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 home > 今日の朝刊2004年06月20日(日)付 

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06月20日付

■EU憲法――民主主義が国家を超える

 憲法をほかの国々と共有する。日本では考えられないようなことが欧州で実現に向かい始めた。欧州連合(EU)首脳会議が憲法案で合意したからだ。

 EUと言えば、経済圏の「拡大」ばかりが注目される。しかし忘れてならないのは、EUは政治統合の「深化」もめざしているという大変な現実だ。憲法をめぐる合意はその歴史的な節目である。

 憲法には、EUの顔となる大統領や共通外交を担う外相ができるほか、スムーズで民主的な意思決定方法の導入も盛り込まれた。

 EU憲法が各国の憲法に取って代わるわけではない。各国内ではそれぞれの憲法が機能し続けるが、その一方で、EU諸国の国民は欧州市民としてEUとの直接のつながりを強めることになる。

 注目すべきは、閣僚理事会などが表決で政策を決める際の新しい基準が盛り込まれたことだ。55%以上の国が賛成するとともに、賛成国の人口の合計がEU全体の65%以上でなければならない。だから2重多数決と呼ばれる。国という単位を超え、複数の国民による民主主義を実現する工夫である。

 物事を決める時、もし1国1票であれば、大国ドイツも小国マルタも同等の権利を持つが、人口を考えれば8千万を超えるドイツ市民は約40万のマルタ市民の200分の1ほどの発言力しかないことになる。逆に、EU市民一人ひとりの平等を重んじれば、マルタはドイツの前では無に等しい。

 人々の平等と、国ごとの平等。その双方を同時に満たすために考え出されたのが、今回の2重多数決だ。

 EUは単一通貨ユーロの導入をはじめ、様々な分野で人々の生活に深くかかわっている。にもかかわらず、当の欧州市民は、EUが十分に民意をくんでいないと感じている。それを「民主主義の赤字」と呼んでいる。先の欧州議会選挙での大量棄権の原因ともなった。憲法づくりには問題解決とEUへの信頼を高める願いも込められている。

 欧州は、イラク戦争をめぐって深い亀裂を経験した。だが憲法づくりを通じて政治統合が進めば、「欧州」が外交や安全保障政策で独自の立場を主張し、米国の一極支配を牽制(けんせい)するだけの存在感を示すことにもなるだろう。日本にとってもひとごとではない。

 憲法が実際に発効するまでの道は険しい。大陸欧州と一体になることにためらいのある英国などは、批准するかどうかを国民投票で問う。

 ただ、短期的な目で成功か失敗かを見るだけでは、欧州の統合を正しく理解できない。いかに時間はかかろうと、一歩ずつでも統合へ進むのだという目標を国々が共有してきたこと自体が、欧州の発展と求心力の強化につながってきた。

 最初の歩みが始まって半世紀余り。欧州統合はいよいよ途方もないところへたどり着いた。


■科学技術白書――社会参観日のススメ

 携帯電話にカーナビゲーション、薄型テレビにインターネット。科学者や技術者が知恵を出し、研究を重ねて生まれたものが身近にはたくさんある。

 暮らしを振り返れば、科学技術と社会の関係は深まる一方だと感じずにはいられない。ところが、高度で複雑になった科学技術は、人々の意識の中で、かえって縁遠くなっている。

 密接なのに、疎遠。そんな科学と社会の関係を、今年の科学技術白書は取り上げた。これからの科学技術は「社会の要請に応える」「社会とともに歩む」という視点が必要だと訴えている。

 ハイテク商品は、社会の求めに応えたからこそ広まった。しかし、新たな社会的ニーズに研究が追いついていない分野も少なくない。

 多くの人にとって、安全や安心の実現ほど切実な願いはない。災害に強い街づくり、犯罪の防止、感染症への備え、ネットワーク社会でのプライバシー保護など、課題は多い。これらは技術の開発だけでなく、社会の仕組みづくりと歩調を合わせた取り組みが必要だ。

 地球温暖化やごみ対策などの環境問題の改善にも、制度改革と技術開発の密接な連携がいる。

 生殖医療をはじめ生命科学の進展は新たな倫理的、法的問題を生んでいる。その対応にも自然科学と人文・社会科学の協力が欠かせない。

 そこで白書は科学者たちに「もっと社会との対話を」と呼びかける。人々が求めているものを理解し、不安や疑問を共有するのが、これからの科学者の社会的役割だからだ。

 素人が抱く疑問や不安を「無知ゆえ」と決めつける態度からは、健全な科学は生まれない。白書にいわれるまでもなく、科学者には社会とともに歩む姿勢をもってもらいたいと思う。

 いくつもの国で、さまざまな交流活動が試みられている。喫茶店やバー、書店を舞台に開かれる「科学カフェ」は、イギリスで始まり、イタリアや米国などへと広まっている。参加者が30人から40人と少なめなのが売り物だ。素人と科学者が、ひざをつき合わせて議論を交わす。進化論から遺伝子研究まで、とりあげる話題も多岐にわたっている。

 フランスでは、若者向けに、研究者を囲む泊まりがけ討論会が毎年開かれている。国立科学研究センターの主催で、参加は無料。宿泊費や食費もかからない。

 日本でも、研究所の公開などには積極的だが、自分たちの成果を広める一方通行の活動に偏っている。研究者と参加者の双方向のやりとりを楽しむ催しがもっと増えないものか。

 専門分野にこもりがちな研究者の意識改革を促すために、月に一度くらいは社会参観日を設けるのもいい。その日は、例えば、お年寄りたちのグループと語り合ってみる。活動費も用意する。研究機関は、そんな一歩を踏み出してみたらどうだろう。



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