多摩動物公園でかえったトキのヒナ(東京動物園協会提供)
東京都日野市の多摩動物公園(土居利光園長)で分散飼育されていた特別天然記念物トキに22日、初めてヒナが生まれた。性別はまだ不明だが、体重58.5グラム。ピーピーと元気に鳴き声を上げ、早速餌も食べた。昨年12月に新潟県佐渡市の佐渡トキ保護センターから移送されて4カ月。同動物公園の創立50周年の今年、初の多摩での誕生に、飼育関係者は喜びの声を上げた。
孵化(ふか)したのは先月22日、雄6歳と雌4歳のペアに産まれた卵。トキは最初の卵を抱かないことが多いため、2日後には孵卵器に移した。内部はトキ用に37.2度に保った。内蔵の温度計のほか温度センサーを卵の近くに付け、温度管理を徹底した。
誕生2日前の今月20日には、クチバシで殻を割ろうとする「嘴打(はしう)ち」が始まった。そして22日午前7時20分、無事に孵化しているのを担当の飼育員2人が確認した。午後には、親用の餌を水で溶いて小松菜や魚粉などを混ぜ、スポイト代わりの注射器で与えた。人間の新生児用の保育器に入れ、これから2週間ほど中で育てる。
同動物公園は開園以来約50年間、上野動物園とともにトキの仲間の飼育に取り組み、これまでクロトキなど10種類の飼育・繁殖に成功。人工飼料の開発・改良を含め飼育技術を磨き、佐渡トキ保護センターに技術協力してきた。これらの実績から、最初の分散飼育先になった。
このつがいは昨年ペアリングされ、昨春には卵4個を産み、うち2羽が生育している。今春は22日現在で計9個の卵を産み、うち5個は孵卵器に入れられた。巣にある4個はヒナがかえった場合、親に育てさせる予定だという。
飼育・繁殖に取り組んできた同動物公園の野生生物保全センター長冨田恭正さん(43)は「トキの繁殖にかかわれるのは名誉なこと。技術的には目新しいことは無いが正直、ホッとした。今後も一つひとつの作業を着実にやっていきたい」と気を引き締めた。佐渡トキ保護センター所長の戸貝純夫さん(53)は「多摩からの吉報に喜んでいる」と話した。(岩城興)