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 home > 今日の朝刊2004年06月23日(水)付 

 社 説


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06月23日付

■ガス田開発――日中協力の芽はある

 中国が東シナ海で進めている春暁ガス田開発をめぐって、日中間の緊張が続いている。日本が海の境界として主張する「中間線」まで数キロという場所にあるからだ。

 鉱区が中間線をはみ出しているのではないか。日本のガス資源がストローで吸い取られるように奪われるのではないか。日本政府や自民党の中から、そんな疑問や不安が出ている。

 李肇星・中国外相と会った川口外相が日本側の懸念を伝えたうえで、ガス田の鉱脈や鉱区に関するデータの提供を求めた。すると、李外相の方から「中日間の相違を棚上げし、共同開発するのはどうか」と提案してきた。

 「中日間の相違」とは、排他的に資源開発ができる経済水域について、日本と中国の主張が異なっていることを指す。双方の海岸からの中間点を境界にすべきだという日本に対し、中国は大陸棚が続いているとして、ずっと沖縄寄りを境界だと主張してきた。それでも、春暁ガス田開発の拠点を中間線の中国側に置くなど「配慮」はしているようだ。

 海の場合も、境界についての合意は簡単ではあるまい。共同開発は現実的な解決策のひとつだろう。

 ただ、春暁ガス田は欧米メジャーと組んだ開発が進み、来年にも中国へのガス輸送が始まる。この段階で本当に日本側が参加できるのか、はっきりしない。時間稼ぎにすぎないという見方もある。

 それでも頭ごなしに断らず、中国側の提案内容をじっくり聞いてみてはどうか。出資の見返りにガスを有利な条件で引き取る、中国の持つデータをもとに日本も中間線の日本側で開発をする、といった道が開けるかも知れない。

 経済成長に伴う旺盛なエネルギー需要を賄うため、中国は資源開発を活発におこなっている。東シナ海の探査や開発は今後も進み、境界をめぐる問題が各地で起こりかねない。だからこそ、春暁ガス田をきっかけに日中協力の可能性をさぐってもらいたい。今回は協力が実現しなくても、次の糧になるはずだ。

 双方が心すべきは、いたずらに相手を刺激するような行為を控えることだ。中国は領海法で尖閣諸島を中国領土に組み入れた。日本の排他的経済水域内で事前の通報なしに調査船を活動させてきた。こうした行為が、中国からの共同開発提案にも疑心暗鬼を生むのだ。

 主権と国益がぶつかる海洋資源の共同開発には、国と国との良好な関係という支えが必要になる。その点で、靖国神社参拝を当然とする小泉首相や、海洋権益を守るために自衛隊の能力強化を主張する自民党の姿勢も気掛かりだ。

 中国がエネルギーを安定的に確保することは、日中が中東原油の奪い合いをして値をつり上げるといった事態を避けるためにも、中国に進出した日本企業のためにも大事なことだ。

 経済の相互依存がどんどん深まる時代だ。視野を広げて考えていきたい。


■比例区――参院はプロレスの府か

 いまさら参院に向かって、「良識の府」に戻れなどとは言うまい。しかし、それにしても、比例区に立候補する人たちの顔ぶれを見ると、参院らしさとは何なのかと頭を抱えてしまう。

 自民党はまたまた官僚OBや業界代表に加え、スポーツ選手を並べた。女子プロレスの神取忍(かんどりしのぶ)氏とスキーの荻原健司氏である。前回に続いて、まるでプロレスラーと元五輪選手の候補枠ができたかのようだ。

 3年前は「改革ファイヤー」と連呼したプロレスラーの大仁田厚氏が初当選した。イラク特別措置法案を強行採決した外交防衛委員会で、野党議員に立ちはだかって自民党の委員長を守った。やはりプロレス出身の馳浩衆院議員とリングで試合をした「史上初の国会議員プロレス対決」でも話題を振りまいた。

 これに続け、とばかりに立てるのが神取氏だ。約170センチの長身にりりしい顔立ちで、女性ながら「ミスター女子プロレス」と呼ばれる。関節技や神取スペシャルと呼ぶ数々の必殺技が評判だ。

 格闘技は若者たちに大人気だ。プロレスラーは技術と体力だけでは務まらない。ここぞという場面で観客の期待にこたえて必殺技を繰り出す演技力が要る。

 プロレスラーは実力の世界を生き抜いてきた。その厳しい経験は議員活動に生かせるのかもしれない。

 けれど、政党が頼るのは、そんな選手としての資質ではない。「若者の票を集められる」と踏んでのことである。その得票によって、ほかの候補者も引き上げることができると計算する。それはスポーツ選手にとって、なんとも悲しいことではないか。

 一方、民主党は「すべての武器を楽器に」と訴える喜納昌吉氏を立てる。喜納氏の考えは、有事法制に賛成した民主党の政策とはズレもありそうだ。前回、大量得票で当選しながら党の政策と対立し、半年で議員辞職した大橋巨泉氏のことをつい思い出してしまう。

 参院では、市川房枝、青島幸男、宮田輝、中山千夏氏ら著名人が上位を占めた80年を最後に、全国区を比例区に切り替えた。各党は当初、学者や知識人らを名簿の上位に置き、党の政治姿勢を訴えようとした。同時に、サラリーマン新党などの小政党が議席を得たほか、92年には日本新党が登場するなど、比例区には衆院とは違う風が吹いた。

 それが前回の01年から、政党名でも候補者名でも投票できる「非拘束式」になり、自分の名前を多く書いてもらった候補者が当選できる仕組みになって、事情が変わった。テレビなどで顔を売っている人が立候補しやすい旧全国区のような状態に戻ってしまっている。

 政治家としての資質よりも集票力で候補者を並べる。こんなことが続くなら、参院に試合中止を告げるゴングが鳴る日も近いかもしれない。



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