英国内では、29日から始まるパラリンピックについて、これまでで最高の成功をおさめる大会になるだろう、と期待されている。チケットは、北京パラリンピックの180万枚を超え、すでに230万枚が売れたという。
あまりの人気に、オリンピック委員会は22日、「競技を見ることはできないが、オリンピック・パーク内に入ることのできるチケット」を大人5ポンド、子ども1ポンドで、10万枚追加販売することを発表したほどだ。
今回のロンドン・パラリンピックがこれほど注目されているのには、先に成功をおさめたオリンピックの影響が大きいのは間違いないが、英国がパラリンピック発祥の地であることも関係しているかもしれない。
当コラム連載を始めたとき、オリンピック、パラリンピックのマスコットについてご紹介したのを覚えている方はいるだろうか。
パラリンピックのマスコットは「マンデビル」(Mandeville)という名前なのだが、これは、パラリンピックの起源となった場所、バッキンガムシャーのストーク・マンデビル病院(Stoke Mandeville Hospital)にちなんでつけられたという。
ストーク・マンデビル病院には、脊髄損傷の治療を専門に行う科がある。1944年にそれを設立、第二次世界大戦中から大戦後、負傷した兵士たちの治療を請け負ったのが、ドイツから英国へと亡命してきたユダヤ人医師、ルートヴィヒ・グットマン(Ludwig Guttman)氏だった。彼が、患者たちのリハビリのためにスポーツを推奨し、1948年にロンドンオリンピック開会式の日に、この病院でスポーツ大会を開催したのが、その後、国際大会としてのパラリンピックが開かれるきっかけとなったという。
この話は、イギリス人であっても、これまで知っている人はわずかだったようだ。ところが、先週BBCで放映された「The Best of Men」というドラマのおかげで、ロンドンでのパラリンピック大会開催前に、多くの人が知るところとなった。
ドラマは、史実に基づいて作られ、グッドマン医師が、医療の知識や技術のみならず、強い意志と信念に基づいて、脊髄損傷患者の治療、リハビリをし、社会復帰をサポートした様子を描いていた。番組は350万人が視聴したという。グッドマン医師役は映画「戦火の馬(War Horse)」にも出演していた、エディ・マーサン(Eddie Marsan)が演じた。
人気となったドラマの制作はBBCだったが、パラリンピック大会は、チャンネル・フォー(Channel4)という放送局が、400時間以上にわたって生中継をすると発表している。英国内でパラリンピックをこれほどの規模でテレビ放送するのは未だかつてなかったそうで、これを見ても、今回の大会がこれまで以上の注目を集めているということがわかる。
また、同局が制作した、パラリンピック大会のプロモーション・ビデオが美しくて魅力的だと、国内はもとより、インターネットを通じて、世界中から注目を集めている。もしまだ見ていない方は、大会が始まる前に見ておくことをおすすめする。
すでに、大会参加選手がヒースロー空港に到着したというニュースが流れた。聖火リレーは24日から始まる。大会開始まであと1週間をきった。あれほど批判、心配されていたオリンピックを成功させたロンドンが、どんなふうにパラリンピックをホストするのか、しっかりと見届けたいと思う。