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 home > 今日の朝刊2004年06月17日(木)付 

 社 説


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06月17日付

■国会閉幕――ほころびる小泉政治

 国会が終わり、政治の焦点は参院選挙に移った。春の「べたなぎ」政局から一転、年金をめぐる大混乱と与野党激突のなかでの閉幕だった。5カ月の会期を振り返れば、主役はやはり小泉首相。歴史に残る答弁が目白押しだ。

 まず、勤務実態がないのに会社から給料をもらい、厚生年金にまで入っていた履歴を突きつけられての「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」。30年以上前のこととはいえ、国民の年金不信、政治不信が沸騰するなかでの一言だった。世間離れしたその感覚に眉をひそめた自民党員も多かろう。

 自民党として所属議員の年金未納歴を公表しない理由が「自由と民主ですから」というのにも恐れ入った。

 もう一つの争点だったイラク問題。「意見が違うからといって、説明できていないというのはおかしい」。自衛隊の派遣をめぐって国民が抱き続ける疑問に丁寧に応えようという姿勢は、最後までうかがえなかった。有事法制では「備えあれば憂いなし」の一点張りだ。

 靖国神社への参拝に違憲判決が出ると「おかしいねえ、なぜ違憲かわからない」。司法府の判断を意に沿わぬからと、単純に切って捨てる。これが民主主義の国の首相の言葉だろうか。

 小泉首相の高人気を支えてきたのは、言葉の歯切れの良さと一徹さ、2度の訪朝に見られる行動の大胆さだろう。利権調整型の政治家にはない新鮮さで、既成のしがらみを打ち破ってほしい。多くの国民がそんな期待を込めた。

 だが、就任から3年を過ぎた今、小泉政治には明らかにほころびが見える。

 ブッシュ米政権の戦争を支持し、自衛隊のイラク派遣にも踏み切った。北朝鮮問題をかかえている日本には、米国に協力する以外の選択肢はない。小泉政権はそう主張してきた。国民のなかにも、ならばやむを得ないと考えた人もあろう。だが、結果は出ただろうか。

 日本が切望する核問題の平和的解決は、米国が動かなければ実現しない。ところが、先週の日米会談で首相が米朝の協議を働きかけても、ブッシュ大統領は2国間の話し合いを拒んだという。

 曽我ひとみさん一家の再会についても大統領は「一緒に暮らせるなら日本でなくてもいいのでは。北朝鮮ではだめなのか」と語っていた。首相は平壌で夫のジェンキンス氏に来日を直接説得し、その際「私が保証する」と述べたが、この「保証」とは何だったのか。

 両首脳の行き違いは、日米同盟の実像が実は国内向けに首相が語るものとはだいぶ違うのではないかと感じさせる。

 構造改革のほころびも、威勢の良さだけではつくろいきれなくなった。歯切れの良さが理屈抜きの強引さと表裏一体であったことは、年金審議が物語る。

 景気回復にも助けられて内閣支持率はなお高い。とはいえ、政権に厳しい評価が出やすいのが参院選だ。ひょっとすると、ひょっとするかも知れない。


■教育基本法――愛する国とはどんな国

 教育基本法改正についての与党の方針が1項目を除いてまとまった。まとまらなかったのは愛国心をめぐる表現である。

 自民党は「国を愛する」ことを教えるよう求めたが、公明党は「国を大切にする」に変えるよう主張し、折り合わなかった。

 公明党からは、国を愛せというのは統治機構を愛せということにならないか、との疑問が示された。戦前の「忠君愛国」のスローガンが戦争をあおり、異論を許さないことにつながった、という慎重論も強かった。

 公明党は愛国心という言葉に戦前への回帰と国家主義のにおいをかぎ取ったに違いない。支持母体の創価学会が戦前、国家から弾圧された経験を持つだけに、警戒するのは当然のことだろう。

 そうした恐れは、「国を愛する」を「国を大切にする」に変えたところで、ぬぐいきれるものだろうか。

 問題は愛国心の表現にあるのではない。愛国心をどうとらえるか、愛国心が育つにはどうすればいいのか、にある。

 民主主義の国では、主権者である国民が統治の仕組みを決め、選挙で選んだ代表を通じて国を治める。どういう国をつくりたいかはそれぞれ考えが違うだろうが、自由に意見をたたかわし、妥協が必要なときは妥協して、社会をつくり、国をつくっていくのである。

 みんなが参加してつくった民主的な社会や国だからこそ、そこに愛情が生まれる。国民一人ひとりが尊重され、その意思が反映される国ならば、愛国心は自然に生まれ、育っていく。

 国を愛せ、と一方的に教えるだけで愛国心が育つはずがない。まして、戦前のような国家体制への郷愁にかられて、国を愛せ、伝統や文化を愛せ、というのならば、とても受け入れられない話だ。

 自分の国をどう愛するかは、人によってそれぞれ違う。国を思うからこそイラクへの自衛隊派遣に反対する人がいるし、逆に、賛成する人もいる。自衛隊派遣に反対した人を「反政府、反日的分子」と非難した与党議員がいた。国の愛し方を一方的に決めつけるようでは、ゆがんだ愛国心になってしまう。

 愛国心を教えるよう法で定めれば、学校で指導が強制される恐れがある。国旗・国歌法が成立したとき、小渕首相が「命令や強制は考えていない」と国会で答弁したのに、強制が広がったことを忘れるわけにはいかない。

 すでに「国を愛する心情」を成績として評価する小学校が全国で増えている。愛国心を子どもに教え込み、愛国の度合いを競わせる。それで国民に愛される国になるだろうか。

 今の教育基本法が育てようとしているのは「平和な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、勤労と責任を重んじ、心身ともに健康な国民」である。戦後、この法律通りに教育行政がされていれば、愛国心を十分持った国民が育っていたのではないだろうか。



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