2009年10月1日18時19分
スピードスケートの岡崎朋美とフィギュアスケートの織田信成が、仲良くほほ笑んで見つめ合った。ゴシップではなく、合同合宿でのレクリエーションの話。前回の06年トリノ冬季五輪で低迷した日本勢。日本オリンピック委員会(JOC)が打開策として「競技の枠を超え、チームジャパンとして結束せよ」と号令をかけた。成果はあがるのか。
「個人の力だけで戦うのは限界がある。ジャパンの結束力を再確認してほしい」。今月8日、東京・ナショナルトレーニングセンター(NTC)。3日間の合宿は、上村春樹・JOC強化本部長のげきで幕を開けた。岡崎や織田のほかにも、スキージャンプの岡部孝信、カーリングの本橋麻里ら選手、コーチ142人が顔をそろえた。
トリノ五輪で日本のメダルは、フィギュアの金一つ。惨敗だった。
JOCが「チームジャパン」にこだわる背景には、夏の成功体験がある。北京五輪前の08年1月、今回の合同合宿でも使われたNTCが本格稼働。陸上や体操など多くの夏季競技のトレーニング施設に宿泊棟も備える。各競技はこぞって合宿を張り、選手たちの仲も自然と深まった。
成功例としてJOCが挙げるのは、卓球とクレー射撃の逸話だ。福原愛らは、本番で「完全アウェー」になることを想定して、NTCで中国語の大歓声のCDを流しながら練習を積んだ。この話を聞き及んだクレー射撃の中山由起枝がCDを譲り受け、練習に使った。ママさん選手としても話題を呼んだ中山は4位入賞。「結束力アップだけでなく、生きた情報交換にもつながる」(JOC強化部)というわけだ。
冬の場合、各競技が集えるNTCのような強化拠点はない。合宿初日、スピードスケートの長島圭一郎は「ほとんどの人と初めて会った。名前を覚える自信がない」。本橋は「本番前にいろんな人と知り合っておけると気持ちも落ち着く」と話した。
3日間のメニューは、「勝負脳の鍛え方」がテーマの座学、メディアトレーニング、体力測定と盛りだくさんだった。JOCは6月に2度目を開く。海外遠征で1度目は参加できなかったアルペンスキーの皆川賢太郎らが加わり、総勢約160人になる予定。
実際の効果はどうなのか。ある有力女子選手は「最後に信じられるのは自分自身の力」と、ややつれない反応。一方、5度目の五輪に挑む37歳の岡崎は「若者に囲まれて、フレッシュな気持ちをもらった。まだ若い人には負けません」。少なくとも、ベテランの気持ちをかき立てる力はあったようだ。(平井隆介)
(2009年5月27日 朝刊掲載)