工場や企業の見学ツアーがブームを巻き起こしている。企業活動に理解を深めてもらおうと参加費無料のものが多く、対象は親子連れから恋人同士、シニア層にまで広がる。景気が低迷するなか、キーワードは「お金をかけず、ちょっと知的に」だそうだ。
「飛行機の前の方についている金属の部品は一体何でしょう?」「速度を測る装置です」。羽田空港にある日本航空(JAL)の整備工場。客室乗務員の女性がハンドマイクで説明すると、ヘルメットをかぶった子供たちから「へえー」と歓声が上がった。
JALの整備場見学。見学客は年間5万〜5万5千人で推移してきたが、昨年度は過去最高の約6万人が訪れた。今年も半年先まで、ほぼ予約でいっぱいだ。広報部は「不景気なので、『無料』が受けているのかも」とみる。
横浜市から小学校の運動会の「振り替え休日」を利用して来たという大石さん一家。夢は「パイロットかサッカー選手」という琉聖(りゅうせい)君(9)は「クイズで飛行機の仕組みがわかった」とニッコリ。母雅美さん(37)も「エンジンって大きくてきれいですね。勉強になります」。お菓子工場の見学など、毎年1度は工場に出かけているという。
かつて出荷額日本一を誇った京浜工業地帯を抱える川崎市。排ガスや煙でイメージはいま一つ。だが最近、「夜の工場は幻想的」と、恋人同士が港近くに集まったり、写真集が発売されたりするようになった。ネットの世界では、「工場萌(も)え」という言葉も生まれている。
そこで市は昨年、市民向けの工場ツアーを実施。45人の枠に100〜350人が応募するほどの人気で、特に夜景ツアーは約17倍の767人が応募した。同市商業観光課の担当者は「以前は観光資源といえば川崎大師くらいだったんですけどね」とにんまり。