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2012年5月24日
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オリンピック会場建設に携わる日本人

文と写真:マクギネス真美

写真:オリンピック会場となる「グリニッジパーク」を後方にのぞむ。ロンドンオリンピック開幕へカウントダウン84日目の日に撮影した=山嵜一也さん提供拡大オリンピック会場となる「グリニッジパーク」を後方にのぞむ。ロンドンオリンピック開幕へカウントダウン84日目の日に撮影した=山嵜一也さん提供

地図:グリニッジの地図拡大グリニッジの地図

 ロンドンオリンピック会場のひとつであるグリニッジ・パーク(Greenwich Park)では、馬術と近代五種の競技が開催される予定となっている。その会場建設の現場監理をしているのは、日本人建築士、山嵜一也さん。

 どういういきさつで日本人である山嵜さんがロンドンオリンピックの現場を手がけることになったのか、また、オリンピック会場を作る現場はいったいどのようなものなのか、お話をうかがってきた。

マスタープランの模型作りから関わる

 ロンドン五輪の仕事には「何か運命的なものを感じる」という山嵜さん。

 所属しているロンドンの設計事務所「アライズ・アンド・モリソン・アーキテクツ(Allies and Morrison Architects)」は、もともとオリンピックのマスタープランを手がけた会社だ。

 「その前に勤めていた事務所が経営難で、もう僕を雇うことができない、となったとき、その事務所と同じビルにあった今の事務所の模型制作場で雇ってくれることになったんですよ。僕の作る模型がうまい、とそこのトップの人に声をかけてもらって」

 「どうしても外国で仕事がしたい」と、1年間勤めた日本の建築事務所をやめてやって来たのがイギリス。模型を作るためにこの国にやってきたんじゃない、という気持ちもあったが、言葉ができないから、まずはそこで経験を積んでから上にいくしかないと覚悟を決め、1年半ほど模型を作り続けていた。その間に、事務所がロンドン五輪のプロジェクトを手がけることとなった。

 「そのときのプランというのは、五輪誘致のためのプレゼンテーション用のもので、僕はオリンピック会場の周りの建物なんかの模型をいくつも作ったんですよ」

 その後、晴れて建築士として勤務するようになり、さまざまなプロジェクトを手がけ、ロンドンの主要駅のひとつであるキングス・クロス・セント・パンクラス(King's Cross St. Pancras)地下鉄駅の改修という大プロジェクトでは、3年にわたり現場監理として務め、竣工に導いた。

 そうした実績を経て、事務所が手がけているオリンピックプロジェクトのうちのひとつ、グリニッジ・パーク会場の現場監理を、4月初めから担当している。立ち上げ時には模型を作ったオリンピックに、今度はその現場を監理し、完成を見届ける立場になったのだ。

調整につぐ調整を要求されるオリンピックの現場

 現場監理というのは、設計のみに関わるだけではなく、現場で設計通りできない部分が出て来た場合には、プランにあった完成に近づけるよう、調整、指示する仕事だ。日々、現場からの問題や相談がもちかけられ、メールでの指示や、ときには現場に出向いて行き、工事がうまくいくようにプロジェクト全体をまとめていかなくてははならない。それに、オリンピックともなれば、やはりクライアントの組織が大きい分、いろいろなところからの意見・注文があり、調整すべきことが多く、プレッシャーは相当なものだ。

 「問題は山積みだけれど、まあ、現場というのは常にこういうものでしょう。それよりこの仕事は、オリンピックの現場を直に見られるというのが面白い。それにロンドンオリンピックがあったからこそ、僕がこの国で建築のキャリアを積むことができたと考えると、ある意味この仕事はその恩返しでもあるのです」

完成予定は6月末

 グリニッジ会場は、観光名所として有名なグリニッジ旧王立天文台の周りにある広大な公園を利用する。「サステナブルで、歴史上もっともグリーンなオリンピック」を目指しているロンドン五輪では、できるだけ既存の施設を会場に使う、という方針がとられており、ここもそのひとつ。

 「クロスカントリーでは公園全体を使って競技が行われるので、競技を見ながら公園全体の雰囲気を感じることができるのも、この会場の見どころのひとつだと思います。森の中を馬が走っている姿を見るのは、きっといい感じだと思いますよ」

 セキュリティーのため、会場が完成してしまえば一般の人はいっさい入ることができなくなる。クロスカントリー用の会場をつくってしまうと公園全体に柵をしなくてはならなくなるため、現在は部分的な閉鎖をしつつ、メーンスタジアムと報道関係のための事務所、厩舎(きゅうしゃ)などの建設が進められている。クロスカントリーについては、一番最後まで手を付けないようにしているのだというが、6月末にはすべてが完成予定だという。

「街を歩き、肌でオリンピックを感じたい」

 オリンピックではやはり馬術を観戦するのかとうかがうと「馬術ってイギリスではかなり人気があるみたいで、チケットがとれなかったから見れないんですよ」との答え。

 英国内のチケット販売では、公平を期すために、関係者であっても皆、オンラインでのチケット申し込みをし、抽選が行われたと聞いてはいたが、ほんとうに、オリンピック現場の中でお仕事をしている方でさえもチケットが手に入らないというのには少し驚いた。 「でも、やっぱり馬術は見ておきたいから、テレビで見ることにします」

 チケットがとれたサッカーの試合を見に行く以外、オリンピック期間中はひたすら街を歩いて、肌でその空気を感じたい、という山嵜さん。

 「もちろんオリンピック会場にも足を運びますよ。外からだけでも会場を見たり、施設と施設との距離感などを体感することは建築家として大事なことだと思います」

 それが、次に日本でオリンピックが開催されるときに役にたつはずだから、という山嵜さんにとっては、オリンピックの仕事は今回のロンドンだけで終わり、というわけではなさそうだ。

プロフィール

マクギネス真美さん プロフィール画像

マクギネス真美(まくぎねす・まみ)
9年半の雑誌編集者時代を経て2003年渡英。共著『ハッピーハッピーロンドン』(双葉社)。「ダ・ヴィンチ電子ナビ」では電子書籍のレビューをしている。辛抱を強いられる公共交通機関、街中のおかしな看板や不思議な食べ物など「イギリスの実態」を、おもしろ画像とともに自身のウエブサイトでレポート。最新情報はツイッターでもつぶやいています。
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