■カリスマ　新技開発中

　スノーボード界のカリスマに１月１４日夜、米ユタ州パークシティーの庶民的な中華料理店で、ばったり遭遇した。

　「五輪に向けて、近くの山で練習している。まだ披露していない新技も開発中だよ」。トリノ五輪の金メダリストは、バンクーバーでも金メダルが確実視されている。

　突然の取材にも快く応じる気さくな好青年。「フライング・トマト」の異名の由来である赤い長髪でわかったが、Ｔシャツとジーパンのカジュアルな格好は一見、どこにでもいる若者だ。しかし、実は「億万長者」。米ケーブルテレビ局ＥＳＰＮが主催し、高額賞金が魅力のスポーツ競技会、Ｘゲームズでは優勝の常連。自らの名前の入ったテレビゲームソフトが販売され、華やかなトリックを披露するＤＶＤにも多数出演する。

　スノーボードメーカーの草分け、バートン（本社・米バーモント州）にスカウトされ、１３歳からプロとして活躍する。バートン創業者、ジェイク・バートン氏は「出会いは９歳ごろかな。めきめき上達して、あっという間にスターになった。つねに新たな挑戦を求めるのが魅力だ」。

　バンクーバー五輪ではホワイトが昨夏、ニュージーランドで初披露した大技「ダブルコーク」が金メダルの目安ともいわれ、日本勢も練習に励む。しかし、米国のメダル候補が最近、この技を練習中に着地に失敗して重傷を負うなど、技の開発が過熱するのに伴って危険度も増している。

　ホワイトは言う。「自動車メーカーは速く走る車を開発する。それを安全に乗りこなすかはドライバーの責任さ。それに、常に刺激やチャレンジを欲するのは人間の本能だろ？」。技の進化の最先端を走る男の持論だ。（稲垣康介）

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　ショーン・ホワイト（Ｓｈａｕｎ　Ｗｈｉｔｅ）　米カリフォルニア州出身。２００６年トリノ五輪男子ハーフパイプ金メダル。昨年２月の五輪テスト大会のＷ杯でも優勝。２３歳。