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猛練習、新たな滑りを体得 ショートトラック・桜井美馬

2009年10月16日17時13分

写真:きつい練習に表情も引き締まる=平井隆介撮影拡大きつい練習に表情も引き締まる=平井隆介撮影

 自分の体がグーンと前に伸びるスピードを感じた。「ああ、この感じだったのか」。この夏、1年間続いたモヤモヤが晴れた。

 ショートトラックの日本チームは、昨季から韓国人の金善台(キムサンテ)氏をヘッドコーチに招いた。98年長野五輪のリレー銀メダリスト。この競技の先進国から来た金氏の教えは、これまで桜井が取り組んできた滑りと全く違っていた。いわく「重心を後ろに残して、かかとで押せ」。最初は頭が混乱した。「前に速く進みたいのに、なんで後ろに体重を残さなきゃいけないの?」

 金氏は日本のトップ選手たちに春から徹底した滑り込みを課した。5月末まで2カ月間、東京で合宿。間髪入れず、6月上旬からは札幌で1カ月間氷に乗った。その間、「かかとで押すとその分、刃が長い時間氷をとらえられるという理屈はわかった」。そして圧倒的な練習量が、頭での理解だけでなく体感をくれた。「もう迷いません」

 二つ上の兄は雄馬(ゆうま)、弟は冬馬(とうま)。3人とも名前に「馬」がつく。馬を愛した祖父からもらった。「昔は嫌で仕方なかった。必ず『みま』とかに間違われて、言い直すのが恥ずかしかった」。だがスケートで世界を渡り歩くようになって変わった。「イタリア語の『ビバ』(万歳の意)に音が似てるから海外ではすぐに覚えられた。今は自分の名前に誇りを持っています」

 今、日本チームの仲間と一緒に米ソルトレークシティーにいる。連日40度近くに達して日差しは強いが、札幌と同じカラッとした空は気に入っている。「生まれ育った大阪の夏と比べたら天国。いい環境で練習に打ち込める」

 02年五輪でも使われたリンクは、標高が高くて空気が薄く、スピードが出る。「去年とは別人の桜井美馬を目指して、やっているんです」。迷いを吹っ切った夏。得意の1500メートル、そしてリレーでの表彰台を思い描いて、ソルトレークの氷上を疾走する。

    ◇

 さくらい・びば 89年、堺市生まれ。幼稚園児のころからスケート教室に通い、小1で本格的にショートトラックを始める。一昨季の全日本選抜、全日本で総合優勝。08年に入学した早大を今年は休学し、五輪に専念する。

(2009年8月4日 朝刊掲載)

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