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福島のり子(スキークロス) 初代女王狙う「大穴」

2010年2月9日16時17分

写真:「今、一番行きたいのは美容院。遠征続きで行く暇がなく、前髪は自分で切ってます。五輪前に行けたらいいな」=平井茂雄撮影「今、一番行きたいのは美容院。遠征続きで行く暇がなく、前髪は自分で切ってます。五輪前に行けたらいいな」=平井茂雄撮影

 バンクーバー五輪で、新種目として実施されるスキークロスの代表です。「雪上の障害物競走」と呼ばれる種目で初代女王を狙います。

    ◇

〈アサヒ・コム拡大版〉

 武内 いよいよ五輪です。

 福島 いよいよという気持ちと、まだ全然実感がわかない自分とがいます。トレーニングしているときとかは「近づいているな」と思うんですけど、普段、家にいるときなどはそんな気もしません。まだ帰国したばかりなので、まだ実感がわきません。

 武内 どんな調整を。

 福島 直すところがたくさんあるので、時間を大切にして充実した練習をしないと、と思ってます。具体的には、速いスピード域でのスキー操作とスタートです。スキークロスは、4人で滑るんですけど、予選は1人ずつタイムを競って、それがスタート時のスタート位置になる。有利なスタート位置を得るには、予選タイムが重要になる。今の自分のスピード域での限界では、ちょっと足りない。そのために、スピードが出る滑降系の競技を練習に取り入れています。「目がついていく」という感覚ですが、相手の動きが見えたり、うまい身のこなしができたりするようになる。

 武内 スタートで重要なことは。

 福島 スキーをスタート台の斜度に合わせて落とし込めること。スキーが地面に接する時間が長いと加速していける。今は頭の位置を動かさず、一つの塊になって、早く体とスキーを斜度に落とし込んでいくことをやってます。人間は小指に一番、力が入ると聞いたので、体幹と手の小指に力を入れるようにして、腕や肩が緊張しないようにしています。

 武内 競技でおもしろいと感じる部分は。

 福島 スタートゲートに入った時のドキドキワクワク感はもちろん、人を抜いたときに「よっしゃ!」と思います。スタートで前に出てしまえば、自分のペースでミスなくいくのがベスト。出遅れてしまった時は焦らず冷静に自分のラインを見ていくというがポイントになります。

 武内 勝敗の分かれ目は。

 福島 コースによって違いますが、メンタルは重要。スタートゲートに入ったときに、周りのペースにのまれないようにとか、どれだけ冷静でいられるか、というところですね。スタートゲートでは、隣の選手が近くて、息遣いとか聞こえてくる。そこで弱い自分がいると「やばい

」となっちゃう。

 武内 スタートが勝敗に占める比率は高いですか。

 福島 コースが長くて幅が広ければ、あまり関係ない。短くて抜きどころが少ないと60%くらいになってくる。バンクーバーのコースは30〜40%くらいだと思います。

●ジャンプが得意

 武内 バンク、ウエーブ、ジャンプの障害をクリアしていきますが、得手不得手はありますか。

 福島 大きなキッカー(ジャンプ台)は得意。空中に出るのが好きなので。苦手なのは深いバンク。自分のターンの悪い癖が出ちゃう。体が早く中に入って外側スキーが割れ加速しなくなるんです。

 武内 ジャンプも順位にかかわる。

 福島 高く飛んで飛距離を出しちゃうと、減速してタイムロスにつながる。いかに高さを出さずに低く飛ぶかです。あとは飛び出しのラインですね。

 武内 コースの把握が重要ですね。

 福島 アイテム(障害)がどんどん迫ってくるんで。何度も何度も同じウエーブが続く場合などに、いかに自分のラインを頭に入れて、それを守れるかが重要です。

 武内 ところで、五輪代表決定を知ったのは。

 福島 先月のフランスW杯第5戦の朝でした。レースがあったんですが、天候が悪くてホテルで待機してきたら、母から電話がありました。コーチはレースが終わってから知らせようとしてたようなんですが、母の方が早く連絡してくれました。母のテンションがすごく高かったんですけど、私はその日のレースに集中していたので、「あ、分かった。ありがとう」という感じで。向こうでは連戦連戦で気持ちに余裕がなかったんです。

 武内 帰国してからは周りの祝福もあったでしょう。

 福島 はい。すごく地元の力を感じました。色んな人に支えてもらって感謝しています。

 武内 昨年10月に骨折した右手首は大丈夫ですか。

 福島 転倒したときは意識を失ったほどだった。帰国してからは「リハビリをがんばろう」と切り替えたんですが、いざ雪上に戻ると、できないことが多くあるということが分かって焦りました。まだ手首が痛いので、体を引っ張る動作ができず、スタートの練習も今日(3日)が初めてという状態なんです。雪上に出てからは落ち込みました。周りの練習や、仲間がレースに出るを見て、なんで今、自分はここにいるんだろうって。練習している周りを見て焦り、夏から積み上げているターンの精度が落ちているのに焦り……。昨年12月のW杯開幕戦に、ぶっつけ本番で臨んだんですが、練習中に転んで、手を守ろうとしてひざを痛めた。焦って良いことはないと学びました。今は、前を向かないと何も始まらないので、ネガティブな発言はしないで頑張ろうって練習してます。

 武内 前進した部分は。

 福島 スタートの練習ができるようになったのも大きな進歩。痛み止めが2粒から1粒になったとか。小さなことですが、ちょっとずつよくなっている。先月のW杯第7戦は、今までダメだったスタートで1番に出られたので自信になった。

 武内 けがをして得たことはありますか。

 福島 スタートゲートで冷静でいられるようになった。今まで緊張していたんですが。リハビリ中に、今できることに全力を注ごうとしていたことがよかったのかな、と。自分がやらなきゃいけないことに集中できるようになった。

●目標はウオッカ

 武内 ところで、スキークロスの癖が日常生活に出てしまうことはあります?

 福島 車を運転していて、前の車が遅いと「抜きたい」とイライラしちゃいます。そんなにスピードは出しませんけど。あと、スタートがすごく似ているので、競馬をよく見るようになった。ウオッカが好きなんですが、前に2頭いて、コースをふさがれた中で、どこで出てくるんだろう、とか。

 武内 自分とウオッカを比べると。

 福島 全然、ウオッカじゃありません。友人には「ウオッカになりたい」って言ってます。牝馬(ひんば)が牡(おす)の中で戦っているところに、昔の自分が重なるんです。スキークロスを始めた頃、まだメジャーじゃなくて、ずっと男の子と一緒に海外を転戦してたんです。男9人の部屋に私1人とか、ダブルベッド一つの部屋に男の子と2人とか、しょっちゅう。でもみんな同等の仲間として扱ってくれて「お前のベッドはその真ん中な」とか言われて、慣れっこになりました。今は五輪種目になり、環境も整備されましたが、その頃があっての今だな、と思います。

 武内 鍛えられましたね。

 福島 かなり。

 武内 自分を競走馬に例えると。

 福島 完全に大穴でしょう。みんなは油断してると思うので、そこに割って入って、勝ち進みたい。

 武内 アルペン競技からスキークロスに移ったのは。

 福島 大学のときに同級生に誘われて出た大会が初めてだった。人と一緒に滑るのが初めてだったので、そのときに出たアドレナリンの量が半端なかった。今まで感じたことのない興奮にとりこになった。子どもの頃やってたスキーってこれだ、と。友達と山頂からふもとまでタイムを競ったり、林間コースで競争したり、直滑降で向かいの山のどこまで上れるか、ということをやっていたのを思い出したんです。

 武内 このタイミングで正式種目になって、強運ですね。

 福島 よく言われます。すごくラッキーだと思う。スキークロスの初期からやっている人たちは、五輪の正式種目にするためにインターネットで署名するなど苦労してきた。だから、トリノ五輪の後に正式種目になったときは、泣きました。自分の部屋で体育座りしながら泣いてました。大きな目標ができたというのが大きかった。それに向かって頑張ろうという強い気持ちになれたのがうれしかった。

 武内 夏場には色んなスポーツでトレーニングしているとか。

 福島 マウンテンバイクは、バンクでのライン取りとか体の軸の取り方が役に立つ。インラインスケートはスキーの短い版と考えて、雪上に出られない時期に、スキーの基礎トレーニングとしてやってます。水上スキーは軸の取り方やターンの構成とかに役立ってます。マウンテンバイクと山歩きが好き。ラフティングなども行きますよ。

 武内 スポーツ以外に興味あることは。

 福島 今は美容院に行きたい。2カ月前、遠征に出る前に前髪を切ったんですが、ボーボーになって自分で切るなどしてるので。五輪前に行けたら行きたい。

 武内 モーグルの上村愛子選手は中学、高校の同級生ですね。

 福島 愛ちゃんは運動神経がすごくよくて、彼女がいれば陸上のクラスマッチは負けない、という存在だった。ハードルがすごくて、足が速く、なんでもできるスポーツ万能な子だった。

 武内 彼女が長野五輪に出たときは、どんな心境でした。

 福島 すごいな、と応援していました。でも、私は本番前にテストで滑る前走係をやっていて、これが私の五輪、という感じでした。

 武内 うらやましさは。

 福島 それはなかった。スキー競技は季節もので、あまりメジャーじゃない印象があった。愛ちゃんがいてくれると、スキー界が盛り上がるので、頑張ってほしいな、と。

 武内 バンクーバーでは一緒の舞台に立ちますね。

 福島 まさか私が五輪選手に、という感じですが、うれしい。愛ちゃんは金メダル候補なので、私も一緒に表彰台に上れればうれしい。

 武内 連絡はとりました?

 福島 それが、全然してないんです。携帯電話をなくしてしまって、連絡先がわからなくなっちゃって。お互い海外を転戦しているので、会えないし。五輪で会えれば、久々。彼女が結婚を発表するちょっと前に会って以来ですね。楽しみです。

 武内 ラッキーアイテムは。

 福島 親友にもらった勝ち守りです。ウエアーにつけていたのが、レース中にとれちゃったんですが、落ちてたんです。それを今はポケットに入れてます。

 武内 バンクーバーで勝てば初代王者です。

 福島 どうしましょう。ハハハ。そんな幸せなことはない。そうなれるように頑張ります。

 武内 目標は。

 福島 ベストの状態でスタート台に立ちたい。最高のパフォーマンスができて、そこにメダルがついてくれば幸せ。表彰台を狙いたい。

マイルドだけど甘くない

 〈後記〉 少し離れた場所から練習を見ていると、ケタケタと弾むような明るい笑い声が響いてきました。そんな和やかなシーンがあったかと思えば、スタートの練習になると雰囲気は一変しました。スタートの瞬間の体の反応、角度や力の入れ方など、細部にわたってコーチと意見を戦わせていました。インタビュー中に一緒に飲んだコーヒーには、砂糖は入れずにミルクだけ。そこに、女性らしいマイルドさがありながらも、自分への甘さは一切ない姿が、重なりました。(テレビ朝日アナウンサー)

 ■インタビューは、今日(9日)の「報道ステーション」でも放送予定です。

    *

 ふくしま・のりこ 長野県白馬村生まれ。3歳からスキーを始め、白馬高、日大を経てICI石井スポーツスキークラブ。W杯総合ランクの最高は2007年度の5位。160センチ、54キロ。30歳。

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(日本時間)03月01日(月)07時58分現在

順位 金メダル 銀メダル 銅メダル
1 国旗カナダ 14 7 5
2 国旗ドイツ 10 13 7
3 国旗米国 9 15 13
4 国旗ノルウェー 9 8 6
5 国旗韓国 6 6 2
20 国旗日本 0 3 2
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