宋代の詩人で官吏でもあった蘇軾(そしょく)は、政争に巻き込まれて2度、流罪に処せられている。役人としては優秀だが、直言が辛辣(しんらつ)で敵を作った。配所での作に〈我が生(せい) 類(おおむ)ね 此(かく)の如(ごと)し/何(いずこ)に適(ゆ)くとして 艱難(かんなん)ならざらん〉とある▼俺の一生なんてこんなもの、どこへ行っても苦労続きだ、といった意味だろうか。もっともこの詩は、人事への恨みが主題ではない。井戸を掘ろうにも石が硬くてなかなか進まず、難儀に難儀を重ねた末にやっと水が出た喜びをうたったものだ▼ここしばらく連日のように企業の新社長決定の記事を見かける。株主総会シーズンを控えた時期だから、当然ではある。ただ、今年は「異例」と形容される人事が目につくようだ。最近ではシャープが、わずか1年余での社長交代を発表した▼資生堂は2年で社長が退任し、会長が再登板したし、ヤマダ電機は全取締役を降格し、会長も「降格」して社長にかえり咲く。東芝の社長交代劇も「サプライズ人事」として、ずいぶんと話題になった▼誰からも不満が出ないような人事はない。幹部の布陣は組織の存亡にかかわるから、時に非情にならざるをえない。蘇軾のように新天地を楽しむ雅量を持つ人ばかりならいいが、そうでないから難しい▼優れた人物をどう選抜するか。荻生(おぎゅう)徂徠(そらい)の『政談』にいい言葉がある。〈惣(そう)じて人のよしあしは、上よりは見えかぬるもの也(なり)〉。人は上にはいい顔しかしない。その人物を知りたければ下の評判を聞け、と。ごもっとも。