台湾に対する中国・習近平(シーチンピン)政権の圧力が増している。

 カナダでの国際民間航空機関(ICAO)総会で、3年前の前回はゲスト参加した台湾が、今回は出席できなくなった。

 台湾を自国の一地区とみなす中国の意向が強く働いたためと伝えられる。航空の安全にかかわる問題に、こうした形で影響を及ぼすのは穏当ではない。

 台湾で5月に発足した民進党の蔡英文(ツァイインウェン)政権は台湾独立志向が強いものの、その色合いを極力出さず、中国に対話を呼びかけてきた。それに対する習政権も当初は抑えた対応にみえた。

 しかし、しだいに中国側の強硬姿勢が目立つようになった。7月にあった国連食糧農業機関(FAO)水産委員会の会議でも、中国の圧力で台湾代表が出席できなかったという。

 ICAOは民間航空のルールづくりを進める重要な機関だ。台湾は、その議論に参加できていない。台湾は多くの国際線が発着し、管轄空域はかなり混み合っている。世界中の利用者の安全にかかわる問題だ。

 世界保健機関(WHO)をめぐっても、同様の事情がある。03年に新型肺炎が流行した際、多くの感染者を出した台湾が加盟していないため、WHOの対応が後手に回った。それでも中国は加盟に反対し続け、批判を浴びた。

 日本を含む大半の国から国家と認められていないとはいえ、台湾は国際社会で様々な責任を担っている。とくに安全や民生に関わる分野で台湾の活動を妨げることは厳に慎むべきだ。

 中国は最近、非民進党系の地方首長8人を北京に招き、経済交流の促進を約束した。蔡政権が支持率を落とし始めたところを見計らい、実利を使って揺さぶりをかける狙いだろう。

 確かに台湾には経済上の利益から中国との良い関係を望む意見が有力だ。逆に中国を警戒する声も強い。多様な言論を許容する社会において、全体としては対中関係の現状維持を図る方向が共通認識といっていい。

 その一方で、淵源(えんげん)が大陸であっても「中国人」とは違う「台湾人」であるという自己意識は、中台分断60年余りを経て確実に強まっている。

 中台関係の将来像は双方が平和的に話し合えばよく、第三国が口を差し挟むべきではない。

 しかし、今の習政権のやり方は台湾側の反発を強めるばかりだろう。中国側は、台湾の人々が持つ自尊心を理解しようとしていないのではないか。それは利益で釣ったり圧力で潰したりできるものではない。