スピードスケート会場のリッチモンド五輪オーバルから歩いて10分足らず。日本通運カナダ支店の倉庫1階に7月、日本スケート連盟の「サポートハウス」はオープンした。同オーバルで7月20日から8月2日まであったスピードスケートの全日本合宿で、選手たちが早速活用した。
「どうでした?」。長島圭一郎、加藤条治、吉井小百合(日本電産サンキョー)らが滑るたびに映像を確認に来る。合宿での氷上練習中、連盟のスタッフが撮った映像を、サポートハウスからリンクに持ち込んだパソコンでチェックしていた。
1秒間に300枚撮影できるハイスピードカメラの映像なので、着氷の瞬間に氷をしっかりとらえているか、前後左右の重心のバランスがどうか、などが分かりやすい。吉井は「氷を押す方向や、カーブで肩が下がるとか自分の課題がよく分かる」と感心した。長島、加藤、吉井に及川佑(びっくりドンキー)、田畑真紀、穂積雅子(ダイチ)を加えた、今季特別強化選手の6人には、自分のパソコンでも滑りの映像を見られるようにと、個別にUSBメモリーが渡された。
来年2月の五輪まで借りた約200平方メートルの室内に、固定自転車2台、ミーティングスペース、スケートの刃を調整する機械、映像閲覧室にキッチンなどがある。閲覧室では直近の世界大会での映像も見ることができる。
■和食で栄養+安心感
合宿中、キッチンで連盟の科学スタッフである管理栄養士が毎日「補食」をつくった。宿舎の食事は栄養面で偏り、量も足りない。プラス1品として、ホウレン草のごまあえやひじき、おにぎりなどの和食を出した。「海外生活で不足しやすい鉄分やビタミンを摂取してもらいたい。直接的な栄養素以外にも、選手たちにしっかり栄養補給しているんだという安心感を与えられるのが大きいですね」と栄養士の柳沢香絵さん。
五輪で日本のスピードスケートは、1984年サラエボ大会で北沢欣浩が男子500メートルで銀メダルを獲得してから、02年ソルトレーク大会まで6大会続けてメダルをつかんできた。特に男子500メートルはその間にメダルを逃したことのないお家芸だった。だが、その伝統は、メダルなしに終わった前回の06年トリノ大会で途切れた。
鈴木恵一スピード強化部長は「トリノ五輪の惨敗の屈辱を晴らしたい。それにはメダルしかない。準備できることは最大限やる」と強調した。サポートハウスは、メダル奪回への前線基地だ。(稲崎航一)
(2009年8月24日 朝刊掲載)