
ツイッターやフェイスブックなど感動を共有できるインターネットサービスが普及し、「ソーシャル五輪」と言われるロンドン五輪。開幕後間もなく、そのツイッターを巡って一つの騒動があった。
男子自転車ロードレースのテレビ中継で、先頭と後続集団の距離の差が分かるデータが示されなくなった。取材したロイター通信に、国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当は、沿道の観客がツイッターでたくさんつぶやいたことで、テレビ局にデータを送るはずだった通信会社の回線がパンクした旨を暴露した。さらに、「今後は緊急時以外のツイートは控えて欲しい」と呼びかけたことで話題になった。
五輪期間中、市外から100万人が訪れるといわれるロンドン。交通渋滞と共に通信回線への負担を懸念する声はあった。ロンドンの通信環境はもともと良いとはいえないからだ。
取材中にも苦労させられている。
メダルを取った柔道選手の一夜明けての会見を取材したときのこと。撮った会見動画を日本の編集局へ送ろうとして、ふとWiFi(無線LAN)ルーターを見たら「2G」と表示されている。これは日本のNTTドコモなら今年3月にサービスを終了した「mova」に相当する通信規格でデータを送る速度が遅い。
普段は「3G」(ドコモでいうFOMA)回線が使えるが、回線が混むと2Gに切り替わるらしい。英国で2Gはまだまだ現役だと聞いていたが、これで動画を送るのは不安。先輩の永田工記者と一緒に会見場近くの喫茶店へ急いだ。固定の通信回線につながる店の無線LANをあてにした。
無事に店のWi―Fiにつなぎ、永田記者と手分けしていざデータ送信。すると、しばらくして永田記者がボソリと言った。
「んん。これだと1時間半ぐらいかかりますね」
1時間半?
おいおい。時刻は英国時間で午後2時過ぎ。市内では五輪競技が繰り広げられているというのに、1時間半も喫茶店に足止めされるわけにはいかない。
ノートパソコンをしまい、今度は通信速度がいくらか速いことを確認している宿へ。三脚や動画機材を担ぎ、上り下りの激しい地下鉄の駅を移動する。宿について、2人がかりで30分ほどかけてようやく動画を送り終えた。
日本の通信環境は恵まれている。携帯電話は2Gが終了し、3Gが標準。光回線並みの通信速度を持つ「LTE」サービスも始まった。固定回線も、日本では人が住んでいる地域の9割に光ファイバーが張り巡らされ、4割の世帯が契約済み。世界的には驚異的な数字だ。
一方の英国では、ブロードバンドというとADSLが基本で、なかなか光化が進んでいない。国は光の普及計画に躍起で、ロンドン市内でも頑張っているというが、オリンピックパークなど再開発地域が中心だ。
いったいなぜか。出国前に英国駐在員経験のある通信会社の社員に聞くと、「単純な話です。町並みは石造りが基本で、工事が進まないから」との答えが返ってきた。
確かに建物も道路も石やれんが。穴を開けて光ファイバーを通すのも一苦労というわけか。英国のレトロで美しい町並みは好きなのだけれど。
3日には、五輪会場周辺で、一部携帯電話会社の通信障害があった。これも「定期的にあること」と聞いていた。地下鉄の遅延や休止が日常と受け止められる国。通信障害にも日本ほどうるさくないらしい。
五輪競技も後半戦に入る。5日と12日にはマラソンがある。また沿道でたくさんの人がつぶやくだろう。再び混乱が起きるのか。私もつぶやきながら見守ろう。(和気真也)