こんなに格好いいおじいさんが世の中にはいるんだ。ヴィム・ヴェンダース監督の映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を見て、そう思ったことを覚えている。伝統音楽を奏でるキューバの老演奏家たちを追ったドキュメンタリーだ▼1999年に公開され、日本でも話題になった。彼らは地元で忘れられた存在だったが、米国の音楽家に見いだされ、ついにニューヨークのカーネギーホールの舞台に立つ。音楽に浸る喜びと幸福感が銀幕からこぼれ落ちてくる▼この映画と音楽が、米国人のキューバに対する好感度を向上させたという説を聞いたことがある。さもありなん。経済制裁、「テロ支援国家」指定と、政府レベルでは敵対していても、作品が醸し出す哀歓は多くの人々の心を射抜いてしまう▼1961年から国交が断絶していた米国とキューバが、関係改善に乗り出す。オバマ大統領は過去の政策を「時代遅れ」であり、失敗だったと認めた。62年のキューバ危機に象徴される東西冷戦が終わって25年。確かに遅すぎた転換かも知れない▼キューバといえば野球が強い。五輪で2連覇の実績もある。これまで逸材が米大リーグを目指してもかなわず、亡命してプレーする例が相次いでいた。昨年、選手が海外のプロ球団と契約することを解禁。これによって今季、4人が来日したが、米国には行けないままだった▼関係が改善すればどうなるだろう。米球界も注目する。歴史的な転換はこんなところにも影響してくる。