〈 氷上編 〉
2009年10月28日9時7分
女子1500メートルも制して3冠を達成した小平奈緒=飯塚晋一撮影
大器が本気になった。
「すべてをスケートに費やせる。夢のような生活です」。大学を卒業し、スケートに専念できる環境になった。筋トレで体重は2キロ増え、上半身がたくましくなった。笑いながら言うトレーニング中の言葉は「打倒、吉田沙保里」だ。
8月の国際大会で500メートル、1500メートルとも自己ベストを大幅に更新し、今月の全日本距離別は国内最高記録をマークした1000メートルを含め、3冠を達成。日本のベテランコーチは言う。「五輪では3種目でメダルを取る力がある。ひょっとしたら金も」
スケートの盛んな長野県茅野市出身。近くに2歳上の吉井小百合(日本電産サンキョー)がいて、新谷志保美(竹村製作所)の父がコーチだった。実業団の誘いを断り、進学したのは「将来教師になってスケートを教えたかったから」。勉強と競技を両立してきたが、就職先は卒業後の4月中旬まで決まらなかった。「もう、ニートスケーターを覚悟しました」
やっと決まった所属先。新しい黄緑色のワンピース(ユニホーム)には四つ葉のクローバーをあしらった。
「支えてくれる人、みんなに幸せを届けたい」(稲崎航一)
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こだいら・なお 86年5月26日、長野県茅野市生まれ。中学2年で全日本ジュニアを制し「スーパー中学生」と呼ばれた。伊那西高―信州大を経て今春から相沢病院所属。165センチ、62キロ。