職場での長い経験から身に染みた教訓がある。組織の中で起きたもめごとをうまく解決するには、当事者同士が顔を合わせて話し合え、ということだ。電話では相手の表情やしぐさが見えない。話を収めるきっかけもつかみにくい▼もっといけないのはメールだ。顔どころか口調も声音もわからない。無機的な文字列の応酬が互いの感情を逆なでし、双方ひけなくなるのを何度か目にした。電脳空間には危うさがあると実感した。生身をさらしあうことの意味は大きい▼クラスの仲間との「話し合い」を通じ、自分の考えを深めたり広げたりできていますか? おととい発表の全国学力調査と同時に行ったアンケートで、文科省が今回新たに設けた質問だ。そう思うと答えた児童生徒の方がそう思わない子よりも成績がよかった。国語でも算数、数学でもそうだった▼1日にどれくらいの時間、スマホやケータイで通話、メール、ネットをしますか? これも新たに聞いた。時間が短い子ほど正解が多かった。中3の数学だと、30分未満と4時間以上では正答率に20ポイント近い差が出ている▼生身のつながりは善玉、IT経由は悪玉。そんな二分法はもちろん単純にすぎる。ものは常に使いようだ。昔の人がよく口にした案配という言葉を思い出す。ほどよく、いい具合に、という知恵を身につけたい▼ちなみに先の調査では、新聞をよく読む児童生徒ほど正答率が高い傾向にあった。少しうれしいが、新聞を読んでいる子の割合は減少した。