このところ、いいニュースが重なっていた。鹿児島県屋久島町の口永良部島(くちのえらぶじま)には常駐の医師がいなかった。4月に新しい医師が2年ぶりに着任した。海外で勤務し、さらに沖縄の離島などで仕事をしてきた大ベテランだ。島民は一安心だった▼金岳(かながたけ)小学校では、やはり2年ぶりに新入生が入学し、多くの人が祝った。一時は2千人ほどだった人口はいまや140人弱。子どもの数も減った。多い時は250人を超えた在校生も現在は10人ほどだ▼そんな島の活性化を目指す人々がいる。「えらぶ年寄り組」である。グループのサイトによれば島に交番はなく、銀行のATMもない。しかし、自然は豊かだ。その宝を生かして子々孫々住み続けられる島にしようと模索を続ける▼例えば、国の天然記念物で絶滅危惧種でもあるエラブオオコウモリの生息状況を、環境省の支援を受けて調べている。アオウミガメの観察もする。こうした自然に触れ、学び、安らぎたい人々が都会にはいるはずだ。そこに島の活路を見いだせないか、と▼しかし、自然は優しいばかりではない。わかってはいても、いざその苛烈(かれつ)な一面を見せつけられると呆然(ぼうぜん)となる。昨日の新岳(しんだけ)のすさまじい噴火で島民に犠牲者が出なかったことに心底ほっとした。日頃の備えのたまものに違いない▼避難生活はどれほど続くだろう。年寄り組の活動はいつ再開できるだろう。名だたる火山島に住み、自然への畏怖(いふ)とともに生きてきたはずの人々。山が静まるのを、ただ祈る。