「もっと保育所を増やして!」。新年度を前に、希望する認可保育所などに入れなかった子育て世帯の切実な声が、今年も各地であがっている。

 「保育園落ちた」の匿名ブログをきっかけに政府が緊急対策を打ち出してからちょうど1年。保育所の数は増えたが、深刻な実態に追いつかない状況が続く。安倍首相は「17年度末までに待機児童ゼロ」の政府目標の達成は厳しいと認めた。

 首相は6月にも新たな対策をまとめることを表明した。小手先の対応は許されない。できるだけ早く解消するよう、本腰を入れてほしい。

 待機児童が一向に減らない原因の一つに、保育のニーズをきちんとつかめていないという問題がある。首相も国会答弁で、働く女性が予想以上に増え、見込み違いがあったと語った。

 国の整備計画は、自治体が積み上げた数字をもとにしている。待機児童には数えていない潜在的な保育ニーズも含めることになっているが、どこまで実態に迫れているのか。まずはニーズの把握の仕方を含め、今の計画を根本から見直すべきだ。

 保育所の整備が急ピッチで進むなか、建設予定地の近隣住民の反対で計画が遅れたり中止されたりする例も目立ってきた。

 子育て支援は最重要の課題だという意識を、地域全体で共有することが必要だろう。一方で、整備を急ぐあまり、丁寧な説明や住民との話し合いがおろそかになっていないか。事業者任せにせず、自治体が合意形成の先頭に立つことも大事だ。

 保育所を増やすには、何よりも安定的な財源の裏付けが欠かせない。保育士を確保するために待遇を改善し、職員の配置を手厚くして保育の質を高めるには、お金がかかる。

 こうした取り組みを支えることこそ、政府の役割だ。責任をきちんと果たしてほしい。

 政府はこれまで、職員の配置基準などを緩めて受け入れ枠を増やす応急措置を進めてきた。しかし、保育所整備を求める保護者らの集会では「預けられれば何でも良いのではない」「子どもの成長にふさわしい保育所を」との声が多くあがる。

 無理をして詰め込むと子どもへの注意が行き渡らず、事故のリスクを高めかねない。親の不安にも真摯(しんし)に耳を傾けねばならない。

 「子どもが生まれておめでたいはずなのに、どうして憂鬱(ゆううつ)な思いをしなければならないのか」――。そんな社会で良いはずがない。悲痛な訴えを正面から受け止めねばならない。