競泳界のスーパー女子高生

競泳界のスーパー女子高生

池江璃花子

2000年7月14日生まれ
(16歳)2016年7月28日現在
  • エントリー種目
  • 100M バタフライ
  • 50M 自由形
  • 100M 自由形
  • 200M 自由形
  • 4x100M リレー
  • 4x200M リレー
  • 4x100M メドレーリレー

今井月

2000年8月15日生まれ
(15歳)2016年7月28日現在
  • エントリー種目
  • 200M 個人メドレー
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 この春女子高生になったばかりの仲良しコンビがリオへ――。リオデジャネイロ五輪で日本競泳陣最多の7種目にエントリーし、4種目で日本記録を持つ池江璃花子(りかこ、16)=ルネサンス亀戸。日本選手権の200メートル個人メドレーで2位に入り、初の五輪切符を手にした今井月(るな、15)=愛知・豊川高。この夏はじける2人の素顔を追った。
スクロール
初の五輪にも
リラックス

 これから遠足にでも出かけるかのような、はじける笑顔。高校生になったばかりの2人を見ていると、初めての五輪が近づいているとは思えない。

 5月31日夜、競泳女子の池江と今井は、旅行客でにぎわう羽田空港の国際線ターミナルにいた。向かう先は欧州。日本代表として、フランスやスペインなどで開かれる国際大会に出場するためだ。リオデジャネイロ五輪前の貴重な実戦となる。

 スーツケースに20枚以上のDVDを詰め込んだのは、今井だ。「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」や「アメトーーク!」など、中身はすべてバラエティー番組。「とにかく笑えるのを見て、リフレッシュしたいので」。それを聞いた池江は「お互いの部屋を行き来して、見たい」と声を弾ませた。

中学時代から注目の的

 先に注目を浴びたのは今井だ。中学1年になったばかりで出場した2013年4月の日本選手権。200メートル平泳ぎで並み居る高校生や大学生を押しのけ、3位に入った。当時はまだ12歳。水をとらえる感覚に優れ、水から受ける抵抗を最小限に抑えながら前へと進む泳ぎが持ち味だ。

 その2年後の日本選手権で輝いたのが池江だった。長い手足で水を無駄なくつかまえ、最大限の推進力を得られる理想的なフォームの持ち主は、非五輪種目の50メートルバタフライで優勝。100、200メートル自由形ではともに3位となり、世界選手権の日本代表に選ばれた。日本の中学生が世界選手権に出るのは14年ぶりの快挙だった。

急接近し、親友に

 2人の距離が一気に縮まったのは中学2年のとき。優秀な選手を集めての合宿で同部屋になった。たわいもない会話に花を咲かせ、そろって寝坊したことも。2人の距離が一気に縮まった。

 服の趣味や、かっこいいと思う芸能人のタイプなどは、面白いくらいにかみ合わない。今井が気に入って買った靴を池江に見せると、「何これ? 全然かわいくない」。そんなやりとりを「何でも言い合えて、気を使わなくていい」と今井。池江も「一緒にいて楽しい」。普段は東京と岐阜に別れて練習している2人。大会や合宿などで今井が東京へ来ると、オフの日には原宿へ出かけ、買い物をしたり、パンケーキを食べたりしている。

池江璃花子

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父も母も
2人を後押し

 池江はリオ五輪で日本競泳陣最多の7種目にエントリーした。母親の美由紀さんは言う。「あの子は天井がないような育ち方をしてきた。私たちの常識に、はめ込んではいけない」

 幼児教室で先生をしている美由紀さんは国内外の文献などを参考に、生後すぐから手の指先に刺激を与え続けた。おむつを交換した後に体を起こすときは、自分の指をつかませて引き上げた。

 3歳で水泳を始めた璃花子がさらに大きくなると、家の中に遊具の鉄棒を置いて遊ばせた。11歳の時、家の新築を機に、リビングの天井にうんていをつくった。一つ飛ばしで進ませたり、両手を同時に離して飛び移らせたり。難しい技でも、いつの間にか出来るようになっていた。

 4月、大会や合宿を終えて初めて豊川高に登校した今井は、10台以上のテレビカメラに囲まれた。「期待されている分、結果で示したい。プレッシャーをうまく自分の力に変えたい」。堂々の対応だった。

 「練習してたんですよ」と父の博美さん(50)。取材対応で困らないよう幼い頃からインタビューの練習をさせてきた。

 今井は8歳の頃に母リサさん(享年37)を病気で亡くしている。遠征や合宿の続く娘を博美さんが支えてきた。荷物が多いからと新幹線の車両の乗車口近くの席を押さえ、戻ってくる時には早く疲労がとれるようにとトレーナーのケアを受けさせた。帰宅の遅い今井選手の話し相手にもなり、友だちの近況や学校であったことなどを聞いた。博美さんは言う。「私が支えて、月はしっかり泳ぐ。それが私たちなりの二人三脚なんです」

リオ
「一緒に行けるね」

 リオ五輪の代表選考会を兼ねた今年の日本選手権。池江は早々と100メートルバタフライで五輪出場を決めた。一方の今井は100メートル平泳ぎで代表入りを逃し、迎えた200メートル個人メドレー。世界選手権銀メダルの渡部香生子(JSS立石)をかわして2位に入り、五輪代表の座を勝ち取った。

 プールから上がった今井に池江が駆け寄り、抱きついた。「今年は一緒に行けるね」。昨年の世界選手権に出場した池江に対し、今井は代表入りを逃していた。「一緒に行けない自分がふがいなかった」。1年越しの願いをかなえ、2人して、泣きじゃくった。

 昨年、日本代表で最年少だった池江。年上の大学生や社会人らに囲まれ、どことなく表情が硬かった。「今年は同い年もいて、緊張もほぐれている」。視線の先には、今井がいる。

 1年かけて池江に追いついた今井。母校や地元で壮行会を開いてもらうたびに、日の丸を背負う実感がわいてきた。「たくさんの方に期待されていることに気づいた。うまく自分の力にしていけたらと思う」

準備万全、
さあ本番へ

 7月18日、池江はブラジルに向けて日本を離れた。春先に採寸した選手団のブレザーを見にまとい、「筋肉がついてもうパツパツ。胸元や肩がきつい」と笑った。成長を続ける肉体と同様、泳ぎも力強さを増している。6月26日に100メートル自由形の日本記録を塗り替え、7月10日には非五輪種目の50メートルバタフライの日本記録を更新。計4種目の日本記録保持者としてリオに乗り込む。

 今井はスペイン南部にある標高2320メートルの高地シエラネバダで7月末まで練習を続け、五輪本番に備える。遠く離れていても、池江の動向は気になるもの。「日本新を出しているので、負けないようにがんばりたい」

「涙を止めたくても止められなくて。死ぬほどうれしいです。」

「すごい夢みたい。たぶん、今日は眠れないです」

「世界と戦いたい」

「ワクワクして楽しみな気持ち」

「最高の結果になるように頑張りたい」

「メダルも狙っていきたい」

リカコとルナの夏が、
やってきた