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上村、エアを究めた夏 ウオータージャンプで空中感覚

2009年10月8日16時19分

写真:ウオータージャンプで空中のバランス感覚を磨く上村愛子=上田幸一撮影拡大ウオータージャンプで空中のバランス感覚を磨く上村愛子=上田幸一撮影写真:前髪を20センチ近く切り、黒髪に。ウオータージャンプの練習で手応えをつかみ、笑顔の上村愛子=上田幸一撮影拡大前髪を20センチ近く切り、黒髪に。ウオータージャンプの練習で手応えをつかみ、笑顔の上村愛子=上田幸一撮影写真:3月の世界選手権、第2エアで「バックフリップ・アイアンクロス」を決める上村愛子=飯塚晋一撮影拡大3月の世界選手権、第2エアで「バックフリップ・アイアンクロス」を決める上村愛子=飯塚晋一撮影

 スキーを履いた上村愛子がジャンプ台から踏み切る。プールに着水すると、大きな水しぶきが上がった。6月1日、福島県猪苗代町での全日本合宿の一コマだ。この「ウオータージャンプ」やトランポリンで空中感覚を養うのが、今回の合宿のテーマだった。

 初夏はエアの季節――。フリースタイルスキーのモーグルで、雪のない時期は空中技(エア)の強化に打ち込める。上村は「ジャンプ台の形が変わったから跳びやすい。良い合宿になると思う」。バンクーバー五輪の会場となるサイプレスマウンテンのジャンプ台と似た形状に改修した練習台に好感触をつかんだ。

 モーグルは30点満点の採点競技で、内訳はターン50%、スピード、エアが各25%。2回のエアは、違った演技を披露しなければならない。

 2冠に輝いた3月の世界選手権をはじめ、昨季は第1エアで横1回転の「ヘリコプター」、第2エアは後方宙返りをしながらスキーを交差させる「バックフリップ・アイアンクロス」で通し、結果を出した。完成度は高い。

 しかし、上村にはさらに難度の高いエア技がある。「コークスクリュー720」。体の向きを斜めにして2回転する。瓶のコルクを抜く動きに似ているのが名前の由来だ。

 ただし、この大技は、両刃(もろは)の剣でもある。3年前のトリノ五輪が教訓として残る。

 02年ソルトレーク五輪後、後方宙返りなど縦回転系の技が解禁になり、上村はトリノに向け、あえて最高難度のコークスクリューに挑んだ。

 五輪本番でエアは成功したが、タイムを得点化したスピード点5.76点(7.5点満点)は決勝進出20人中15位。エアに固執しすぎ、スピード感に欠けた。躍動感の欠如は得点の50%を占めるターン点にも影を落とした。5位。メダルはまたもお預けだった。

 「前回のトリノはモーグル界でエアがすごく変わった頃だったので、自分もそれに飛び込んだ。それはそれで良かったと思う。でも、今、重視しているのはターンとスピード」と上村は言う。

 コークスクリューは成功すれば高得点が望める。ただ、エアの採点基準は「難度×完成度」。精度も大切だし、着地後のターンにスムーズな移行ができるかは、ターン、スピードの得点に直結する。

 だから、「エアを変えても全部がプラスに働くようになるんだったら、コークスクリューも使いたい」(上村)。ウオータージャンプでつかんだ感触を雪上で確かめてから最終的に決めたいという。

 ソルトレーク五輪男子モーグル金メダルのヤンネ・ラハテラ・コーチは「愛子は昨夏もコークスクリューの練習はした。五輪で披露するかは、この時期には決められない。楽しみにしていてよ。愛子はまだまだうまくなるから」。

 エアで「封印」を解くかは、まだ未定。ライバルに、今から手の内を明かす必要もない。(稲垣康介)

(2009年6月12日 朝刊掲載)

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