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オランウータン、「命の橋」は日本の廃ホース ボルネオ

2008年6月6日23時38分

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写真消防ホースで森の中の川にかけられた「橋」=BCT提供写真オランウータン愛用の消防ホース。ねじると握りやすいという=市川市動植物園、水品繁和さん提供図

 マレーシアのボルネオ島で急拡大するアブラヤシ農園に森を分断され、オランウータンたちが孤立している。伐採された森から移動しようとしても、水が苦手なため、あちこちを走る川を渡れない。そこで注目されたのが、日本の動物園でオランウータンが運動具として愛用する消防ホース。絶滅の危機にある野生を救おうと、川にホースで橋をかけるプロジェクトが始まった。

 マレーシアのサバ州野生生物局の要請を受け、4月、日本のNPO法人ゼリ・ジャパンから2人が現地に派遣された。東京都多摩動物公園のオランウータン担当飼育員、黒鳥英俊さん(55)と、千葉県市川市動植物園のオラン担当、水品繁和さん(41)だ。

 現地で活動するボルネオ保全トラスト(BCT)によると、キナバタンガン川流域で観察を続けるフランス人学者らが、3年ほどロープや鎖などで支流に橋をかけようと試みた。だが、サルは渡るのに用心深いオランウータンは使わず、困っていたという。

 この学者は昨年10月、多摩動物公園のオランウータン舎を見学。消防ホースを楽しげに使っているのに目をとめたことが、プロジェクトのきっかけになった。

 消防ホースは軽くて丈夫で、廃棄されるものを再利用するから無料。市川市動植物園では、ホースをねじってオランウータンが好む形状にする工夫をしている。

 黒鳥さんと水品さんは互いの経験をあわせて「ホース橋」を設計。大阪市の消防署から寄贈された消防ホース38本を使い、現地の人たちの協力で、幅20メートルの川にかけることができた。「ねじったホースは熱帯の森のツルと形状が似ており、オランウータンの行動に合いやすいのでは」と研究者の久世濃子さんは話す。

 現地では子連れの雌が、じっと橋を渡す作業を見ていたという。「きっと使うようになるでしょう」と類人猿担当30年目の黒鳥さん。水品さんは「動物園の飼育で得た知恵や工夫が、彼らの故郷に役立つなら、うれしい」。

 BCTによると、オランウータンはキナバタンガン川下流域の保護区で03年に1125頭いたが、07年には約800頭に激減した。バイオ燃料の人気などでアブラヤシ農園が広がって森の伐採が進んだうえ、農園に迷い込むと「害獣」として殺されるためだ。

 BCTは分断された保護区をつなぐ土地を購入、保全する「緑の回廊」計画を進めているが、開発の速さに追いつかないのが実情。「橋」は急場をしのぐ策として、同流域で30カ所以上必要という。

 BCTの事業責任者をつとめる坪内俊憲・星槎大准教授(52)はホース橋について「食品や日用品など生活を支える植物油が、動物たちの森を奪い命を絶ってしまうグローバル経済の現実を、日本人が知る『懸け橋』にもなってほしい」と話している。(鶴見知子)

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