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 home > 今日の朝刊2004年07月05日(月)付 

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07月05日付

■原発資料隠し――再処理工場の運転凍結を

 「ないと思っていたが、探してみたらロッカーにあった」。そんな信じがたい説明とともに、10年前につくった重要な資料が経済産業省から出てきた。

 原発の使用済み燃料を再処理するか、そのまま埋めるか。その二つの方式のコストを比べた資料が隠されていたのだ。

 日本は核燃料サイクル政策をとっている。原発の使用済み燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを使おうというものだ。このコストを計算したら、再処理せずに使用済み燃料を捨てる直接処分方式より2倍近くも割高となった。

 今年3月の参院予算委員会で経済産業省幹部が「試算はない」と答弁した。真っ赤なウソをついていたことになる。

 エイズの資料が厚生省に埋もれていたことを思い出す。最近では低い出生率の公表が遅れた。都合の悪い資料は隠しておいて政策を押し通す。原子力政策への信頼がまたも失われたのは間違いない。

 国の原子力委員会は原子力長期計画の改定作業を始めたところだ。その焦点は10年前と同じく、まさに二つの方式のコスト比較である。これによって、青森県六ケ所村でほぼ完成した再処理工場をどうするかの判断に大きな影響が出る。

 原子力委員会はちょうど計算を始めるところだったが、まず今回見つかった政府の試算を検証すべきだ。

 10年前を振り返れば、この試算がもつ意味の大きさがわかる。

 94年当時、「サイクル路線はコストが高い」という見方が広がり、サイクルから撤退する国も出ていた。国内でも旧通産省内でサイクルへの疑問が生まれ、推進派の旧科学技術庁とは足並みが乱れていた。今回の試算結果を論議した政府の会議でも、結果を公表してもいいとする通産省に対し、科学技術庁や電力業界は「社会が混乱する」と反対した。

 六ケ所工場は前年に着工されたばかりで、建設費は7600億円の見通しだった。その後何度も修正され、2兆円を超えた。高速増殖原型炉もんじゅは運転開始の直前だった。

 当時、試算が公表され、コストがきちんと論議されていたら、日本の原子力政策は違っていたかもしれない。そう考えると、資料隠しの罪はきわめて重い。

 資料隠しが発覚した後も、政府は核燃料サイクルが必要との姿勢を変えていない。原子力委員会がコストの論議をしようとしている一方で、サイクルの開始へ向けた手続きは着々と進んでいる。

 六ケ所工場では、今夏のウランを入れる事前試験に続き、来年には本物の使用済み燃料を使った試験が予定されている。とくに使用済み燃料を入れると、機器が強い放射能を帯び、サイクルの後戻りができなくなる。

 少なくとも一連の試験はしばらく凍結すべきだ。その間に将来の方向をじっくり考えればいい。「一度決めた路線だから」と惰性で進めるのでは、さらに信頼を失うだけだ。


■アジア安保――心地よい話だけでなく

 東南アジアと北東アジア諸国、それに米国、EUなどが一堂に会して安全保障を討議するASEAN地域フォーラムは毎年、議長声明で「全参加国にとって心地よいペースでの協議」を確認する。さまざまな顔ぶれへの配慮からだが、それゆえに実効性のある合意ができにくい。

 ところが、先週ジャカルタで開かれた11年目の閣僚会議は、そんな姿に変化が生まれ始めたことを感じさせた。

 参加国の国防当局者による安全保障政策会議を設けることが決まった。核の闇取引を含む大量破壊兵器の拡散防止のほか、マラッカ海峡の海賊・テロ対策に関する特別声明も採択された。

 この政策会議は中国が提案した。中国は経済を軸とする東アジア共同体づくりをにらみ、安全保障の協力にも積極的な姿勢に転じたのだ。軍の幹部も参加した最初の会合が年内に中国で開かれる。

 ASEAN地域フォーラムには、北朝鮮の核をめぐる6者協議の当事国がすべて名を連ねる。インドに加え、やはり核保有国のパキスタンの参加も決まった。核をめぐる緊張を解きほぐす場として、政策会議を使えるかもしれない。

 アジアにも、米国の単独行動主義を憂える声が広くある。そのことも政策会議を発足させることにつながった。米国の軍事当局者を交えた討議は、必ずしも心地よい場にはならないだろう。だが、実のある議論のためなら、それもいい。

 たとえば米政府にとって、大量破壊兵器の拡散や国際テロへのアジア諸国の取り組みは生ぬるいと映る。そこで唱えているのが、有志連合でテロリストや海賊に立ち向かおうという構想だ。

 これに対して、マレーシアやインドネシアなどからは、「米軍がいることが逆にテロを招く」「主権が侵害される」といった反発の声があがっている。

 しかし、日中韓の船舶を中心に毎年5万隻が通るマラッカ海峡に海賊が横行しているにもかかわらず、沿岸国の警備は手薄だ。しかも、各国とも主権を重んじるあまり、他国の警備艇が海賊を追って自国の領海に入ることを嫌う。これではタンカーなどへのテロを防げない。

 採択された特別声明には、テロに対応するための沿岸国の共同演習、自爆テロ対策の共同研究などが盛り込まれた。米国の介入を避けたいとの思惑があるとはいえ、地域フォーラムが共同で行動できる存在へと脱皮する一歩となる。

 ASEANは、ミャンマーの軍事政権をはじめ、さまざまな問題を抱えつつも、2020年までに域内の安全保障共同体設立を掲げるところまで来た。

 そこに、米国、中国、日本など域外の大国や北朝鮮を巻き込み、アジア全体の安定に役立てようとして成長してきたのが地域フォーラムだ。

 ASEAN+日中韓を土台とする東アジア共同体構想。もっと幅広い地域フォーラム。二つの輪が絡み合って、アジアは変わっていく。



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