社会福祉法人「全国精神障害者社会復帰施設協会」(全精社協)による補助金の不正受給事件で、舞台となった精神障害者支援施設「ハートピアきつれ川」(栃木県さくら市)のホテルが、千葉県の医療法人に売却される見通しになったことがわかった。全精社協関係者によると、多額の負債解消が目的で、全精社協も売却後に解散する予定だという。
ホテル勤務で精神障害者の社会復帰を進める全国唯一の施設だったが、医療法人側は老人介護施設として使う計画。医療法人側は精神障害者を雇い、就労訓練を引き続き行う意向とされるが、障害者の家族らは効果的な訓練ができるかどうか心配している。
ハートピアは96年、精神障害者が働くホテルと授産施設を合わせた施設として設立された。財団法人の全国精神障害者家族会連合会による経営は赤字続きで破綻(はたん)。全精社協は07年、厚生労働省の仲介で経営を引き継いだが、赤字体質から脱せず、同省の補助金の不正受給事件を引き起こした。
だが、全精社協によると、負債総額は先月時点でも、未払いになっているハートピア職員の賃金や退職金、社会保険料など、少なくとも1億円に上るという。
全精社協は今年春ごろから、負債を清算するため、複数の法人と売却交渉を重ねた。その結果、ホテルをショートステイの老人介護施設にする計画を示した、千葉県の医療法人に売却する見通しになったという。医療法人側は取材に対し、「まだ決まっていないので話せない」としている。
医療法人の精神障害者の就労訓練を継続する考えに対し、ある施設職員は「老人介護施設では地域との交流は閉ざされる。介護の資格もないため、仕事は清掃などに限定され、社会復帰の訓練には不向きだ」と不安を口にした。
ハートピアの家族会会長(59)は「多額の赤字を抱えたのは国にも責任がある。精神障害者が生きていく場所が残るように国にも支援を求めたい」と話し、長妻昭厚労相に嘆願書を提出するという。(木村英昭、岡戸佑樹、小幡淳一)