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2012年8月17日13時37分
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「原発難民」の詩、朗読の輪広がる 18日に東京でも

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写真:「原発難民」の詩を詠む佐藤紫華子さん(左)と朗読する青木淑子さん(右)=いわき市泉玉露拡大「原発難民」の詩を詠む佐藤紫華子さん(左)と朗読する青木淑子さん(右)=いわき市泉玉露

 福島県富岡町からいわき市に避難し、自らを「原発難民」と呼んで避難生活の苦悩を言葉に託している佐藤紫華子(しげこ)さん(84)。その詩は切迫感に溢(あふ)れた表現で、原発事故の本質を突く。各地で読み継がれるようになり、18日には東京の慶応大学で詩の朗読会がある。

 朗読会を計画しているのは富岡高校の元校長で、郡山市を拠点に朗読集団「10パーセント」を主宰している青木淑子さん(64)。佐藤さんの詩集を読み、「作り物ではない生々しい真実、避難者の思いが、一つひとつの言葉に込められている」と衝撃を受けた。「佐藤さんの詩を県外で朗読することで、福島の様子を伝えられたら」と東京での朗読会を企画した。

 佐藤さんは震災と原発事故後、県内外の避難先を転々とする中、詩集「原発難民」「原発難民のそれから」の2冊、計550部を自費出版した。「思っていることを書いてくれた」「苦しいのは自分一人じゃないんだ」と被災者たちの共感を呼び、在庫はすぐに底をついた。コピーで読んだ人も多かったという。この夏には、2冊に新たな作品も加えて再編集した「原発難民の詩(うた)」(朝日新聞出版)を出版した。

 事故を起こした原発からどこまで逃げればいいのかという悩みや苦しみ、一瞬のうちに全てをさらっていった津波のむごさ、不自由な仮設住宅暮らし……。4月には吉永小百合さんが福島市で朗読。6月には市原悦子さんがNHKのラジオ番組で紹介した。

 樺太(現サハリン)で生まれた佐藤さんは終戦直後、ただ生きることだけを考えて引き揚げ船に乗り込み、北海道を目指した。

 今、いわき市泉玉露の仮設住宅団地で、元警察官の夫武雄さん(89)と暮らしている。「第二のふるさと」と呼ぶ富岡町を原発事故で奪われ、避難生活を送っていることと、60年以上前の太平洋戦争で故郷の樺太を追われた出来事が、二重写しになる。「私は2回もふるさとを奪われた」と振り返る。

 朗読する青木さんにも思いがある。「被災した人たちがどんな苦しい思いで避難生活を送っているか、正しく理解されていない」。そして「佐藤さんの思いを届けるために、全国で朗読の場を広げていきたい」と話している。(江川慎太郎)

     ◇

ふるさと

呼んでも 叫んでも

届かない

泣いても もがいても

戻れない

ふるさとは

遠く 遠のいて

余りにも 近くて

遠いふるさと

あのふるさとは

美しい海辺

心の底の

涙の湖に ある

 自費出版「原発難民のそれから」から

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