■在韓米軍――再編は他人事ではない
ブッシュ米政権が、在韓米軍を削減する方針を韓国に公式に伝えた。3万7500人の3分の1にあたる1万2500人を来年末までに減らす。世界で進める米軍再編の一環である。
在韓米軍の主体は陸軍の歩兵師団だ。多くは北朝鮮との軍事境界線に沿って配置されている。朝鮮戦争の休戦後ほぼ半世紀にわたり、北朝鮮への抑止力として、また米韓同盟の証しとして象徴的な存在であり続けてきた。
朝鮮半島の緊張が和らぐ気配はない。核開発問題もある。それなのになぜ縮小なのか。ラムズフェルド国防長官は昨秋の訪韓時に「問題は数ではない。必要な時、必要な場所に柔軟かつ迅速に圧倒的な戦力を投入できればいい」と説明した。在韓米軍の主力を北朝鮮の火砲の射程外に移動させる計画も進んでいる。
これらの再編に伴って、米軍はイージス艦の近海派遣や最新型の対空ミサイルの配備を進めるという。先端兵器の活用によって抑止力は保てる。それは、北朝鮮も承知だろうというわけだ。
韓国内の反応は複雑である。米兵の数が減り、後方に下がれば、戦争になっても米兵の犠牲は少ない。そうなると、攻撃力では圧倒的な米軍が北朝鮮を先制攻撃しやすくなるのではないか。イラク戦争のこともある。不安は募る。
米韓のきしみが影を落としているという見方もある。米国には、盧武鉉政権の対米自立志向が苦々しい。削減は米軍のありがたみを韓国に思い起こさせるためのショック療法だというのだ。
削減をどうみるか。判断は難しい。ただ、この問題で米韓の間の距離が広がれば、北朝鮮に対する韓米日の協調外交が揺らぎかねない。両国政府はそうならないように努める必要がある。
9・11事件後、対テロ戦争の勝利が米戦略の主目標となった。それには、大規模な兵力を決まった場所に張り付けておくよりも、機動的に展開できる力を高める方が重要になる。韓国のほか、在独2個師団の削減やサウジアラビアからの事実上の撤退などの動きもある。
米軍再編はほかならぬ日本の問題である。在日海兵隊や航空戦力は、朝鮮半島有事に備えた存在でもある。在韓米軍の削減や合理化は、在日米軍の機能の強化につながる可能性が高い。
それとは別に、沖縄海兵隊の一部を北海道の陸自施設に移す構想も浮上している。沖縄県民の基地負担が軽くなるという意味では歓迎すべきことではあるが、こうした再編で米軍と自衛隊との一体化が進むことを軽視してはなるまい。
米本土にある陸軍第1軍団司令部を神奈川県のキャンプ座間に移転させる。米空軍横田基地に空自の航空総隊司令部を移す。そんな構想が日米政府当局者からの非公式な情報として報じられるが、政府は何も公式に明らかにしていない。
米軍の再編は日本の安全保障にも基地問題にも直結する。国民の目の前で、米側と堂々と協議してもらいたい。
■皇太子さま――お気持ちは伝わったが
皇太子さまが「雅子の人格を否定するような動きがあった」と発言してから4週間。発言の真意について皇太子さまご自身の説明が文書でなされた。
人格を否定するような動きとは何だったのか。異例の厳しい表現に多くの国民が驚いた。国内だけでなく、海外のメディアも大きく報じた。無責任な憶測も一部に広がりつつあった。
皇太子さまがどのように真意を説明するのか、大きな注目を集めていた。
皇太子さまは具体的な内容については「対象を特定して公表することが有益とは思いませんし、今ここで細かいことを言うことは差し控えたいと思います」と述べた。
宮内庁は当初、湯浅利夫長官が皇太子さまから話を聞き、その内容を長官が会見で明らかにする意向だった。それでは皇太子さまの説明が伝聞のかたちでしか国民に伝わらないことになる。
文書とはいえ、皇太子さまがご自身の言葉で説明したことはよかった。
今回の説明でわかったことは少なくない。雅子さまが悩んでいたのは、外国訪問ができない状態が長く続いたことや世継ぎ問題だけでなかった。皇室の伝統やしきたり、メディアへの対応など、さまざまなことにも大きな努力を強いられていた。
民間から皇室に入ることは周囲が想像するよりも大変なことだったのだ、と改めて思う。
「公務のあり方も含めて宮内庁ともよく話し合っていきたいと思っています」という言葉は、これまで宮内庁との意思の疎通が十分ではなかったことを意味しているだろう。
宮内庁は皇太子ご夫妻の意向をよく聞いて、少しでも重荷を減らす工夫や方策を考えてほしい。
説明には、こんなくだりがあった。
「私は、これから雅子には、本来の自信と、生き生きとした活力を持って、その経歴を十分に生かし、新しい時代を反映した活動を行ってほしいと思っていますし、そのような環境づくりが一番大切と考えています」
「皆さんに何よりもお伝えしたいことは、今後、雅子本人も気力と体力を充実させ、本来の元気な自分を取り戻した上で、公務へ復帰することを心から希望しているということです」
この言葉からは、雅子さまを気遣う皇太子さまのあたたかい気持ちと、回復のために全力を尽くすというお二人の決意がうかがえる。
そうした心のうちは文書でも伝わったが、皇太子さまが肉声で語り、質問にも答えれば、もっとよく伝わっただろう。記者会見は国民に語りかけることである。戦後の皇室がめざしてきた「国民とともにある皇室」を実現するために、最も大事なことではないか。
雅子さまが回復したら、ご夫妻そろってのはつらつとした姿をぜひとも見せていただきたい。
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