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愛知県豊川市の豊川信用金庫蔵子(ぞうし)支店で、サバイバルナイフを持った男が客と職員計5人を人質に取り立てこもった事件で、発生から約13時間後の23日未明、県警の捜査員が店内に突入し、男(32)を監禁の疑いで現行犯逮捕した。
突入したのは愛知県警捜査1課特殊捜査班「SIT」。人質4人の救出は約20分間の「作戦」だった。
「犯人がうたた寝しかかっている」
ネゴシエーターと呼ばれる交渉役の捜査員から情報が入った。
23日午前2時40分過ぎ、防護服姿の隊員が動いた。8人ははしごを伝って2階ベランダに駆け上った。盾や容疑者を制圧するための棒状のものを持っている。ガスバーナーの炎が闇に浮かび、腰高窓を破った。隊員らは静かに建物内に滑り込んだ。
名古屋市の県警本部に置かれた対策室(L1)からは現地の前線本部(現本〈げんぽん〉)に指示が飛んだ。
「進入路にバリケードはないか」
L1の指示を現本は隊員に伝え、即座にL1に打ち返す。
「バリケードなし」 やりとりは短く、淡々として、力強い。
「5分かかってもいい。落ち着いて遂行願う」
隊員は身をかがめ、1階へと続く階段を忍び足で下る。
「突入のタイミング、現本で判断されたし」
沈黙。L1に居並ぶ幹部ら約50人はかたずをのんだ。午前3時7分。現本のカウントダウンが静寂を破った。
「5、4、3、2、1、ゴー!」
1階通用口から突入した隊員を含めて一斉に1階カウンター内になだれ込んだ。ナイフを握る容疑者に、体ごと突進する隊員たち。男は叫び声を上げてあらがったが、何人もの隊員が折り重なるようにねじ伏せ、ナイフを奪った。
午前3時8分。現本からの報告。
「マルヒ(被疑者)確保。人質けがなし!」
L1に歓声と拍手が巻き起こった。作戦を指揮した沖田芳樹本部長が初めて立ち上がった。
「みんなよくやってくれた」