〈 氷上編 〉
2009年10月11日0時3分
吉沢純平=5日、甲府市の小瀬スポーツ公園、飯塚晋一撮影
所属は「とらふぐ亭」。ふぐ料理チェーンに就職1年目だった2年前は競技の傍ら、配送を手伝い、水槽の水温をチェックしていた。いまはスケートに専念させてもらっている。
元々スピードには定評があったが、五輪には縁がなかった。ソルトレークの時はけが、トリノは不調。2年半前に山梨学院大卒業を迎えたが、就職先が見つからない。スケートを続けられるのか。「どうしても五輪に出たい」。1人でスポンサー探しを始めた。「退路を断ち、自分で環境を変えたい」と思った。
周囲に聞き、インターネットを眺めながら、スポーツに理解のありそうな企業を探した。片っ端から電話した。不況もあって、面接までこぎつけるのがやっとで、30〜40社に断られた。「社会の厳しさを初めて知った」
たどり着いたのがとらふぐ亭。兄の一哉さん(25)が店長をしている縁だ。所属選手は自分1人だ。
9月の全日本距離別の500メートルで初優勝し、バンクーバー五輪の代表候補に躍り出た。スケートにかける自分に配慮してくれる社員の人たち、会社が決まらない自分を見守ってくれた両親と兄。周囲の思いに応えるためにも、いま、五輪だけを見据える。(大谷聡)
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よしざわ・じゅんぺい 85年3月、長野県南牧村生まれ。兄一哉さんとともに山梨学院大に進む。大学の同世代にトリノ五輪代表の藤本貴大がいる。04年の世界ジュニア選手権で総合5位。170センチ、64キロ。