|
■人生の勝者とは
連載の最終回は、若い人たちにメッセージを送ります。
まず言いたいのは、社会的な成功と人生の成功は別だ、ということです。
社会的な地位を得ることを人生最大の目標に掲げる人がいるかもしれません。
しかし、連載第6回で、社長になれたのは「運」とお話ししたように、たとえ努力したとしても、実力だけで社長や役員になれるとは限りません。
一生懸命に仕事をした結果、残念ながら芽が出ずに昇進できなかった人がだめだとは全く思いません。例えば、休日にボランティア活動に取り組み、多くの友人たちに尊敬されている人は、すばらしい人生をおくっていると思います。
逆に、立身出世をしても、家族と距離があり、友人が一人もいない。そんな人生はさみしくありませんか。財産を築いたとしても、「あの人よりも少ない。もっとお金が欲しい」と思えば、幸せを感じることはないでしょう。
人生の本当の勝者とは、様々なものを犠牲にして社会的な地位やお金を手に入れた人ではありません。毎日を精いっぱい生きて、人生を終えるときに、「楽しかった。いい人生だった。ありがとう」と周囲に感謝する心を持てるかどうかが、問われていると思います。
◆仕事は厳しくて苦しいもの
私は、仕事も遊びも全力で取り組んできました。若い人は何事にも一生懸命であって欲しい、と思います。
仕事は基本的に苦しく、厳しいものです。与えられた仕事の中で、やりたいこと、楽しいことを自分自身で見つけることが大切です。楽しさが見つかったら、しめたものです。自分の能力を高める流れにつながっていきます。
他人の仕事を見て、自分の目の前の仕事と比べて「楽しそうだな」と、うらやましく思うかもしれません。しかし、どんな仕事にも厳しさはあります。
まずは仕事を楽しくするために、今の仕事に一生懸命取り組んでください。
仕事が楽しくなってくると、その先に見えてくる人生は大きく異なってきます。仕事をして苦しいときは、自分が成長しているときです。そのことを忘れないでください。
当社に入社する新入社員を見てみると、各自の能力の差はほとんどないと感じています。では、能力が伸びる人と伸びない人の差はどこで生まれるのか。それは、前向きに仕事に取り組めるかどうかにかかっています。
新しい商品をセールスする際に、「こんな商品売れるわけがない。成績は悪いだろうから、これではまた上司に怒られるな」と後ろ向きに考えるか。それとも、「あのお客様だったら、興味を示してくれるかもしれない」と前向きに考えるか。その差は歴然としています。
◆リスクに立ち向かう力
「最近の若い人は……」と言って、若い世代を批判する人たちがいますが、私はそのような批判は意味がないと思っています。
私が知りうる限り、若い世代は新しい情報を仕入れて、よく勉強をしています。私が若かったころの高度経済成長時代とは異なり、先行き不透明な時代を必死に生き抜こうとしている姿勢を見ると、つくづく「立派だ」と思います。
社会人になると、仕事を通して、尊敬できるお客様や先輩、同僚に出会うと思います。そうした出会いを大切にしてください。最終的な判断は自分で責任を負わないといけませんが、周囲に相談できる人がいると、困難な仕事も乗り越えやすくなります。私は会長になったいまでも、迷ったときに相談する人がいます。
若い世代に期待するのは、リスクに立ち向かう力です。年齢を重ねると、自分の可能性の限界が見えてきます。挑戦しようという意欲は失われがちで、できるだけ失敗しないように、リスクをとらないように振る舞う人が増える傾向があると思います。
日本には、少子高齢化や財政赤字などの大きな課題があります。しかし、日本の企業には世界レベルの環境技術など、ものづくりを軸に強い国際競争力があります。私は日本の未来は明るい、と信じています。
未来を明るくするには、若者たちがリスクに挑戦できる社会にしなければいけません。その責任は私たちの世代にあります。
グローバル化が進展する時代です。当社では海外に進出する際には、多くの若い人が「働きたい」と手を挙げます。ぜひ、グローバルで通用する実力をつけてください。
若い人の情熱と行動力に期待しています。(聞き手・古屋聡一)