地球温暖化がこのまま進むと、森林が二酸化炭素(CO2)の発生源になる――。こんな仮説を、広島大や国立環境研究所がまとめた。21世紀半ばには、土壌で微生物が落ち葉などを分解する際に放出するCO2が、樹木が光合成で取り込むCO2を上回るという。日本の森林生態系の一部を再現して予測した。チームは「さらなる温暖化対策が必要になるかもしれない」と指摘している。
予測実験は、国立環境研究所(茨城県つくば市)と広島大など5大学の研究チームが行った。
広島大の中根周歩(かねゆき)教授(森林生態学)らは02年から、広島県東広島市の広島大キャンパス内に大型の温室に似た4メートル四方、高さ5メートルの実験施設を計6基設置。施設内にブナ科のアラカシの若木を植えて森林生態系の一部を再現。21世紀半ばの環境を想定して、施設内部の気温やCO2濃度を上昇させ、光合成による樹木のCO2吸収量から、土壌微生物の呼吸によるCO2放出量を引いた「炭素収支」を計算して予測した。
記録が安定してきた07、08年の観測では、温度上昇に応じて、土壌微生物の活動が盛んになり土壌の呼吸速度が速くなった。一方、光合成による植物生産もCO2濃度の上昇に連れて増えるが、一定の濃度以上では頭打ちになることが判明。その結果、21世紀半ば以降の環境に近いとされるCO2濃度600ppm(現在の1.8倍)、気温(3度高)に設定した場合、1ヘクタール当たりのCO2の年間収支は、07年が5トン以上、08年でも2トン以上と、大幅なマイナスになった。
一方、環境研と広大などは、全国6カ所の森林で温度を人工的に上昇させ、CO2を放出する土壌呼吸の増え方だけを測定する別の実験施設を設置。実験の結果、気温10度上昇による土壌呼吸の増加率は、現在の2.7〜3.6倍になり、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のモデルの数値より高くなった。北海道から九州まで全国6カ所の森林で実験した土壌呼吸の増え方はほぼ同じ傾向を示したという。