
オリンピックが終わった。イギリス国中がこれほどまでオリンピックに熱くなるとは、一体誰が予想していただろう。
周囲でも、始まる前にはまったく興味を示していなかった人たちでさえ、少なくともいくつかの種目をテレビで見て、感動したというし、わざわざ最終日の男子マラソンを見学にでかけた、という友人もいた。
人々のオリンピックに関する感想を聞きながら、自分たちの住む土地でオリンピックが開催されるというのは、街自体が特別な雰囲気を醸し出すのだ、ということを感じた。たとえ競技観戦のチケットを持っていなかったとしても、自転車競技やマラソンなど、市内の路上で応援することができる種目があるというのは、やはり地元ならではだ。また、街全体が旗やポスターなど、オリンピック関連であふれ、新聞やテレビのメディアも連日オリンピックの話題でもちきり、というのが、五輪開催地の様子だった。
そんなお祭り騒ぎの後、まだオリンピックの余韻(よいん)にひたりたい人もいるようだ。BBCは、今週末に開会式の再放送をすることや、秋のオリンピックDVD発売を早々に発表した。また、オリンピックで使用されたグッズなどを販売するオークションサイトもオープンしている。ここでは、現在ロンドンの街に設置されているオリンピック・マスコットの像や、開会式で使用された、各国の旗なども販売されていて、たとえば、ユニオンジャックの模様を身につけたマスコット、ウェンロックの像は、すでに1万ポンドを超える値ががつけられている。
大会中、意外だったのは、人々のオリンピックに対する関心の高さだけでなく、公共交通機関のスムーズさ、そして街の静けさだ。大会前には、ロンドン交通局が大々的にキャンペーンをして、オリンピック期間中はなるべく公共交通機関を避け、徒歩や自転車での移動を進めていた。
その効果があってか、人々が通勤時間をずらしたり、在宅勤務にしたり、あるいは街に出るのを控えたらしく、交通機関の混乱などはほとんどなかった。普段なら観光客でごった返すオックスフォード・ストリートや、コベント・ガーデンなども、少なくとも筆者が見た限りでは、いつもの夏よりも人出はかなり少ないように感じた。
ところで、今回のオリンピックで重要な役割を果たしたのが、多くのボランティアだったというのは、誰もが認めているところだ。ロンドンオリンピック組織委員会会長セバスチャン・コーさんが、閉会式でのスピーチでボランティアの尽力に触れたとき、大変な拍手が起こり、しばし鳴り止まなかったというのが、それをよく示していた。
もともと、オリンピックでボランティアを採用したのは、1948年のロンドン・オリンピックだったという。今大会でのボランティアは「ゲームズ・メーカーズ(Games Makers)」と呼ばれ、2010年秋の募集時には、24万人からの応募があったという。その中の10万人が面接を受け、約7万人が実際にボランティアとして今回の大会を支えた。
また、オリンピック組織委員会とは別に、ロンドン市が採用したボランティア「チーム・ロンドン・アンバサダー(Team London Ambassadors)」は約8千人。こちらも、ロンドン各所で、オリンピック観戦客のみならず、一般の観光客等の質問に答えたり、案内をしたりと活躍した。
実際に会場で出会ったボランティアたちは、とてもフレンドリーで、見ていて気持ちがよかった。オリンピック・パーク内にいるボランティアは、家族連れやカップルがカメラを取り出すと「写真、撮りましょうか?」と、すかさず声をかけていて、まるで東京ディズニーランドにいるような錯覚を起こしそうだった。
また、会場近くの道路で人の整理をしているボランティアたちが「今日は楽しい時間を過ごしましたか〜?」と大きな声でたずね、人々が「イェーイ」と応える、といった場面も多く見られた。
普段のイギリス人の他人との距離のとり方を知っている身としては、みんな、多くのゲストを迎える側として、楽しく、気分よくロンドンでの時間を過ごしてほしいと努力しているのだ、ということを強く感じた。
ボランティアたちは、ユニフォームと公共交通機関を利用できるトラベルカードが支給された以外に報酬は一切支払われていないという。それでもメディアでインタビューに応えるボランティアたちは口を揃えて「とてもいい経験だった。自分たちも楽しむことができた」と言っていた。
29日から始まるパラリンピックでも、多くのボランティアたちが活動してくれるという。彼らの協力を得て、今度もきっと、オリンピックと同様に、ロンドンを訪ねた人たちが、気持ちよく過ごせる大会になるに違いない。
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