一昨年の入選歌から選ばれて朝日歌壇賞を受けた作品の一つを引く。〈職業は就活生です新宿のハンバーガー屋で夜行バスを待つ〉安良田梨湖(あらたりこ)。つらい就職活動にめげない強さがある、と評された▼地方に住む学生がたびたび上京して企業回りをするのは、体力的にも経済的にも厳しい。一読、頑張れとつぶやきたくなる。同じ作者に〈胃袋に落とすおにぎり面接官としか話さない一日がある〉。共感を覚える若い世代も多いのではないか▼2016年春に卒業予定の大学3年生らに向けた会社説明会が、きのう解禁された。これまでは3年生の12月スタートだったから、3カ月遅い。選考の解禁も4年生の4月から8月へと4カ月遅くなる▼学業に差し支えるという大学側の声を受け、経団連が就活を後ろ倒しにする新たな指針をつくったためだ。正式内定の解禁は10月からに据え置かれたから、就活は短期決戦型になるという。それでも昔を思えば相当に長い期間である▼新ルール通りにはいかないと見る向きもある。外資系などには従来の日程で選考する社がある。就活前に職場を体験できるインターンへの参加を考えれば、むしろ長期戦になったとの指摘もある。学業との両立は容易になるのかどうか▼芥川賞を受賞後もしばらくは会社勤めを続けた津村記久子(きくこ)さんが、1年前に本紙に語っている。いわば就活の勧めだ。「これほどいろんな世界への入り口を見られる機会はない」。確かに。大変だろうが得るものはきっとある。