鳥除(よ)けの効果のほどは知らないが、案山子(かかし)の立つ稲田は風景がやわらぐ。このあいだ群馬の山あいを訪ねたら、色づきかけた穂波の中に二つ三つと散見した。〈担任の教師に似たる案山子かな〉稲荷霜人。とぼけた味をかもす収穫の秋の脇役だ▼南から北から、今年も新米が出まわりはじめた。お隣の「しつもん!ドラえもん」も「おこめ編」が始まっている。きのうの質問と答えによれば、収穫量が一番多い都道府県は、去年は新潟だったそうだ▼炊きたての新米をいただくのは、日本の秋の口福(こうふく)だ。凝った料理は必要ない。本紙別刷りbeで「白いご飯にのせたいもの」をアンケートしていた。1位は生卵。2位に辛子明太子(からしめんたいこ)。3位海苔(のり)。4位納豆……。シンプルな副菜が、つやつやの新米をひきたてる▼ありがたいことに今年も豊作が見込まれるそうだ。一方で米価は下落が著しい。全国の産地の目安になる新潟のコシヒカリは、農協の買い取り価格が去年より1割以上安いという▼ご飯離れで米は余りがち。そこへ供給が過剰となって安値に導く。本紙の地域版などが伝える農家の悲鳴と諦めが気にかかる。「意欲をなくす」という声が、各地で湧いているようだ▼ころころ変わる「猫の目農政」に農家は振り回されてきた。とりわけ米は、政治的な思惑に左右されやすい作物である。グローバル時代に合った効率農業へ舵(かじ)を切るなかで、山田の中の案山子の風景は消えてしまうのだろうか――。新米の味わいも少し複雑になる。