2009年10月25日17時2分
米国勢らライバルたちの上達が目覚ましい。9月4日、ニュージーランド遠征から帰国した第一声には、そんな危機感があった。
「課題が見つかりました」
雪上競技ではいち早く、8月25日に開幕したワールドカップ(W杯)ハーフパイプ第1戦。昨季の世界王者、青野は7位だった。1回目の最初のトリック(技)で着地に失敗し、2回目も攻撃的な滑りはできなかった。優勝はトリノ五輪金メダリストのスーパースター、ショーン・ホワイト(米)。W杯に先駆けて行われたニュージーランドオープンも自身は5位。優勝は、やはりホワイトだった。
「これまで自分が出たすべての大会で、今回は一番レベルが高かった。僕が地元の小さなパイプ(半円筒状のコース)で練習していたとき、米国勢は大きな良いパイプで練習していたみたい」
ライバルたちは縦回転など危険を伴う大技を練習する際、コースにマットを敷いて特訓に励んでいたという情報を現地で耳にした。
「自分たちは遅れている。その差を埋めないと。日本にはリスキーな技を試す場所がない。できれば、海外で練習したい」
昨季まで、青野のスタイルは横3回転の「1080」が決め技で、縦回転のトリックはほとんど見せていなかった。それが少し心境の変化があったという。
「決め技は横回転が良いですけど、予選ではジャッジに縦回転を見せるのも大事。いろんなトリックを出来た方が、ジャッジの人も飽きないだろうし」
次のW杯は11月のスイス。
「久々に悔しい思いをした。リベンジしたい。世界チャンピオンっていっても、今回だめだったんで、そんな意識はない」。夏に味わった挫折感は、五輪に向けた向上心に切り替わっている。
◇
あおの・りょう 愛媛県出身。雪国育ちではなく、地元の通年屋内施設で技を磨く異色のスノーボーダー。今年1月の世界選手権男子ハーフパイプ優勝。松山大。19歳。
(2009年9月12日 朝刊掲載)