【小若理恵】重いうつの体験を歌にして、生きる希望を伝えたいと、愛知県常滑市の会社員稲田貴久さん(41)は3年前、シンガー・ソングライターの活動を始めた。ライブでいつもこう呼びかける。「弱くてもいい。頑張らなくていいんだよ」
稲田さんは大学卒業後、名古屋市の旅行会社に就職。商品の企画などを手がけ、添乗員として世界を飛び回った。営業成績はトップで昇進も早かった。
うつが襲ったのは28歳の時。米同時多発テロで旅行客が減る一方、インターネットで格安航空券を手配する自由旅行が増え、症状はますます悪化していった。「信頼を得ても、お客さんが遠のいていく。会社では数字を求められ、喪失感でいっぱいだった」
退職し、妻とも離婚。「死にたい」と向精神薬や睡眠導入剤を大量に服用して自殺未遂を図り、入退院を繰り返した。