上司が部下の女性に投げかけた言葉に驚く。「私の妻の妊娠がわかったときは、すぐに仕事を辞めさせた。君の旦那さんは一体何を考えているのか」「産休や育休を取ることを会社が許すとは限らない。引き際は考えているのか」▼マタニティー・ハラスメント、略してマタハラの話である。妊娠、出産した女性に対する職場での嫌がらせや、不当な処遇をいう。被害にあった女性らがつくる「マタハラNet(ネット)」の公式ブログに、こうした体験談が掲載されているのを見た▼定着してきたとはいえ、最近の言葉だ。マタハラの雑誌記事を読み、自分が上司から何をされているのかを初めて認識した、と振り返る女性がいる。新たな言葉を獲得して仕打ちの本質に気づき、怒りとともに抗議する勇気を奮い起こす。思えばセクハラやパワハラにも同じ経緯があった▼働く女性にとっては光明だろう。最高裁の一昨日の判決が、妊娠を理由とした職場での降格を違法とした。一審、二審を覆しての初めての判断だ。自由な意思に基づく本人の同意がなければ、降格は原則認めないという基準も示した▼全国の地方銀行64行が検討を始めるという女性の就労支援構想も興味を引く。例えば夫の転勤に伴い、妻が働いていた地銀をやむなく辞めた場合、転勤先にある別の地銀が妻を雇用するという仕組みだ▼働き続けたい女性にも、経験ある人材が欲しい職場にも利点がある。こんな取り組みが広がれば、マタハラを許す土壌も変わるに違いない。