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2012年6月10日
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雨にも負けず「一生に一度」 ジュビリーに燃えた英国

文と写真:マクギネス真美

写真:雨の中、傘をさしてのパーティー拡大雨の中、傘をさしてのパーティー

写真:カップ・ケーキも青、赤、白に彩られて。ストリート・パーティーにて拡大カップ・ケーキも青、赤、白に彩られて。ストリート・パーティーにて

写真:ダイヤモンド・ジュビリー記念のエールビールも登場。ビールにうるさい(?)英国人たちからも好評のようだった拡大ダイヤモンド・ジュビリー記念のエールビールも登場。ビールにうるさい(?)英国人たちからも好評のようだった

写真:新聞のトップ記事は、連日、ダイヤモンド・ジュビリーの話題だった拡大新聞のトップ記事は、連日、ダイヤモンド・ジュビリーの話題だった

写真:参加したのが遅かったので、もうすでに半分ほどになってしまっているが、ストリート・パーティーでの、持ち寄りスナック、お菓子の並んだテーブル拡大参加したのが遅かったので、もうすでに半分ほどになってしまっているが、ストリート・パーティーでの、持ち寄りスナック、お菓子の並んだテーブル

 「これは一生に一度の機会(It's a once in a lifetime opportunity)」。

 テレビでも新聞・雑誌でも連日こう繰り返されていた、エリザベス女王の在位60年を記念する「ダイヤモンド・ジュビリー」の祝賀行事が終わった。

 イギリスらしく(?)期間中は多くの雨に降られたが、それでもジュビリーの盛り上がり方は、去年のロイヤル・ウエディング以上だったと言える。道路、住宅の玄関や窓、商店のショーウインドーや、スーパーに並んだ商品の包装……街中にこんなにもたくさんのユニオン・ジャック(英国旗)があふれかえるのを見たのは初めてだった。

 もちろん、この国のことだから、王室不要論を唱える人はいるし、今回も反対集会を開いた人たちや、一連の祝賀行事を批判する意見も目にした。

 それでも、新聞や雑誌ではダイヤモンド・ジュビリーの「特別号」や「記念版」などが次々発売されているし、このお祭り騒ぎを楽しんだ人は多かったに違いない。

大雨の水上パレード

 祝賀行事でのハイライトのひとつは、6月3日(日)の「テムズ・ダイヤモンド・ジュビリー・パジェント(The Thames Diamond Juilee Pageant)」。

 エリザベス女王、エジンバラ公(フィリップ殿下)、チャールズ皇太子夫妻、ウィリアム王子夫妻、ハリー王子が乗ったのは、生花で装飾された赤と金色に彩られた船。王室一家が見守る中、大きい船、小さなボート、カヌー、蒸気船など、さまざまなタイプの船が通っていく。

 特にニュージーランドからはるばるやってきたマオリ族のカヌーは目を引き、テレビでも何度も映されていた。

 残念だったのは、この日は雨で、それも、水上パレードの後半になるにつれ、それがどんどんひどくなってしまったことだ。テレビの画面でみているだけでも、雨の激しさや風の強さが伝わってきた。船には屋根があるとはいえ、寒さは相当なものだったと思うのに、86歳のエリザベス女王は、船に据えられた椅子に腰掛けず、ずっと立ちっぱなしだった。

 その毅然とした態度には「すごいなぁ」と感心したけれど、一方で「体は大丈夫だろうか」と思った人も多かったはずだ。

 実際、女王よりも4歳年上の90歳で、昨年のクリスマスに心臓の手術を受けたエジンバラ公は、この水上パレードを見学した翌日、膀胱の感染症により、入院することになってしまった。

 このイベントに、小さな蒸気船に乗って参加したというご近所さんがいたのだが、彼の奥さんによると、やはり、水上はかなりの寒さだったとのこと。

 「わたしはテムズ川沿いで見学していたのだけれど、船はちらっと見ただけで、あまりの寒さに、主人を待たずに早めに帰ってきてしまったの」

と彼女は言うが、その判断は正解だったようだ。というのも、ご主人はパレードの後も、船を降りるまでにテムズ川で長く順番を待たなければならず、この日、家に戻ってきたのは、夜9時を過ぎていたという。

 「でもね、やはり一生に一度の経験だから、とても興奮していたわ」と、その船の写真を見せてくれた奥さんも、やはりうれしそうだった。

チャールズ皇太子のスピーチに感動

 4日(月)には午後7時からバッキンガム宮殿前でのコンサート。こちらもテレビでの鑑賞だったのだが、意外なことに、一番「ぐっ」と来たのは、コンサートの最後、チャールズ皇太子のスピーチだった。

 エリザベス女王に、まずは「Your Majesty(女王陛下)」と呼びかけた後、「Mummy(お母さん)」と皇太子が言うと、会場からは大きな歓声があがった。

 入院してしまってコンサートを鑑賞できなかった父親エジンバラ公については「皆が大きな声で叫んでくれたら、病院にいる父に聞こえるかもしれません」と呼びかけ、それに応えた観客が大きな声援をあげた。

 チャールズ皇太子といえば、故・ダイアナ元妃との離婚などもあり、国民からはあまり人気がない。

 今回のスピーチについて「あれもひとつの人気とりのサービスだ」なんて嫌味を言う人もいたが、一方で、チャールズ嫌いの人たちでさえ「ちょっと感動的だった」とも言っていたほどだった。

 スピーチの最後は、女王への感謝の万歳三唱(three cheers)として、皇太子が音頭をとり、全員で‘hip hip hooray’を三回唱えて締めくくられた。

伝統の「ストリート・パーティー」に参加

 さて、ダイヤモンド・ジュビリー期間中は、英国中のあらゆる地域で、ストリート・パーティーが開催された。

 筆者の住むエリアでは、最終日である5日(火)の夕方からパーティーがひらかれた。というのも、多くの地域でストリート・パーティーが行われた3日は、テムズ川の水上パレード見学に行ってしまう人も多いからということで、その日は避けようということになったからだった。

 当日は曇ったり晴れたりの天気だったのが、パーティー開始時刻の午後4時前に、雨が降り始めてしまった。でも、少々の雨でイベントを中止したりなどしないのがイギリス人(そんなことをしていたら、この国ではどんな行事もできなくなってしまう)。雨の中でバーベキューをしながら、皆、レインコートを着て、傘をさしながらのパーティーが始まった。

 この「ストリート・パーティー」というのは、イギリスの伝統らしい。文字通り、一般の道路でパーティーを開くので、その際には、地域の役所に申請をして、道路をその時間中通行止めにすることができる。「コミュニティの活性化につながる」といった理由で、役所もこうしたパーティーを歓迎しており、地域によっては補助金がでることもあるという。

 過去に英国中でストリート・パーティーが盛大に行われたのは、1977年。エリザベス女王の即位25年を記念したシルバー・ジュビリーのときだったという。

 2002年には即位50年のゴールデン・ジュビリーがあったはずなのだが、なぜかこちらを話題にする人はあまりいない。

 今回のパーティーで初めて口をきいた、同じ通りに住む40代の男性、デイヴによれば「シルバー・ジュビリーのときは、王様の仮装をして、紙で作った剣を持って弟と一緒にパーティーに参加していたのを覚えているよ。でも、10年前といえば、独身でロンドンに暮らしていて、王室のことなんて、まったく興味もなかったし、ストリート・パーティーが近所でやっていたかどうかも覚えていないよ」。

 主催者の一人、アリソンは「ここに15年以上住んでいるけれど、同じ通りでも一度も話しをしたことがない人だって多い。こういう機会はもっとあってもいいのに」と、去年のロイヤル・ウエディングの際のパーティーでの成功のときに思ったそうで、だから今年もこのパーティーを企画したのだという。

 子どもたちは手作りの紙製王冠をかぶり、ユニオン・ジャックをフェイスペインティングして、雨の中を駆け回っている。住民が持ち寄ったお菓子が山積みになっているので、何度もそのコーナーに立ち寄っては、お菓子をポケットに詰め込んでいる子の姿もある。 大人は、イギリスの夏の定番カクテル「ピムズ」やビールを飲みながら「はじめまして」とあいさつして(何年も近所に住んでいるのに!)会話を始める。

 バーベキュー以外にも、各自持ち寄ったおつまみやサンドウィッチ、サラダなどがテーブルに並んでいる。

 わが家が提供した巻き寿司は大好評で、あっという間になくなった。作り方を聞かれ、初めて会った人とも気軽に話をすることができる。こういうときは、日本にこのような、人気のパーティー・フードがあることを誇りに思う。

 祝賀イベントを見にでかけた人たちが数人いて、ほとんどが「あまりの人出で実際の女王は大きなスクリーンで見ただけだった」と言っていたが、それでも「まあ、一生の記念だし、雰囲気を楽しめたからよかった」というのが一致した意見のようだった。

 「英国人気質・英国人らしさ(Britishness)」を観察できる! と、楽しみにしていたパーティーだったが、雨も風も強くなり、寒くなってきたこともあって、小さなこどもや、年配の方たちは1〜2時間ほどで家に入ってしまった人も多かった。

 かくいう筆者も、途中から寒気を感じて早めに退散したのだが、それでも風邪をひいてしまった、というオチがついた。後で聞くと、ご近所でも、風邪をひいてしまった、とか体調をくずしてしまった、という人もけっこういたらしい。

 とはいえ、ダイヤモンド・ジュビリーの大イベントは、多くの人の記憶に残ることだろう。

「女王や王室を好きかどうか」ということよりも、家族で一緒にストリート・パーティーに参加したり、雨の中、ユニオン・ジャックを振って歓声を上げたり、歌ったりした、そのことこそが、誰にとっても「一生に一度」の思い出になるに違いない。

プロフィール

マクギネス真美さん プロフィール画像

マクギネス真美(まくぎねす・まみ)
9年半の雑誌編集者時代を経て2003年渡英。共著『ハッピーハッピーロンドン』(双葉社)。「ダ・ヴィンチ電子ナビ」では電子書籍のレビューをしている。辛抱を強いられる公共交通機関、街中のおかしな看板や不思議な食べ物など「イギリスの実態」を、おもしろ画像とともに自身のウエブサイトでレポート。最新情報はツイッターでもつぶやいています。
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