閣議決定されたその文書にはすごいことが書いてある。結婚年齢を今より3年早くする。子どもは平均5人とする。女性の就業は抑制する。独身者は税金を重くする。避妊、堕胎は禁止する――▼1941年1月の「人口政策確立要綱」である。太平洋戦争の前夜、東亜共栄圏を建設するため、人口を急激に「発展増殖」させる方策だ。もちろん今日、こんな決定は通るまい。とはいえ底を流れている発想はけっこう根強いのかもしれない▼6年前、1度目の安倍政権の閣僚が女性を「産む機械」に例え、「頑張ってもらうしかない」と言って、大騒ぎになった。そのとき各党は「人口政策」という言葉で批判した。国のために産んでくれという発想はまさに同じだったからだ▼いまの安倍政権もそうだとは思わないが、脇は締めた方がいい。内閣府が「生命(いのち)と女性の手帳」(仮称)の配布を検討し、随分批判されている。妊娠や出産に関する正しい知識を「啓発」するのだという。要は若いうちに産んだ方がいいよ、と▼知識はあるにこしたことはないが、少子化対策の文脈で出てきた話である。子どもが減ったのは女性だけの責任なのか、という議論になるのは当然だろう。森雅子少子化相は男性に配らないとは言っていないというが、どうなるやら▼結婚や出産は一人一人の選択であり、多様な人生が等しく尊重されなければならない。特定の生き方や家族のあり方を国が促したり、押しつけたりする。それを余計なお世話という。