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    06月19日付

    ■竹中氏擁立――抵抗勢力もご一緒に

     小泉首相が、経済財政・金融相の竹中平蔵氏を参院選比例区の自民党候補に担ぎ出した。「構造改革の旗振り役」を選挙の前面に押し出し、党の改革イメージを売りこもうという戦略である。「竹中さんで100万票は上乗せできる」。自民党内からはそんな声も聞こえてくる。

     何とも奇妙な光景である。

     同じ比例区に立つ自民党の候補者の顔ぶれを見てほしい。例によって農水、建設、郵政、運輸、総務、防衛といった省庁の官僚OBや、医師会、薬剤師連盟、遺族会などの幹部らが並ぶ。

     関係する業界や団体から物心両面の支援を受け、当選すればその代弁者的な役回りを期待される面々だ。いわゆる抵抗勢力とはこの人々の代名詞でもある。なかには、1月の党大会で「建設関係の抵抗勢力です」と自己紹介した現職や、昨秋の総選挙で「郵政民営化反対」を叫んで落選した元衆院議員もいる。

     一方の竹中氏とは何か。みずから「構造改革の伝道者」を名乗る。公共事業の大盤振る舞いを続けてきた自民党の経済運営を批判し、自民党の反対を押しきって不良債権の処理を進めようとした。だからこそ、自民党内から「辞めさせろ」の大合唱さえ起きた。景気が回復してきたせいか、竹中氏批判はひと頃に比べて静かだが、抵抗勢力と竹中氏の考え方の違いが縮まったとはとても思えない。

     その竹中氏が抵抗勢力ご一行様のような自民党比例区の顔になり、彼らを応援する。参院比例区は政党名でも候補者名でも投票できるから、竹中氏への1票は自民党への1票だ。つまり、竹中氏を支持する票が多くなればなるほど、抵抗勢力の当選者を増やすことになる。

     小泉首相が民間から竹中氏を入閣させたのは、構造改革には永田町の住人ではない新鮮な人材が必要だったからだ。その民間人閣僚を参院選に擁立する異例の決断について、首相は、竹中氏が議員になったほうが長期にわたって改革を進めやすいと言いたいのだろう。

     抵抗勢力が竹中氏のおかげで当選できたということになれば、改革への抵抗を弱められる。そんな思惑もあるのかもしれない。だが、そうなるだろうか。

     首相は「聖域なき構造改革」で、3年前の参院選にも昨秋の総選挙にも勝った。それなのに実際には、長期政権をめざして抵抗勢力との妥協を重ね、多くの改革は尻すぼみだ。先の国会で道路公団民営化法を成立させたが、高速道路の建設は続く。年金改革でも国民の不信をかえって強めた。それが現実である。

     竹中氏自身にも、改革路線を貫こうとするなら別の道があった。たとえば、抵抗勢力の束ね役である青木幹雄氏に対抗して島根選挙区に立てばよかった。

     1年前、自民党からの批判の矢面に立たされた竹中氏は言った。「私がたたかれるのは、改革が進んでいる証拠だ」

     まったく、その通りではないか。


    ■輸入CD――ファンは怒っている

     音楽ファンがこんなに怒ったことが、かつてあっただろうか。海外からの音楽CDの輸入を禁止できる。そんな著作権法改正が国会で成立したからだ。

     もともとは日本音楽のCDがアジアから還流するのを防ぐのが目的だった。

     Jポップと呼ばれる日本の音楽は中国や韓国でも人気が高まり、日本のレコード会社は現地の会社にCDを作らせている。日本国内の半額から数分の一の値段だ。安い現地盤が逆輸入されると国内盤が売れなくなる。法律で規制してほしい。それがレコード会社の訴えだった。

     ところが、改正法には規制対象として「日本の音楽」とも「アジアからの逆輸入」とも書かれなかった。アジア、欧米を問わず、どんなCDでも輸入を禁じることができるような文章だ。

     日本で手に入るビートルズのCDは日本で作られる国内盤だけではない。2割は安いCDが欧米から輸入されて、レコード店に並んでいる。輸入盤には日本語の解説はないが、その国独特のジャケットを楽しめる。

     それが輸入できなくなると大変だ。法案審議の終わりごろになって、音楽家や評論家ら約600人が反対の声を上げ、ファンの反対署名も5万人を超えた。

     政府は「国際法上、対象地域を限定することはできない」と説明している。代わりに、作曲家や歌手の権利が「不当に害される場合」と条件をつけ、日本と物価にあまり差がない欧米からの輸入盤には影響が出ないようにした、という。

     しかし、実際の運用にあたって、アジアからの逆輸入ものと欧米からの輸入盤を、税関できちんと区別できるのだろうか。懸念はぬぐえない。

     人もモノも国境を自由に行き来する時代である。音楽もインターネットで世界を飛び交っている。そもそもCDの流れを国境で止めようという業界や政府の発想が時代遅れではないか。

     万一、来年から輸入盤が入ってこなくなれば、日本では世界一高い国内盤を買うしかなくなる。各地の個性豊かなジャケットにも触れられない。これでは音楽ファンはたまらない。

     今回の法規制問題を議論する場に消費者代表は入っていなかった。文化庁は法律の運用をめぐって、ようやく音楽評論家らと話し合いを始めている。

     国会も「消費者への利益還元に努めるように」と付帯決議をつけた。日本レコード協会は「一層の努力」を約束した。海外で稼いだら国内で売るCDを安くする。そのくらいのことはしなければ不信感は募るばかりだろう。

     輸入盤を買うのは安いからだけではない。国内盤は違法な複製を防ぐコピーコントロールCDが増えた。その音質の悪さを嫌う人は少なくない。

     ファンを喜ばせ、すそ野を広げるような努力を業界はやってきたのだろうか。ファンも音楽家もともに怒った意味を、業界や政府はかみしめてほしい。



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