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2012年6月21日
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ロンドン、街を埋めるさまざまな「落書き」を楽しむ

文と写真:マクギネス真美

写真:Ebor StreetのEineによる‘ANTI'拡大Ebor StreetのEineによる‘ANTI'

写真:道路標識の裏側に貼られたステッカーについて説明してくれるガイドのヘドリーさん拡大道路標識の裏側に貼られたステッカーについて説明してくれるガイドのヘドリーさん

写真:描かれてからそれほど時間がたっていないものだが、警察を豚に見立てているため、早々に消されるだろう、とのこと拡大描かれてからそれほど時間がたっていないものだが、警察を豚に見立てているため、早々に消されるだろう、とのこと

写真:ROAによる巨大な作品以外にもたくさんのグラフィティが並ぶハンブリー・ストリート拡大ROAによる巨大な作品以外にもたくさんのグラフィティが並ぶハンブリー・ストリート

写真:アルファベットの作品で有名なEine。彼の作品は、英国首相デヴィッド・キャメロンから米大統領バラク・オバマに贈られたことでも知られている拡大アルファベットの作品で有名なEine。彼の作品は、英国首相デヴィッド・キャメロンから米大統領バラク・オバマに贈られたことでも知られている

写真:3000種類のスプレー缶、20ノズルスプレー缶、5000種類のマーカーペンが揃っているというショップ‘Chrome&Black’はアーティストたちの御用達拡大3000種類のスプレー缶、20ノズルスプレー缶、5000種類のマーカーペンが揃っているというショップ‘Chrome&Black’はアーティストたちの御用達

写真:こんなところにも!Pablo Delgadoの作品は足下をよく見て探さないと拡大こんなところにも!Pablo Delgadoの作品は足下をよく見て探さないと

イースト・エンド(East End)といえば、どんなメディアを見ても「ファッション、アート、音楽のジャンルにおけるトレンドの発信地」と表現されているエリア。オリンピック・パークが作られているのもこの地域に含まれることもあり、ますます注目を浴びる場所になっている。

ロンドンでも珍しいガイドツアー

この地で何より目をひくのは、ありとあらゆる場所に描かれている落書き(グラフィティ:Graffitti)、ストリート・アート(Street Art)の数々だ。

なんの予備知識もなく見ているだけでも十分楽しめるが、今回、「インサイダー・ロンドン(Insider London)」が2009年に始めた"London Street Art and Graffiti"という、グラフィティとストリート・アートに特化した、ちょっと珍しい観光ツアーに参加してみた。

見つかれば罰金の「違法行為」

ガイドは、映像作家で、詩人、文筆家でもあるヘドリー(Hedley)さん。

「アートは『エモーション・ラングエージ(Emotion Language)』です。説明や理由づけが必要な『デザイン』とは違う。そしてストリート・アートは、通りや街全体をキャンバスに見立てた、スケールの大きなものです」

彼は、ストリート・アートをこう説明する。グラフィティ・アーティストたちは、建物、道路、街そのものを舞台に、自己を表現し、また、自身の考え、主張を伝えようとしているのだという。ただし、なかにはただのいたずらや人を不快にさせるものもある。

「落書きは違法行為です。見つかれば罰金が課せられ、度重なれば、刑務所に送られることにもなります」

そう説明しながら、ツアーが始まってすぐ通りかかった警察署の前でヘドリーさんが足をとめた。警察署の入り口のすぐ側の道路標識に貼られたたくさんの「ステッカー」を指差す。

「グラフィティ・アーティストたちは、子供じみたユーモアも大好き。だから、こうやって『自分はこんなに警察の近くにまで近寄れたぞ』って、競い合うようにして、わざとここにステッカーを貼るんですよ」

さまざまな種類の落書き

このステッカーをはじめ、「グラフィティ」とひと口にいっても、いろいろなバリエーションがあるというのを、ツアーを通して知った。

たとえば、いたるところに書かれている文字の羅列。「タグ(tag)」と呼ばれるこれは、自分の名前や、特定のフレーズなどをフェルトペンやスプレーペイントなどで書き残したもの。その行為自体は「タギング」といい、もともとはストリート・ギャングたちが自分の縄張りを示すために行っていた行為だったものがグラフィティの世界に取り入れられたのだという。

街を埋め尽くす個性豊かな作品たち

「この大きな鶴はROAの描いたもの。彼はその場所に関係する動物をテーマに描くことで知られています。」

「カレー通り」などとも呼ばれ、バングラデシュ料理のレストランが林立する、このエリアのメーンストリート、ブリック・レーン(Brick Lane)。その脇に伸びるハンブリー・ストリート(Hanbury Street)を少し入ったところで、ヘドリーさんが上の方を指さす。グラフィティだらけの一帯で、ひときわ目を引く巨大な動物。これを描いたROAは、ロンドンのみならず、世界中でこうした巨大な作品を描き続けていて、違法に描くもの以外にも、依頼を受けて仕事として描いている作品があり、人気アーティストのひとりだそうだ。

そして、巨大な鶴のそばには、イラストレーターでもあるMalarkyによる、鮮やかな色づかいのオオカミの皮をかぶった人(?)の絵があり、その隣にはチリ出身のアーティストOtto Schadeによるステンシル。その横にはヘドリーさんにとってもまだ目新しいものだという、作家名不詳のものまで……あぁ、どれもが強烈に主張のある落書きで、一帯が埋め尽くされている!

この通りに限ったことではなく、ツアーが始まってからずっとそうだ。ガイドを聞きながらグラフィティを眺め、写真におさめていたら、全部を撮影しているわけでもないのに、なかなか前に進めない。そして、これでもか、これでもか、と続く作品を見ていたら、つい笑顔になってしまう。このアーティストたちのエネルギー、パッションって、何なんだろう?

ギャラリーで展示、販売されるものも

イースト・エンド・カルチャーの中心地ともいえる「オールド・トゥルーマン・ビール醸造所(Old Truman Brewery)」にやってくると、そこにはブティックやレストラン、カフェ、映画館、バーやナイトクラブが集まっていた。週末にはマーケットも開かれて大変なにぎわいになる中庭には、今や世界的に有名なブリストル出身のグラフィティ・アーティスト、Banksyの作品もあった。また敷地の奥にある"Stolenspace Gallery"は、Banksyの友人で、自身もストリート・アーティストD*Faceの経営するギャラリーで、アーティストたちの作品を購入することができる。

ここはグラフィティ・アーティストたちにとっても、イースト・エンドにやって来たら一度は足を運ぶ場所らしく、たくさんのタグやステッカーがビルのドアや窓に残されていた。

常に新しいグラフィティが現れる

2時間という予定のツアーは、時間をオーバーし、イボア・ストリート(Ebor Street)にあるEineの特徴的なアルファベットの作品の前で終了した。毎日、いくつもの落書きが消えては、また新しいものが現れるイースト・エンド。今までも何度となく通っていたはずなのに、ガイドツアーに参加してみて、アーティストたちの熱意を感じたせいか、これまで以上に街が魅力的に写る。

何度訪ねても、常に新しいクリエイションに出会えるのだから、楽しくないはずがない。きっとまたすぐここに戻ってくるだろうなと、煉瓦(れんが)造りの壁に"ANTI"と繰り返される強烈なインパクトのグラフィティをカメラに収めつつ、確信した。

データ

Insider Londonのユニークな市内ツアー案内ページ
今回参加したツアーは参加費20ポンド。プライベートツアーも受け付けてくれる
Stolenspace Gallery
所在地:Dray Walk, The Old Truman Brewery, 91 Brick Lane, London E1 6QL 電話番号:+44 (0) 207 247 2684
The Old Truman Brewery
住所:91 Brick Lane, London E1 6QL

プロフィール

マクギネス真美さん プロフィール画像

マクギネス真美(まくぎねす・まみ)
9年半の雑誌編集者時代を経て2003年渡英。共著『ハッピーハッピーロンドン』(双葉社)。「ダ・ヴィンチ電子ナビ」では電子書籍のレビューをしている。辛抱を強いられる公共交通機関、街中のおかしな看板や不思議な食べ物など「イギリスの実態」を、おもしろ画像とともに自身のウエブサイトでレポート。最新情報はツイッターでもつぶやいています。
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