■有事法制――民主主義を守るのだ
日本が武力で攻められた時に備える国民保護法など有事関連7法が、自民、公明、民主3党の賛成で成立した。
自衛隊の運用を定めた武力攻撃事態対処法など3法は、すでに昨年成立している。これで有事法制の全体像が整った。
自衛隊の誕生から半世紀。冷戦の終わりを挟んで世界は激変した。宗教・民族紛争や国際テロが頻発し、北朝鮮の核開発が日本を脅かす。いざという時のために、最低限の備えは要る。そうした国民の意識変化が、国会議員の8割余りが賛成しての法成立をもたらした。
侵略や不法な攻撃にさらされれば、身を守るのは当然である。その活動の中心となるのが自衛隊だ。国民も最大限の協力を惜しむまい。私権の制限というきわどさをかかえながらも、与党と民主党が様々な修正で妥協し成立にこぎ着けたのは、そうした基本の考え方に大きな差がなかったからに違いない。
だからこそ、改めて確認したい。有事法制はあくまで専守防衛のためのものであり、使われないに越したことはない。使わざるを得ない事態にしないための外交がいかに大事か。それを肝に銘じなければならぬ。
同時に、この法制を使うにあたっては、政府も国会も用心のうえに用心を重ねるべきである。基本的な人権を制限する恐れのある法律だからだ。
それにしても、と思う。この1年、現実はどんどん先に進んでしまった。憲法の解釈を広げることによって、戦争が終わらないイラクに自衛隊が送られた。その自衛隊が今度は多国籍軍の一員として駐留を続けるという。武力行使に加わらなければ問題なしと小泉首相は言うが、こうした乱暴な運び方には自民党内でさえ疑問の声があがっている。
有事法制にまつわる心配もここにある。法律がいかに立派でも、その善しあしは政権のさじ加減で決まる。そうした見方からすると、首相や与党の姿勢は深く憂慮せざるを得ない。
日米同盟のためなら何でもしていいというようなやり方だけではない。お上に逆らう意見や考え方は許さないという昨今の風潮も、ひどく危なっかしい。
イラクで人質になった日本人に対して、与党や与党寄りの新聞などが迷惑だと言わんばかりの批判を浴びせた。彼らが自衛隊の派遣に反対だったことを取り上げて、国会で「反日的分子」と呼んだ自民党議員さえいる。そんな日本人が外国でどうなろうと、国家として保護するに値するのかという議論である。
北海道の自衛隊の第11師団長が、イラク派遣に反対する市民の活動が目に余れば雪まつりに協力できない、と隊員に訓示した。東京では、市民団体の3人が防衛庁官舎の郵便受けに自衛隊派遣反対のビラを投げ込んだだけで逮捕され、75日間も勾留(こうりゅう)される事件が起きた。
思想や信条にかかわりなく、国民を分け隔てなく守る。それは近代国家の基本的な役割だ。有事法制も当然そうでなければならない。守るべきは国の主権や国民の生命、財産だけではない。少数意見が大切にされる民主主義の社会を守ることができるかどうかが重要なのだ。
政治をきちんと監視する。国の安全を任せられる議員を国会に送る。異論を大事にする。そうやって日頃から民主主義を鍛えておくことが、いざという時、有事法制をお上ではなく国民のために使うことにつながる。できあがった法制を前に思うべきはそのことだろう。
■球団合併――巨人を分割したら
なにせシーズン真っ最中だ。選手もファンもびっくりしたことだろう。
パ・リーグの大阪近鉄バファローズと神戸が本拠のオリックス・ブルーウェーブが、シーズン終了後に合併をめざすことで基本的に合意した。
赤字続きの近鉄は球団の命名権まで売り出そうとしたが、実現しなかった。企業はどこも自分のことで手いっぱいだ。近鉄を買おうというところは、なかなかあるまい。
今回の合併話に球界から頭ごなしの反対論が聞かれないのは、窮状がよく分かっているからだ。7月に開かれるオーナー会議などで合併が認められれば、現在のセ・パ2リーグ制から一気に1リーグ制に進む可能性さえある。
1リーグ制になれば、西武の松坂投手対巨人打線といった新たな対戦も生まれる。ファンの関心は高まるだろう。しかし、それもしばらくの間に違いない。チーム間の戦力格差が埋まらない限り、リーグ戦への興味を長くつなぎとめることは難しいからだ。
球場に足を運ぶ人が増えず、テレビの視聴率が下がるのはなぜなのか。要は、おもしろい試合が少ないからではなかろうか。チームの戦力が接近すれば、手に汗握るゲームも多くなるはずだ。ところが実際の流れは正反対で、それが人気低迷につながっているのではないか。
ただでさえスーパースターが米大リーグに行ってしまう時代だ。豊かな資金にものを言わせる巨人が残る花形をかき集めればどうなるか。パ・リーグの方も「巨人の人気にぶら下がろう」と1リーグ制に走るだけなら、安直すぎる。
戦力を均衡させようと生まれたはずのドラフト制度もいまや骨抜きだ。球団が選手を自由競争で採れる枠ができたからだ。そんな枠などやめたらいい。
プロ野球全体を取り巻く環境は厳しい。そのことを球界の人々はもっと深刻に受け止め、大胆に打開策を練る時だ。
セ、パ両リーグの交流試合はもちろんのこと、チームの入れ替え制も導入したら盛り上がること請け合いだ。
巨人には「4番」がぞろぞろいて、さながらオールスターチームだ。無理に1リーグにしなくても、巨人を二つに分けたら、1チーム減るパ・リーグの穴は埋められる。いっそ、そんなアイデアはどうだろう。
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