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朝日新聞デジタル
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真冬でも雪のないドイツの高原=2014年1月6日、ロイター

 IOC本部のあるスイス・ローザンヌの街からはレマン湖の対岸にアルプスの山並みが見える。
 欧州が誇るスキーリゾートだ。だが、その将来に悲観的なデータがある。

 経済協力開発機構(OECD)が07年に発表した報告書によると、欧州のアルプス周辺国の666カ所のスキー場の1割は、温暖化で慢性的な雪不足に陥り、営業が困難になりつつある。仮に平均気温が1度上がると、十分な積雪が見込めるスキー場は500カ所に減り、2度だと約400カ所、4度だと約200カ所になるという。

 中でも一番影響を受けそうなのがドイツだ。気温が1度上がると、現在のスキー場の6割が、天然雪で営業するのは難しいと指摘された。

 13年12月上旬、ミュンヘンから約70キロほど南にあるシュピッツィングゼーのスキー場。数日前から新雪が30センチほど積もり、老若男女が思い思いにシュプールを描き、にぎわっていた。例年、1シーズンで100日前後をスキー場として営業している。

 しかし、ドイツ山岳協会が13年3月に発表した「バイエルンのアルプス地域におけるスキー場の地球温暖化による影響」という報告書には、衝撃的な予測が記された。人工降雪機に頼らず、平均気温が1・5度上がると、営業可能な日数は年間でたった4日間になるという。

 この予測を、スキー場を経営するペーター・ローレンツ社長は一笑に付した。

 「地球温暖化の議論があるのは知っているが、それは占いのように不確実なものだ。この10年間で、最も営業日数が少なかったのは06~07年シーズンだが、40日は営業できた。400万ユーロを投資して貯水池を造り、人工降雪機も導入した」

 ところが、年明けのドイツ南部は暖かい日が続いた。ドイツ南部のバイエルン州にあり、1936年冬季五輪の舞台になったガルミッシュパルテンキルヘンは雪不足で、14年1月下旬と2月上旬に予定されていたアルペンスキーのワールドカップが中止に追い込まれた。

 この地区は22年冬季五輪に立候補しようとしていたミュンヘンがスキー会場に予定していたが、環境保護団体らの反対で立候補断念に追い込まれた。

 ドイツ環境自然保護連盟のアクセル・デリング氏は南ドイツ新聞の取材に、「冬季五輪を阻止した我々に、関係者は感謝するようになるだろう」とコメントした。

 ミュンヘン大のユルゲン・シュムデ教授(経済地理学・観光学)は「年によって雪が多かったり、寒かったりするだろうが、全般に冷え込む時期がずれ、雪に恵まれたホワイトクリスマスはまれになる。20年後、さらに高性能な人工降雪機ができたとしても、スキー場の経営は難しくなるだろう」と話す。

ジャンプ団体で優勝、最終ジャンパーの船木和喜(左端)に駆け寄る
原田雅彦、岡部孝信、斎藤浩哉=1998年2月17日、白馬ジャンプ競技場

 1998年、原田雅彦や船木和喜らがジャンプ団体の金メダルに輝いた「長野」にも温暖化の影は忍び寄る。

 県観光協会によると、2012~13年シーズンに県内で営業したスキー場は87カ所。五輪のアルペン会場になった志賀高原の約96万9千人を筆頭に、約709万4千人が訪れた。

 今世紀末に向けて温暖化がどのように進むのか。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が13年秋、四つのシナリオを公表した。このシナリオに沿って各国の研究機関が様々な予測をしている。

 最も温室効果ガスが増える場合の日本付近の気温の変化をまとめたグラフがある。

 青線は米国の研究機関が作成したもので、20年代前半で2度上昇し、50年代後半には4度も上がると予想している。

 これに比べ、赤線で示した東京大学と国立環境研究所、海洋研究開発機構が共同開発した「MIROC5」と呼ばれるモデルは上昇が緩やかで、30年代後半に2度、70年代後半に4度上がるとみている。

 温暖化が進んだ場合、日本有数のスキーリゾートである長野はどうなるのか。

 海洋研究開発機構の川瀬宏明研究員らがデータに基づいて計算したところ、00年からの10年間で、1メートルを超す積雪があった県内のスキー場は39カ所。2メートル超は10カ所だった。気温が2度上がり、人工降雪機を使わないとすると、積雪1メートル超のスキー場は11カ所減り、2メートル超は7カ所減る。4カ所はOECDが「スキー場として運営する十分な積雪量」の基準とする積雪30センチを割りこんでしまう。気温が4度上昇すると、積雪1メートル超は13カ所に減り、2メートル超のスキー場はなくなる。

シュピッツィングゼー スキー場(ドイツ南部)=稲垣康介撮影

海洋研究開発機構・川瀬宏明さんインタビュー=竹谷俊之撮影