俳優の六角精児(ろっかくせいじ)さんは仕事がなかったころ、パチンコ漬けの暮らしを2年間続けた。毎朝10時から夜まで打つ。「漂うような焦燥感と沈んでいくような快感」があった。エッセー集『少し金を貸してくれないか』にそう書いている▼パチンコをしたことはほとんどないが、逆境にあるときの心理としてはわかる。六角さんは40歳過ぎまで「ギャンブル依存症」だった。金銭面でも人間関係でも色々とつらい思いをし、金輪際やめようと心の中で誓ったことは何百回にも及ぶという▼海外のカジノに大金をつぎこんでいた大王製紙の前会長も、ギャンブルの快感を著書で語っている。「ジリジリと焼け焦がれるような感覚がたまらない」。夢中になると、丸1日半なにも食べなくても腹が減らないのだそうだ▼すさまじい世界である。こうした依存症の疑いのある人が、日本には536万人もいるらしい。厚労省の研究班が推計をした。ギャンブルを我慢することができない「病的賭博」が疑われるのは、成人全体の4・8%。男性に限れば8・7%に達する▼気になるのは、この割合がほかの国に比べ突出して高いことだ。ふつうは1%前後だという。この違いはなにか。パチンコなど手軽なギャンブルがどこにでもあるからだろうと専門家は見る▼日本でカジノを解禁する法案が国会にかかっている。六角さんは「元中毒」の立場から反対する。国内につくれば「病人」が増え、社会が荒廃するに違いない、と。まことに説得力がある。