引きする方式を廃止して一定額は手元に残るようにした。返済回数も最大12回から15回に増やし、1回ごとの返済額を減らせるようにした。
しかし、日弁連は「根本的に解決するものではない」と批判。社会福祉協議会が扱う生活福祉資金貸付制度が見直され、年金生活者も利用しやすくなったことから、「年担が存続すべき目的はなくなった」と指摘した。生活福祉資金は09年10月の制度改正で、連帯保証人がいなくても利用できるようになり、利子も原則年3%から同1.5%に引き下げられ、年担の1.9%よりも有利になった。